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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

古今相聞往来(上)編(33)我が木枕(こまくら)は

2013年03月15日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月15日】

へる紐 かむ日とほみ 敷栲しきたへの 我が木枕こまくらは こけしにけり




かよわぬ思い かかえる恋は
忍び待つほど みじめさ募る
あきら仕様しょうと 思うが出来ず
いだまくら 涙に濡れる

いへびとは 道もしみみに かよへども が待ついもが 使つかひぬかも
召使めしつかい 多数よけここの道 通るけど お前の使い 待つのにんで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五二九)
  
が恋ふる ことも語らひ なぐさめむ 君が使つかひを 待ちやかねてむ
がれてる 気持ち話して なぐさめに 仕様しょう思うに 使つかいもんわ》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五四三)
  
かくだにも れは恋ひなむ 玉梓たまづさの 君が使つかひを 待ちやかねてむ
《こんなにも うちがれてる それやのに あんたの使つかい んのんかいな》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五四八)
  
妹に恋ひ が泣く涙 敷栲しきたへの 木枕こまくら通り 袖さへ濡れぬ
《あの児い わし泣く涙 の枕 つとて袖まで 濡れて仕舞しもたで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五四九)
  
へる紐 かむ日とほみ 敷栲しきたへの 我が木枕こまくらは こけしにけり
《結び紐 ほどかへん日ィ ごなって うちの木枕こまくら 苔えて仕舞た》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六三〇)
  
あひ見ては 千年ちとせぬる いなをかも 我れやしか思ふ 君待ちかてに
うてから もう千年か いやちゃうか 待たされ続け そううだけか》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五三九)
  
うつつには よしもなし いめにだに なく見え君 こひに死ぬべし
《死にやで 続けて夢に 出ててや 起きてて逢える 伝手つてないのんで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五四四)
  
 問答】
が恋は なぐさめかねつ ま長く いめに見えずて 年のぬれば
《夢に出ん 日ィが続いて 年った 苦しいがれ いやないで》
                          ―作者未詳―(巻十一・二八一四)
                          (夢に出ん=相手の思いが薄い)
長く いめにも見えず 絶えぬとも 片恋かたこひは やむ時もあらじ
《あんたこそ ゆめにもんと わりか うち一人でも 恋続けるで》
                          ―作者未詳―(巻十一・二八一五)
 夢も出んやて もう終わりにしょ
  出んのあんたや 離しはせんで)




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古今相聞往来(上)編(32)山鳥の尾の

2013年03月12日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月12日】

あしひきの 山鳥やまどりの しだり尾の 長々ながながを ひとりかも




どんな威張いばって にしても
恋に落ちたら 男はみじ
日頃ひごろ言うこと 何処どこ行て仕舞しも
慣れん恋路に 狼狽うろたえばかり

大夫ますらをと 思へる我れを かくばかり 恋せしむるは しくはありけり
《男やと おもてるわしが なんのこと 恋に落ちるて どう仕様しょもないな》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八四)
  
面形おもかたの 忘るとあらば あづきなく をとこじものや 恋ひつつらむ
面差おもざしを 忘れる時が あるんなら あたら男が がれるもんか》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八〇)
  
つるぎ大刀たち 身にふる 大夫ますらをや こひといふものを しのびかねてむ
《身に大刀たちを びたこのわし 男やに えきれんのか 恋のごときに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六三五)
  
すがの根の ねもころいもに 恋ふるにし 大夫ますらをごころ 思ほえぬかも
心底しんそこに あの児に恋し 男やに しっかりごころ くして仕舞しもた》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七五八)
  
独り 寝る夜に 夜更けは長い
寝付き出来んで 転々てんてん
思うあの児が まぶたに浮かび
よるじゅうつうつ 夜明けが近い

あかときと かけは鳴くなり よしゑやし ひとりは けば明けぬとも
《朝来たと にわとりくが どでもえ ひとり寝るや 何時いつなと明けや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇〇)
  
