令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

坂上郎女編(2)塞きに塞くとも

2010年05月21日 | 坂上郎女編
【掲載日:平成22年3月23日】

うつくしと 我がふ心 速川はやかわ
           きにくとも なほやえなむ




「お父さま 皇子みこ様 とてもお優しいの」
「きっと あの『恋のやっこの』お歌 但馬の皇女ひめさまのこと はばかかくみのだと 思うの」
坂上郎女いらつめの言葉に 安麻呂は 安堵していた

暗転が襲う 
和銅八年〈715〉 
前年の安麻呂を追うかの如く  皇子は世を去る

しかし  
皮肉にも 郎女の 恋のつぼみは 一挙花開く
穂積皇子ほづみのみことの 二年余りの生活
佐保大納言家での 深窓しんそうと打って変わり
宮廷中心の  社交世界
名家の才媛に 引く手数多あまたの 妻問い
恋のり取りに 生まれ出る歌

言ふ言の かしこき国ぞ くれなゐの 色になでそ 思ひ死ぬとも
うわさする 人の言葉は おそろしで 本心ほんね隠しや なんぼろても》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八三〉 
今はは 死なむよ我が背 けりとも 我れに依るべしと 言ふといはなくに
《もううちは 死んで仕舞しもたる 生きてても あんたその気に ならへんさかい》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八四〉 
人言ひとごとを しげみか君が 二鞘ふたさやの 家をへだてて 恋ひつつをらむ
《人の口  うるさいよって 別々の 家に分かれて 恋い焦がれてる》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八五〉 
このころは 千年ちとせきも 過ぎぬると 我れやしかふ 見まくりかも
《近頃は うち思うんや 千年も うてへんなと ああ いたいな》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八六〉 
うつくしと 我がふ心 速川はやかわの きにくとも なほやえなむ
《あんたはん 恋しと思う うちの気持は 抑え付けても 溢れ出てくる》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八七〉 
青山を 横ぎる雲の いちしろく 我れとまして 人に知らゆな
《うちの顔 じっと微笑ほほえみ 見たあかん 他人ひとに知れたら 困るよってに》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八八〉 
海山も 隔たらなくに 何しかも 目言めことをだにも ここだともしき
《海や山 隔ててへんに 逢うことも 声掛かるんも 少ないちゃうか》 
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六八九〉 
丁々発止ちょうちょうはっしの 歌の行き交い
恋の駆け引きの  長ずるにつれ
郎女の 歌技うたわざたくみを増す





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