【掲載日:平成22年11月2日】
あしひきの 山辺に居れば
ほととぎす 木の間立ちくき 鳴かぬ日はなし
恭仁京では 新都の建設が進んでいた
内舎人家持 恭仁に 仮居構えて 帰らず
書持 庭での 草花手入れに余念がない
心優しい書持 幼少よりの 花愛で心
家持留守の 鬱屈
家籠りの 歌作りばかりではと
庭いっぱいの草花世話に 精を出す
遷都令明けての 天平十三年〈741〉四月
恭仁京家持に 書持からの歌が届く
橘は 常花にもが ほととぎす 住むと来鳴かば 聞かぬ日無けむ
《橘が 年中花で あって欲し 鳴くほととぎす 毎日聞ける》
―大伴書持―〈巻十七・三九〇九〉
珠に貫く 楝を家に 植ゑたらば 山霍公鳥 離れず来むかも
《薬玉作る 栴檀花を 植えたなら 山ほととぎす ずっと来るかな》
―大伴書持―〈巻十七・三九一〇〉
〈書持が 季節を教えてくれたか
彷徨い続ける 帝に従い
その挙句が 恭仁遷都
山深い地での生活
なるほど 花とほととぎす か〉
鬱屈中の 歌便り
ほっとの家持 その日のうちの返し歌
あしひきの 山辺に居れば ほととぎす 木の間立ちくき 鳴かぬ日はなし
《山裾で 暮らしてるんで ほととぎす 木の間潜って 毎日鳴くよ》
―大伴家持―〈巻十七・三九一一〉
ほととぎす 何の心そ 橘の 玉貫く月し 来鳴きとよむる
《ほととぎす どんな積りか 花時期と 違ごて実時期に 来て鳴くのんは》
―大伴家持―〈巻十七・三九一二〉
ほととぎす 楝の枝に 行きて居ば 花は散らむな 珠と見るまで
《ほととぎす 栴檀枝に 居ついたら 花散るやろな 玉散るみたい》
―大伴家持―〈巻十七・三九一三〉
自らの 気鬱に沈む家持に
書持の訴えは 届かない
橘は 常花にもが ほととぎす 住むと来鳴かば 聞かぬ日無けむ
《兄上が 年中花で あって欲し 傍に居ったら 毎日逢える》
―大伴書持―〈巻十七・三九〇九〉
珠に貫く 楝を家に 植ゑたらば 山霍公鳥 離れず来むかも
《薬玉作る 栴檀花を 植えたなら 兄上ずっと 居てくれるかな》
―大伴書持―〈巻十七・三九一〇〉
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