思へども 思ひもかねつ あしひきの 山鳥やまどりの 長きこの
《忘れとこ 思うけどまた 思て仕舞う ひとり寝ならん この長いに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇二)
  
あしひきの 山鳥やまどりの しだり尾の 長々ながながを ひとりかも
《山鳥の 長いで この長い よるひとりで 寝んならんのか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇二 或る本)




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古今相聞往来(上)編(31)妹が踏むらむ

2013年03月08日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月8日】

かくばかり 恋ひつつあらずは あさに いもが踏むらむ つちにあらましを




がれ続けば 深刻しんこく募る
浦の海人あまなり 玉藻を刈ろか
 や磯・砂 成る方が増しや
いっそこの身が 果ててもえか

なかなかに 君に恋ひずは 比良ひらの浦の 海人あまならましを 玉藻たまも刈りつつ
《なまじっか あんたにがれ するよりか 比良ひら海人あまなり りしてるわ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七四三)
  
なかなかに 君に恋ひずは なはの浦の 海人あまにあらましを 玉藻たまも刈る刈る
《なまじっか あんたにがれ してるより なわうら海人あまに 成ってろ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七四三 或る本)
  
かくばかり 恋ひつつあらずは あさに いもが踏むらむ つちにあらましを
恋焦こいこがれ し続けてんと 朝晩に お前む土 成ったしや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六九三)
  
白波の 来寄する島の 荒磯ありそにも あらましものを 恋ひつつあらずは
《この気持ち がれ続けて 嘆くより ごつい荒磯あらいそ 成ったしや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七三三)
  
潮満てば 水泡みなわに浮かぶ 真砂まなごにも はなりてしか 恋ひは死なずて
《恋しいて 死ぬな思い するよりは 水泡あわ浮く砂に 成るえで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七三四)
  
住吉すみのえの 津守つもり網引あびきの 泛子うけの 浮かれか行かむ 恋ひつつあらずは
がれ しつづけせんと 浮子うきみたい かれながれて んで仕舞しまおか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六四六)
  
我妹子わぎもこに 恋つつあらずは こもの 思ひ乱れて 死ぬべきものを
《あの児恋い がれ続けて 生きるより この胸つぶれ 死んだしや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七六五)

 つるぎ大刀たち 諸刃もろはうへに 行き触れて 死にかもしなむ 恋ひつつあらずは
《恋いがれ し続けてんで いっそこと 大刀たちに身投げて 死んで仕舞しまおか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六三六)




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古今相聞往来(上)編(30)いたぶる波の

2013年03月05日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月5日】

風をいたみ いたぶる波の あひだなく が思ふ君は あひ思ふらむか



恋に没入はまれば 他も見えん
寝ても覚めても 面影おもかげ浮かび
がれは 絶え間続く
気逸らすすべない 待つ身であれば

白栲しろたへの そでを触れてよ 我が背子せこに が恋ふらくは やむ時もなし
たがそで わし共寝てから あんたへの うちのがれは 休みなしやで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一二)
  
咲く花は 過ぐる時あれど が恋ふる 心のうちは やむ時もなし
《咲く花は そのうち散るが うちの恋 がれまんで 散るときないわ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七八五)
  
宮材みやぎ引く 泉のそまに 立つ民の やむ時もなく 恋ひ渡るかも
そまやまに 働く民は 休みなし ひっきりなしの がれやうちは》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六四五)
  
あしひきの 山下とよみ 行く水の 時ともなくも 恋ひ渡るかも
《山の下 音響ひびかす水は 限りない うちがれんも 限りなしやで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七〇四)
  
庭清み 沖へ漕ぎる 海人あまぶねの かぢ取るなき 恋もするかも
《波うて 沖かじは 休みなし うちのがれも 休むないわ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七四六)
                          (波風がないと舟を進めるのは楫しかない)

酢蛾島すがしまの 夏身なつみの浦に 寄する波 あひだも置きて 我が思はなくに
夏身なつみうら 寄せる波は ぁ置くが 間きなしやで うち思てんは》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七二七)
  
