令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・青春編(二)(10)百種(ももくさ)の 言(こと)そ隠(こも)れる

2010年11月05日 | 家待・青春編(二)内舎人青雲
【掲載日:平成22年10月8日】

この花の 一枝ひとよのうちに
         百種ももくさの ことこもれる おほろかにすな



内舎人うちとねりとなり 右大臣橘家に近づき得た家持
旅人たびとという 後ろ楯を失い 
これといった 庇護者ひごしゃないまま 
七 八年を過ごした  家持に 
ようやく開けた  中央政界への道であった

同じころ 放浪極めた 相聞そうもん遍歴も落ち着き
初恋 坂上大嬢さかうえのおおいらつめとの 交わり復活

家持に  心穏やかな日々が 続いていた

このころから  
政界は  少しずつ 混迷の度を 深めていく

藤原氏の  それとは無しの圧迫
それから解き放たれたかの  
聖武帝 遊行ゆうこう行幸みゆきの繰り返し
天平十一年〈739〉三月始め みかはら離宮
  三月下旬 元正上皇同道の甕の原離宮
天平十二年〈740〉二月  難波宮
天平十二年〈740〉五月 右大臣諸兄もろえ相楽さがら別荘

世の中  さながら写し鏡
宮廷世界退廃を  象徴するかの事件が起こる
先の元正げんしょう朝での左大臣
石上いそのかみ麻呂まろの息子 おと麻呂まろ
藤原宇合うまかい未亡人 久米若売くめのわかめと相聞沙汰ざた
これがため 乙麻呂土佐へと配流はいる
                 〈天平十一年〈739〉〉 
また 
中臣宅守なかとみのやかもり 蔵部くらべ女官狭野弟上娘子さののおとがみのおとめとの恋愛騒ぎ
宅守やかもり 越前配流
        〈天平十二?年〈740〉〉 
これら共に 冤罪えんざいめくが 
時代の風紀紊乱びんらん背景が 起こしたもの

そして  
世の中を震撼しんかんさせる事件が 西に起こる
大宰小弍しょうに藤原広嗣ふじわらのひろつぐ 大宰府にって叛旗
政治まつりごとの乱れ 災害疫病頻発ひんぱつ 
 せきは 重鎮 玄げんぼう 真備まきびにあり 
 これら君側くんそくかん 除くにかず
 もちいし橘諸兄もろえとがあり」の
意見受け入れられず  筑紫左遷
しからずんばの義憤ぎふん蜂起ほうき

この 若くげきしやすい性格たちの広嗣
かつての大宰のそち 藤原宇合うまかいの長子
それだけに  
中央の受けた驚愕きょうがく 想像を絶するものであった

藤原広嗣ひろつぐの桜の花を娘子おとめに贈る歌】
この花の 一枝ひとよのうちに 百種ももくさの ことこもれる おほろかにすな
粗略ざつにすな この花枝に ぎっしりと わしの思いが 入っておるぞ》
                         ―藤原広嗣ふじわらのひろつぐ―〈巻八・一四五六〉
娘子おとめこたえたる歌】
この花の 一枝ひとよのうちは 百種ももくさの こと待ちかねて 折らえけらずや
《折れてるで  この花枝に 詰め過ぎた あんたの思い 支え切れんで》
                         ―娘子おとめ―〈巻八・一四五七〉


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