令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

旅人編(3)一坏の濁れる酒を

2009年11月09日 | 旅人編
【掲載日:平成21年11月5日】

しるしなき 物をおもはずは
      一坏ひとつきの にごれる酒を 飲むべくあるらし

〔わしは 酒に逃げてるのではない
 それにしても  しらっと 中座しおって・・・〕
朝まだき  奥の座敷 
文机ふづくえをまえに 端座たんざする旅人たびとがいる
机の上  大徳利 
なみなみと注がれた酒坏さかづき
〔人は  どうして 酒を飲むのか
 たのしきにつけ 悲しきにつけ
 一杯目 これが また美味うま
 一杯の酒が  次の酒を呼ぶ・・・
 また一杯  もう一杯 さらに一杯・・・
 やがて  酔いつぶれて・・・
 もう 金輪際こんりんざいとの 二日酔い・・・
 めぬうちの 酒坏さかづき・・・
 性懲しょうこりもなくの 繰り返し・・・〕
〔酒に  罪があろうか
 酒は 飲むべきもの むべきもの〕

しるしなき 物をおもはずは 一坏ひとつきの にごれる酒を 飲むべくあるらし
仕様しょうもない 考えせんと 一杯の どぶろく酒を 飲むがええで》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三三八〕 
酒の名を ひじりおほせし いにしへの おほき聖の ことのよろしさ
《酒のこと ひじりやなんて うまいこと 言うたもんやな 昔の聖人ひとは》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三三九〕 
いにしへの ななさかしき 人どもも りせしものは 酒にしあるらし
《高名な なな賢人けんじんも 人並みに 欲しがったんは 酒やでやっぱ》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四〇〕 
さかしみと 物いふよりは 酒飲みて ゑひ泣きするし まさりたるらし
えらぶって 講釈するより 酒飲んで 泣いてる方が ええんとちゃうか》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四一〕 
言はむすべ せむすべ知らず きはまりて たふときものは 酒にしあるらし
《なんやかや うたりおもたり してみても 行きつくとこは やっぱり酒や》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四二〕 
なかなかに 人とあらずは さかつぼに 成りにてしかも 酒にみなむ
《酒壺に 成って仕舞しもうて 酒にも 鳴かず飛ばずの 人生よりか》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四三〕 

〔わしが  まともなのか
 あやつが  まとのもなのか・・・〕
き合いの悪い 相手と
ついつい 酒におぼれる 自分
忸怩じくじたる思いの 旅人がいる


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