風をいたみ いたぶる波の あひだなく が思ふ君は あひ思ふらむか
《風強よて 揺れるなみやで ぁなしに うち思てるが あの人どやろ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七三六)
  
大伴おほともの 御津みつの白波 あひだなく が恋ふらくを 人の知らなく
御津みつ寄せる 波ぁなしや うちかても なし思うが 知らん顔やで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七三七)
  
大海おほうみに 立つらむ波は あひだあらむ 君に恋ふらく やむ時もなし
《海に立つ 波かて一寸ちょっと 休むのに あんたがれん 休むないで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七四一)




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古今相聞往来(上)編(29)眉根掻きつれ

2013年03月01日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年3月1日】

めづらしき 君を見むとこそ 左手ひだりての 弓取るかたの まゆきつれ



おとずれ待って 女はれる
来る か来ないか 来ないか来るか
んはずないに んのは怪訝おか
もしや夜道で 変事なんかたか

夕占ゆふけにも うらにもれる 今夜こよひだに 来まさぬ君を いつとか待たむ
《今夜来る うらないが とんのに えへんあんた 何時いつ来るんや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一三)
  
大海おほうみの 荒磯ありそ洲鳥すどり あさな 見まくしきを 見えぬ君かも
《毎朝に 洲鳥すどりる 毎朝に 見たいあんたは 一向いっこんわ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇一)
  
ならべて 君をませと ちはやぶる 神のやしろを まぬ日はなし
《毎晩に させてしと 神さんに ねごうてるんや 日ごと夜ごとに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六六〇)
  
めづらしき 君を見むとこそ 左手ひだりての 弓取るかたの まゆきつれ
滅多めったん あんた来てし 願いして ひだりまゆき 待ってるのんに》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五七五)
                         (左手ひだりて大事だいじほう=「めづらしき」に対応たいおう

あしひきの やまさくらを け置きて が待つ君を れかとどむる
さくらを はなしして 待ってるに 何方どなたがあんた 引き留めてんや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一七)
  
待ちかねて 内にはらじ 白栲しろたへの 我が衣手ころもでに 露は置きぬとも
っとって あんたまだやが 家入はいらんで うちの袖口そでぐち 露で濡れても》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六八八)
  
高山に たかべさ渡り 高々たかたかに が待つ君を 待ちでむかも
背伸せのびして 首ごにして 待つうちは あんた出迎え 出来るんやろか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇四)
                         (たかべ〈小鴨こがも〉→高々たかだか

真袖まそで持ち とこうちはらひ 君待つと りしあひだに 月かたぶきぬ
《両袖で とこきよめて あんた待ち そうことる 月西のや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六六七)





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古今相聞往来(上)編(28)夜道は行かじと

2013年02月26日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年2月26日】

いは踏み 夜道よみちは行かじと 思へれど いもによりては しのびかねつも




妻問つまどい男 黒髪思い
夜道辿たどって 門口かどぐち至り
はやる思いで 待ち続けるが
思い届かず  野宿の朝か

ぬばたまの 黒髪くろかみ敷きて 長きを 手枕たまくらうへに 妹待つらむか
《あぁお前 長いこのよる 待っとんか ひとり枕に 黒髪かみなびかして》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六三一)
  
ぬばたまの いも黒髪くろかみ 今夜こよひもか 我がなきとこに なびけてらむ
《また今日も あの児黒髪 なびかして 寝てるんやろか わしらんのに》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五六四)
  
行かぬを むとかよるも かどさず あはれ我妹子わぎもこ 待ちつつあるらむ
《行かれんに あの児このわし 来るかなと 門もめんと 待っとんやろか》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五九四)
  
いは踏み 夜道よみちは行かじと 思へれど いもによりては しのびかねつも
《岩を踏む 夜道めとこ おもうけど あの児おもたら 辛抱しんぼが出来ん》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五九〇)
  
月夜つくよよみ いもに逢はむと 直道ただちから 我れは来つれど けにける
《月えで あの児におと 近道で 早よ行こしたが よるけて仕舞た》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一八)
  
