【掲載日:平成22年4月6日】
押し照る 難波の菅の ねもころに 君が聞して
年深く 長くし言へば・・・
麻呂との恋 遠ざかり 消える
臍を噛む 坂上郎女
押し照る 難波の菅の ねもころに 君が聞して 年深く 長くし言へば
まそ鏡 磨ぎし情を 許してし その日の極み 波の共 靡く玉藻の
かにかくに 心は持たず 大船の 頼める時に
《細やかな 心遣いで 声掛けて ずっと長うに 付き合おと
言うた言葉に 警戒心を 緩めてしもた その日から
あんた一人と 心決め 頼りに仕様と 決めたのに》
ちはやぶる 神や離くらむ うつせみの 人か禁ふらむ
通はしし 君も来まさず 玉梓の 使も見えず なりぬれば
《神さん見放し 世間邪魔し 来てたあんたも 遠離かり 使いの人も 来ん始末》
いたもすべ無み ぬばたまの 夜はすがらに 赤らひく 日も暮るるまで
嘆けども 験を無み 思へども たづきを知らに
《どう仕様も無うて 夜は夜 昼は日中を 泣き暮らす
嘆いてみても 埒あかん 思案をしても 手弦無い》
幼婦と 言はくも著く 手童の 音のみ泣きつつ
たもとほり 君が使を 待ちやかねてむ
《か弱い女 そのままに 子供みたいに 泣き続け
うろたえしつつ あんたから 使い来んかと 待ち続けとる》
―大伴坂上郎女―〈巻四・六一九〉
初めより 長く言ひつつ 頼めずは かかる思に 逢はましものか
《ずっとやの 言葉まともに 受けんときゃ 辛い思いは せんかったのに》
―大伴坂上郎女―〈巻四・六二〇〉
まそ鏡 磨ぎし心を ゆるしなば 後に言ふとも 験あらめやも
《張り詰めた 警戒心 緩めたら 後で悔いても もう遅いがな》
―大伴坂上郎女―〈巻四・六七三〉
真玉付く をちこち兼ねて 言は言へど 逢ひて後こそ 悔にはありと言へ
《心地良え 言葉並べて 口説かれて 許して仕舞たら 悔い残るだけ》
―大伴坂上郎女―〈巻四・六七四〉
呆けたような虚ろな日が 続く
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