【掲載日:平成22年10月26日】
三日の原 布当の野辺を 清みこそ
大宮所 定めけらしも
泉の川に 橋打ち渡し 築く京師は 永遠恭仁宮か
布当の山は 連綿続き 鹿背の山には 鶯鳴くよ
現つ神 わご大君の 天の下 八島の中に
国はしも 多にあれども 里はしも 多にあれども
《神さんで あらせられます 天皇が お治めなさる 日の本に
卿がいっぱい ある中で 里も仰山 ある中で》
山並の 宜しき国と 川次の たち合ふ郷と
山城の 鹿背山の際に 宮柱 太敷き奉り 高知らす 布当の宮は
《山並み綺麗 卿やとて 川の集まる 里として
ここ山城の 鹿背山の 麓に宮柱 お立てなり 高々造る 布当宮》
川近み 瀬の音ぞ清き 山近み 鳥が音響む
秋されば 山もとどろに さ男鹿は 妻呼び響め
春されば 岡辺も繁に 巌には 花咲きををり
《川は近うて 瀬音良え 山も近うて 鳥音良え
秋になったら 山で牡鹿 連れ呼び鳴いて 声響く
春が来たなら あちこちの 岡の岩辺で 花が咲く》
あなあはれ 布当の原 いと貴 大宮所
うべしこそ わご大君は 君がまに 聞かし給ひて
さす竹の 大宮此処と 定めけらしも
《なんと良えとこ 布当原 なんと貴い 大宮所
天皇さんが 諸兄殿さんの 勧め聞かれて 大宮を ここに決めたん 尤もや》
―田辺福麻呂歌集―〈巻六・一〇五〇〉
三日の原 布当の野辺を 清みこそ 大宮所 定めけらしも
《甕の原 布当の野辺が 清いんで 大宮所を ここ決めたんや》
―田辺福麻呂歌集―〈巻六・一〇五一〉
山高く 川の瀬清し 百世まで 神しみ行かむ 大宮所
《山高て 川瀬清うて 百年も ずっと続くで 大宮所》
―田辺福麻呂歌集―〈巻六・一〇五二〉
山背の 久邇の都は 春されば 花咲きををり 秋されば 黄葉にほひ
帯なせる 泉の川の 上つ瀬に 打橋渡し 淀瀬には 浮橋渡し
あり通ひ 仕へまつらむ 万代までに
《恭仁宮は 春が来たなら 花咲いて 秋になったら 黄葉する
帯の様延びる 泉川 上の流れに 橋架けて 淀の瀬ぇには 浮橋を
渡し通うで ずううっと 何時いつまでも ずううっと》
―境部老麻呂―〈巻十七・三九〇七〉
楯並めて 泉の川の 水脈絶えず 仕へまつらむ 大宮所
《泉川 川の流れの 続く様に ずっと仕える この大宮所に》
―境部老麻呂―〈巻十七・三九〇八〉
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