白栲しろたへの 我が衣手ころもでに 露は置き いもは逢はさず たゆたひにして
《わしのそで しもいてるに まだえん あのあかんで 躊躇ためらろてからに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六九〇)
  
奥山の 真木まきいたを 音はやみ いもがあたりの 霜のうへ
《がっしりの 板戸いたどきしんで よけんで そばしもうえ 寝て仕舞しもたんや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一六)




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古今相聞往来(上)編(27)打つ墨縄(すみなは)の

2013年02月22日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年2月22日】

かにかくに 物は思はじ 飛騨ひだひとの 打つ墨縄すみなはの ただ一道ひとみち



二人ふたり間の 関係えと
詠う 歌さえ 穏やか響く
お前 に心 べったり寄るよ
あんた 信じて 一筋うちは

むらさきの 名高なたかの浦の なびの 心はいもに 寄りにしものを
名高浦なたかうら 藻ぉ揺れなびく なびき揺れ わしの心は お前べったり》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七八〇)
  
葦鴨あしがもの すだく池水 はふるとも 設溝まけみぞに 我れ越えめやも
《池水が 増えてまって あふれても 越えてみぞ 行かんでわしは》
(恋心 がれ募って あふや けどわし一途いちず お前思てる)【比喩】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八三三)
  
うちはなひ はなをぞひつる 剣大刀つるぎたち 身にいもし 思ひけらしも
 くしゃみ出た またくしゃみ出た 添い寝して いつも寝る児が わし思とんや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六三七)
  
うらめしと 思ふさなはに ありしかば よそのみぞ見し 心は思へど
うた時 うらめし気持ち やったから 知らん顔した 心とごて》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五二二)
  
梓弓あづさゆみ すゑのはら野に 鳥猟とがりする 君が弓弦ゆづるの 絶えむと思へや
すえはら 鷹狩たかがゆみの つるれん 二人ふたりなかも れへんでなぁ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六三八)
  
かにかくに 物は思はじ 飛騨ひだひとの 打つ墨縄すみなはの ただ一道ひとみち
《あれやこれ おもうんめよ 墨縄すみなわの ただ一筋ひとすじに あんたしんじて》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六四八)
                         (墨縄すみなわ=材木に直線を引く大工道具)




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古今相聞往来(上)編(26)荒ぶる妹に

2013年02月19日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年2月19日】

栲領巾たくひれの 白浜しらはまなみの 寄りもあへず 荒ぶるいもに 恋ひつつぞ




相手こての 問答もんどう歌は
気心きこころ知れた 者同士どし交わす
たわむれ歌に 見えてはいても
きの つばいか

 問答】
かくだにも いもを待ちなむ さけて し月の かたぶくまでに
《こんなにも お前待ってて けた 出た月とうと 西沈むがな》
                          ―作者未詳―(巻十一・二八二〇)
より 移ろふ月の 影をしみ 立ちもとほるに さけにけり
あいだ うつつきて ひかりに めぐとって よるけて仕舞た》
                          ―作者未詳―(巻十一・二八二一)
(待ちけさすん 常時いっつもやんか
 そやかて月が 綺麗きれやったもん)

 問答】
うらぶれて 物な思ひそ 天雲あまくもの たゆたふ心 が思はなくに
《しょぼくれて おもしずみな くもみたい うわつきごころ わしてないで》
                          ―作者未詳―(巻十一・二八一六)
うらぶれて 物は思はじ 水無瀬川みなせがは ありても水は 行くといふものを
《しょぼくれて しずまんとくわ 水無瀬川みなせがわ 水はかくれて 流れておるで》
                          ―作者未詳―(巻十一・二八一七)
 離れてたけど 浮気やないで
 戻って 来てや 待ってるよって)

