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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

坂上郎女編(19)老づく吾(あ)が身

2010年03月17日 | 坂上郎女編
【掲載日:平成22年5月25日】

・・・ゆくらゆくらに 面影おもかげに もとな見えつつ
       かく恋ひば おいづくが身 けだしへむかも



越中赴任から 三年みとせ
あれこれの不便から  
大嬢おおいらつめ越迎えの申し出が届く
家持の意をかなえるべくの 大嬢下向
行かせた後の 母のわびしさ
五十路いそじの身に 津々しんしんと募る

海神わたつみの 神のみことの 御櫛笥みくしげに たくはひ置きて いつくとふ たままさりて 思へりし が子にはあれど うつせみの 世のことわり大夫ますらをの 引きのまにまに しなざかる 越路こしぢをさして つたの 別れにしより 
海神かみさんが 櫛箱入れて 貯め置いて 大事にしてる 真珠玉 その真珠たまよりも いとおしい お前やけども 仕様しょう無しに 家持さんの 招きゆえ 遠い越国こしへと 行かしたが》
沖つ波 とを眉引まよびき 大船おほふねの ゆくらゆくらに 面影おもかげに もとな見えつつ かく恋ひば おいづくが身 けだしへむかも
《波によう似た  眉引きが ゆらゆらゆらと 眼に浮かぶ こんな恋しゅう 思てたら 老い先短い この身体からだ 耐えることなど できようか》  
                         ―大伴坂上郎女―〈巻十九・四二二〇〉 
かくばかり  恋しくしあらば まそ鏡 見ぬときなく あらましものを
《こんなにも 恋しゅう思う あんたなら ずうっとそばに 置けばよかった》 
                         ―大伴坂上郎女―〈巻十九・四二二一〉 

遥かな  都の空から しな離かる越へ
悲痛な思いを乗せた  母からの便り
大嬢は 家持に せめてもの心りの歌を強請せが

霍公鳥ほととぎす 五月さつきに 咲きにほふ 花橘の ぐはしき 親の御言みこと 朝暮あさよひに 聞かぬ日まねく
《ホトトギス 来て鳴く五月 咲きにおう たちばなはなの それみたい うるわし聞いた かあさんの 声聞かへんで 日ィ経った》  
天離あまざかる ひなにしれば あしひきの 山のたをりに 立つ雲を よそのみ見つつ 嘆くそら やすけなくに 思ふそら 苦しきものを 
《山の陰から  立つ雲を 見ながら思う 里の空 嘆く心も 頼りなく 思う気持ちも えてくる》
奈呉なご海人あまの かづき取るといふ 真珠しらたまの 見が御面みおもわ ただむかひ 見む時までは 松柏まつかへの 栄えいまさね 貴きが君
奈呉なごの漁師が もぐる 真珠みたいな あのお顔 見たいと思う 今日日頃 お会いするまで お元気で 暮らし下さい お母さま》 
                         ―大伴家持―〈巻十九・四一六九〉 
白玉しらたまの 見がし君を 見ず久に ひなにしれば 生けるともなし
《逢いたいに 逢われへん日ィ 続いてる ひなるんで 仕様しょう無いけども》
                         ―大伴家持―〈巻十九・四一七〇〉 
大嬢おおいらつめ越下り二年後 天平勝宝三年〈751〉帰京を果たした家持
郎女  大伴家の安堵とは裏腹
藤原仲麻呂勢力 孝謙女帝の庇護ひごを得て伸長
諸兄もろえの地位をおびやかしていく




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