令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

坂上郎女編(3)言尽くしてよ

2010年05月18日 | 坂上郎女編
【掲載日:平成22年3月26日】

恋ひ恋ひて 逢へる時だに うるはしき こと尽してよ 長くと思はば


訪ね来ては  去り
去った後には  また別のが通う
そのたびに 心ときめかせ
待つ楽しさ  待つ喜びが 
やがて  苦しみとなり
男の  不実を知る
妻問いが 結ばれごとの 習慣ならいとはいえ
傷つくのは  女
このたびこそはの 願い込めて
坂上郎女いらつめは ふみしたため続ける

我れのみぞ 君には恋ふる 我が背子が 恋ふといふことは ことなぐさ
《うちだけや  恋し思うん 決まってる あんた口先 ばっかりやんか》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六五六〉 
思はじと 言ひてしものを 朱華色はねずいろの うつろひやすき 我が心かも
《恋なんか もうせえへんで うてたが うちの決心 怪しいもんや》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六五七〉 
思へども しるしもなしと 知るものを 何かここだく 我が恋ひわたる
《うちの恋 なんぼ思ても かなわへん 分かってるのに し続けとるわ》 
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六五八〉 
あらかじめ 人言ひとごとしげし かくしあらば しゑや我が背子 奥もいかにあらめ
《初めから あれこれ言われ うっとしい これやと後が 思いやられる》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六五九〉 
をと吾を 人ぞくなる いで吾君あがきみ 人の中言なかごと 聞きこすなゆめ
《ふたり仲 こ思う人 てるから あんたそんなん 聞いたらあかん》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六六〇〉 
恋ひ恋ひて 逢へる時だに うるはしき こと尽してよ 長くと思はば
《恋い焦がれ やっと逢えたで いてたら 甘い言葉を いっぱいうて》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六六一〉 

誰彼だれかれなしに 呼び込みおって
 父上が 亡くなられ 目付のなくなったを これさいわいと〉
佐保大納言家当主 旅人は 苦虫にがむしを噛んでいた
〈なんとか 一廉ひとかどの男を 妻合めあわせねば
 おおそうじゃ〉 

思い立ったが  吉日
旅人の早馬は  藤原邸を目指す
藤原房前ふささき
藤原四兄弟の  どちらかいえば 皇親派
旅人 かねてからの昵懇じっこん
使いが  邸門をくぐっていく




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