 問答】
おとのみを 聞きてや恋ひむ 真澄鏡まそかがみ 直目ただめに逢ひて 恋ひまくもいたく
《噂だけ 聞きがれてよ うたなら もっとがれて つろなるよって》
                          ―作者未詳―(巻十一・二八一〇)
このことを 聞かむとならし 真澄鏡まそかがみ 照れる月夜つくよも やみのみに見つ
《そううか やったんやな なんやしら つきってるに 滅入めいったん》
                          ―作者未詳―(巻十一・二八一一)
(逢いたちゃう つらいんや
  そんなん言うて 嘘決まってる)
  
 問答】
栲領巾たくひれの 白浜しらはまなみの 寄りもあへず 荒ぶるいもに 恋ひつつぞ
邪険じゃけんして 寄りつかせんで つんつんの そんなお前に わしれとんや》
                          ―作者未詳―(巻十一・二八二二)
かへらまに 君こそ我れに 栲領巾たくひれの 白浜しらはまなみの 寄る時もなき
《何うん あんた勝手に 避けとって うちの所為せいして 寄りつきせんと》
                          ―作者未詳―(巻十一・二八二三)
 お前きついぞ 惚れてんやのに
  嘘つきないな 避けてるくせに)




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古今相聞往来(上)編(25)明日も渡らむ

2013年02月15日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年2月15日】

明日香あすかがは 明日あすも渡らむ いははしの とほき心は 思ほえぬかも



相手こての いろいろ歌は
真面目まじめ男に 突進とっしん
情熱あつい女に ささげる女
尻の軽いも つつしみ見せる

明日香あすかがは 明日あすも渡らむ いははしの とほき心は 思ほえぬかも
明日香あすかがわ 毎日渡る 石橋は はなれてるけど 心はちゃうで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七〇一)
  
小治田をはりだの いたの橋の こほれなば けたより行かむな 恋ひそ我妹わぎも
《そんなにも せつがりなや 板田いただばし こわれても行く けたつとてでも》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六四四)
  
おほろかに 我れし思はば かくばかり かた御門みかどを まかめやも
加減かげんな 気持きもちやったら こんなにも 警戒けいかいかたい もんるか》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五六八)
  
今夜こよひの 有明ありあけ月夜つくよ ありつつも 君をおきては 待つ人もなし
《このままで 月ながめてよ 夜通よどおしで うちが待つんは あんただけやで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六七一)
                                    (有明ありあけ→ありつつ)

あしひきの 山沢やまさはゑぐを みに行かむ 日だにもはせ 母はむとも
かあちゃんが めたかてえ 山沢やまさわの えぐ摘む日には うてやあんた》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七六〇)
  
かにかくに 物は思はじ 朝露の が身ひとつは 君がまにまに
《あれこれと 悩まんとくわ らん うちやが全部 あんたに進呈あげる》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六九一)
  
がには れともめど 沖つ藻の 靡きし君が こと待つ我れを
だれとでも 共寝はするけども こころから 求婚さそいつのん あんたやでうち》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七八二)





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古今相聞往来(上)編(24)まきてさ寝ませ

2013年02月12日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年2月12日】

逢はずとも 我れはうらみじ この枕 我れと思ひて まきてさませ



 が進めば 二人の仲は
きずな強まり 嬉しさ増して
一途いちずの 尽しはするが
男ほっとし 気ぃゆるませる

あひ見ては おもかくさゆる ものからに ぎて見まくの しき君かも
ずかして 顔せるのに じきすぐに 見とうなるんや あんたの顔が》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五五四)
  
馬のおとの とどともすれば 松蔭に でてぞ見つる けだし君かと
馬足あしおとが どどっとしたで まつ木陰こかげ 出てみたんやで あんたかおもて》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五三)
  
くれなゐの 裾引く道を 中に置きて 我れはかよはむ 君か来まさむ
はなれてん 道一つやに うてへん うちからこか あんたがるか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五五)
  
逢はずとも 我れはうらみじ この枕 我れと思ひて まきてさませ
われんの うらまんとくわ このまくら うちやおもうて いててんか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六二九)
  
