【掲載日:平成25年4月12日】
霊ぢはふ 神も我れをば 打棄てこそ しゑや命の 惜しけくもなし
片恋ましや 傷つきせんで
通た心を 裏切りされて
捨てられたなら 死ぬしかないわ
悔しこの胸 癒すん居らん
甘南備に ひもろき立てて 斎へども 人の心は 守りあへぬもの
《ひもろきを 立てて祀って 祈っても 心変わりは 止められへんで》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二六五七)
(ひもろき=神の憑りましの樹)
愛しきやし 吹かぬ風ゆゑ 玉櫛笥 開けてさ寝にし 我れぞ悔しき
《来えへんの 知ってながらも 戸ぉ開けて 寝てたこのうち 情け無思う》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二六七八)
(吹かぬ風=訪ねてこない男)
畳薦 隔て編む数 通はさば 道の芝草 生ひずあらましを
《屡々も あんた通うて くれたなら こんな芝草 伸びんかったに》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二七七七)
霊ぢはふ 神も我れをば 打棄てこそ しゑや命の 惜しけくもなし
《もう良えわ 神さんうちを 見捨ててや 命やなんて もう惜しないわ》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二六六一)
玉の緒の 絶えたる恋の 乱れなば 死なまくのみぞ またも逢はずして
《切れて仕舞た 恋思い出し 悶えても 死ぬしかないな もう逢えんので》【寄物陳思】
―作者未詳―(巻十一・二七八九)
【問答】
杜若 佐紀沼の菅を 笠に縫ひ 着む日を待つに 年ぞ経にける
《菅の笠 縫た後着る日 待ってたに いつか年月 経って仕舞たで》
(そのうちに 結ばれんやと 待ってたが いつか年月 経って仕舞たがな)
―作者未詳―(巻十一・二八一八)
(笠に縫う=契る)(着る=結婚する)
押し照る 難波菅笠 置き古し 後は誰が着む 笠ならなくに
《菅の笠 古うなるまで 置いといて 後でこの笠 誰着る言んや》
(契るだけ 契ってからに 放っといて 後このうちは 誰待ちゃ良んや)
―作者未詳―(巻十一・二八一九)
み吉野の 水隈が菅を 編まなくに 刈りのみ刈りて 乱りてむとや
《川隅の 菅草刈って 編まへんで 散らしそのまま 放っとくんかい》
(このうちを 契らしといて 放っといて 奥さんせんと そのまますんか)【比喩】
―作者未詳―(巻十一・二八三七)
(刈る=契る 編む=結婚する)
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