【掲載日:平成21年11月13日】
沫雪の ほどろほどろに 降り敷けば
平城の京し 思ほゆるかも
落ち着いた暮らしが 旅人に戻ってきた
大伴郎女のいない屋敷
寂しくないと言えば 嘘になるが
坂上郎女が 心の支えになっていた
歌の上手で鳴らした 坂上郎女
旅人の心に しんみりとした 歌ごころが蘇る
わが岡に さ男鹿来鳴く 初萩の 花嬬問ひに 来鳴くさ男鹿
《咲いた初萩 連れ合い思て 鳴くのんか 近くの岡で 鳴く雄鹿よ》
―大伴旅人―〔巻八・一五四一〕
鹿を詠み 萩を詠む
奈良の佐保での暮らしを 思うかの歌
わが岡の 秋萩の花 風をいたみ 散るべくなりぬ 見む人もがも
《風吹いて 散ってしまうで 秋萩の花 見る人居ったなら 見せたりたいな》
―大伴旅人―〔巻八・一五四二〕
大伴郎女を 思う心も しんみりと
散る萩の花に 添えるかの 歌ごころ
沫雪の ほどろほどろに 降り敷けば 平城の京し 思ほゆるかも
《あわあわと 雪次々に 降って来る ああ思い出す 奈良の都を》
―大伴旅人―〔巻八・一六三九〕
落ち着いた心に 甦る 奈良の都の雪
わが岳に 盛りに咲ける 梅の花 残れる雪を まがへつるかも
《庭山に いっぱい咲いた 梅の花 残った雪と 間違いそうや》
―大伴旅人―〔巻八・一六四〇〕
年が明け 寒さの中に 梅の花の ほころび
梅と雪の 趣を 歌にする旅人
そこには 女々しい旅人は 見えない
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