【掲載日:平成21年11月16日】
龍の馬も 今も得てしか あをによし
奈良の都に 行きて来む為
旅人の許 京からの便りが届く
〔丹生女王? おお あのお人か なつかしや〕
高円の 秋の野の上の 瞿麦の花
うらわかみ 人のかざしし 瞿麦の花
《秋の野で 綺麗に咲いてた 撫子花を 可愛らし言うて 摘んだの誰や》
―丹生女王―〔巻八・一六一〇〕
〔なでしこ?
そうか 昔 出逢うたとき
『ほんに 撫子のようじゃ』
と言うたのを 覚えて居ったか
それにしても
大伴郎女への 弔辞も添えられておる・・・
坂上郎女め 余計なことを
丹生女王との一件 知っておったのか・・・〕
〔ようし 礼に 美味い酒を送ってやろう
わしに劣らずの 酒豪であったからのう〕
やがてのこと 丹生女王からの 返書
天雲の 遠隔の極 遠けども 心し行けば 恋ふるものかも
《身は遠く 離れてるけど 恋してる 心は飛んで 通うておるで》
―丹生女王―〔巻四・五五三〕
古の 人の食こせる 吉備の酒 病めばすべなし 貫簀賜らむ
《吉備の酒 昔あんたと 飲んだ酒 もう飲めんから 貫簀ちょうだい》
―丹生女王―〔巻四・五五四〕
〔わからん歌じゃ
筑紫で名高い竹細工の貫簀じゃと?
「病めば」は「年で昔のようには飲めん」か・・・
「ぬきす?」「ぬきしゅ」そうか「抜き酒」か
「もう酒は止めた」というか
昔に変わらず軽口の達者な お人じゃ〕
旅人と丹生王女の 便りの行き来は続く
龍の馬も 今も得てしか あをによし 奈良の都に 行きて来む為
《都まで 行って帰って 来たいんで 天翔け馬を 今すぐ欲しい》
―大伴旅人―〔巻五・八〇六〕
龍の馬を 吾は求めむ あをによし 奈良の都に 来む人の為
《天翔ける 馬絶対に 手に入れる 都来たいと 言う人のため》
―作者未詳―〔巻五・八〇八〕
現には 逢ふよしも無し ぬばたまの 夜の夢にを 継ぎて見えこそ
《逢うことが 出けへんよって 夢の中 せめて毎晩 逢いに来てんか》
―大伴旅人―〔巻五・八〇七〕
直に逢はず 在らくも多く 敷拷の 枕離らずて 夢にし見えむ
《逢わへんの 長ご続くけど 思慕てるで そやから毎晩 夢見るきっと》
―作者未詳―〔巻五・八〇九〕
軽妙洒脱の やりとり
旅人の 鬱の気は 霧消していた
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