令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

旅人編(8)ほどろほどろに

2009年11月03日 | 旅人編
【掲載日:平成21年11月13日】

あわゆきの ほどろほどろに 降りけば
            平城ならみやこし 思ほゆるかも

落ち着いた暮らしが 旅人たびとに戻ってきた
大伴郎女おおとものいらつめのいない屋敷 
寂しくないと言えば  嘘になるが 
坂上郎女さかのうえのいらつめが 心の支えになっていた
歌の上手で鳴らした 坂上郎女いらつめ
旅人の心に しんみりとした 歌ごころがよみがえ

わがをかに さ鹿しか来鳴く 初萩はつはぎの 花嬬はなづま問ひに 来鳴くさ男鹿
《咲いた初萩はぎ 連れ合いおもて 鳴くのんか 近くの岡で 鳴くおす鹿しかよ》
                         ―大伴旅人―〔巻八・一五四一〕 
鹿をみ 萩を詠む
奈良の佐保での暮らしを  思うかの歌

わが岡の  秋萩の花 風をいたみ 散るべくなりぬ 見む人もがも
《風吹いて 散ってしまうで 秋萩はぎの花 見る人ったなら 見せたりたいな》
                         ―大伴旅人―〔巻八・一五四二〕 
大伴郎女を  思う心も しんみりと 
散る萩の花に  添えるかの 歌ごころ

あわゆきの ほどろほどろに 降りけば 平城ならみやこし 思ほゆるかも
《あわあわと  雪次々に 降って来る ああ思い出す 奈良の都を》
                         ―大伴旅人―〔巻八・一六三九〕 
落ち着いた心に よみがえる 奈良の都の雪

わがをかに 盛りに咲ける 梅の花 残れる雪を まがへつるかも
《庭山に  いっぱい咲いた 梅の花 残った雪と 間違いそうや》
                         ―大伴旅人―〔巻八・一六四〇〕 
年が明け  寒さの中に 梅の花の ほころび
梅と雪の  趣を 歌にする旅人

そこには 女々めめしい旅人は 見えない




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