石麿に われ物申す
夏痩に 良しといふ物そ 鰻捕り食せ
家持は 待っていた
高円山の 黄葉
雨上がりの 透き通った空
空の青
空隠すかに 深紅の黄葉
〈来ない あれほど固く約束したに・・・〉
けだしくも 人の中言 聞せかも ここだく待てど 君が来まさぬ
《悪噂を きっと聞いたに 違いない こんだけ待って 八束来んのは》
―大伴家持―〈巻四・六八〇〉
なかなかに 絶ゆとし言はば かくばかり 気の緒にして 吾恋ひめやも
《縁切りや 言われたほうが 気ィ楽や こんな思うて 気に懸けるより》
―大伴家持―〈巻四・六八一〉
思ふらむ 人にあらなくに ねもころに 情尽して 恋ふるわれかも
《思うても 呉れへん人に 一生懸命 心尽くすん アホやでうちは》
―大伴家持―〈巻四・六八二〉
八束から 返事が来た
〈謹啓
すっかりの お冠 返す返す申し訳なし
拠所ない仕儀の出来 平にお許しの程を
このような 軽口
わしは 一向に構わぬが 相手にも選りますぞ
例の 吉田連老〈通称石磨〉の一件
尊父 旅人殿と 老の父御 宜殿
いかな昵懇であったとはいえ あれは戴けぬ
石麿に われ物申す 夏痩に 良しといふ物そ 鰻捕り食せ
《言うたろか 石麿さんよ 夏痩せに よう効く言うで 鰻食たどや》
―大伴家持―〈巻十六・三八五三〉
痩す痩すも 生けらばあらむを はたやはた 鰻を捕ると 川に流るな
《痩せてても 生きてる方が まだ良えで 鰻捕ろして 溺れたあかん》
―大伴家持―〈巻十六・三八五四〉
老殿は 謹厳実直の士
ひょいと受け流せずにより 暫く寝込んだ由
今後は 家持殿の軽口
相手を見ての上と なされること
ここに しかと申し措く
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