いつはりも 似つきてぞする いつよりか 見ぬ人ふに 人のしにせし
うそつきも 大概たいがいしいや 見もせんに いしてぬて たことないで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五七二)
  
心さへ まつれる君に 何をかも 言はず言ひしと 我がぬすまはむ
こころまで ささげたうに このうちが うたわんと 誤魔化ごまかしせんわ》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五七三)
  
我が背子せこが 使つかひを待つと 笠も着ず でつつぞ見し 雨の降らくに
《雨降るに 笠も着けんと 門出入でいりして あんたの使い うち待ってんや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六八一)





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古今相聞往来(上)編(23)我れと笑(ゑ)まして

2013年02月08日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年2月8日】

あしかきの 中の和草にこぐさ にこやかに 我れとまして 人に知らゆな



二人 関係 まずまず良しの
歌はほのかに つながりかお
忘れん といて 忘れるもんか
互いに交わす 微笑ほほえみ見える

いもかど 行き過ぎかねつ ひさかたの 雨も降らぬか そをよしにせむ
《お前いえ 素通すどおり出来ん うまいこと 雨降らんかな 寄る口実いいわけに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六八五)
  
たまの くくり寄せつつ すゑつひに 行きは別れず おなにあらむ
たまとおす ひも両端りょうはし くくったら たまはなれんと つながりなるで―二人の仲もつながり仕様しょうや―》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七九〇)
  
あしかきの 中の和草にこぐさ にこやかに 我れとまして 人に知らゆな
《にっこりと わしに微笑ほほえむ 嬉しいが 誰か見てるで 気ぃ付けんやで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七六二)
                                   (和草にこぐさ→にこやか)

いもがため いのち残せり こもの 思ひ乱れて 死ぬべきものを
恋苦くるしいて 死にやけども 辛抱しんぼして お前のために わし生きてくわ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七六四)
  
おも忘れ いかなる人の するものぞ 我れはしかねつ ぎてし思へば
面影おもかげを 忘れんだれや うちちゃうで ずっと思てて 忘れるもんか》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五三三)
  
くれなゐの あさの野らに 刈るかやの つかあひだも を忘らすな
《浅葉野で 刈る萱草かやくさの ひとつかの つかもうち 忘れんといて》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七六三)
  
夕占ゆふけ問ふ 我が袖に置く 白露しらつゆを 君に見せむと 取れば消につつ
こいうらに 出かけたそでに 白露つゆ置いた 見せよしたけど 次々消える》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六八六)




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古今相聞往来(上)編(22)来(こ)ずは来(こ)ばそを

2013年02月05日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年2月5日】

梓弓あづさゆみ 引きみゆるへみ ずはず そをなぞ ずはばそを




ねる女は わずらわしいで
軽く あしらう 男も悪い
女気持ちを もてあそぶんか
もしやあの人 離れんちゃうか

あひ思はず 君はあるらし ぬばたまの いめにも見えず うけひてれど
《うちのこと おもとらんのや 夢さえも 出てもんがな ごうて寝るに》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八九)
  
梓弓あづさゆみ 引きみゆるへみ ずはず そをなぞ ずはばそを
れん どっちやねんな はっきり 来るなら来ると んならんと ― 弓を引いたり ゆるめたりして》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六四〇)
  
つきくさの れるいのちに ある人を いかに知りてか のちも逢はむと言ふ
ひといのち かりのもんやと 知っとって うたんかいな その内またて》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七五六)
  
三島江みしまえの 入江のこもを 刈りにこそ 我れをば君は 思ひたりけれ
《三島江の こも刈るんや ないけども うちを思たん 仮初かりそめなんか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七六六)
                                   (り→仮初かりそめ)

手作てづくりを 空ゆ引き越し とほみこそ 目言めことるらめ 絶ゆとへだてや
《遠くり うもはなすも へんが 離れ別れよ 思てやいな》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六四七)
                             (手作り布を高くさらす空が遠い)

波のゆ 見ゆるしまの 浜久木はまひさぎ 久しくなりぬ 君に逢はずして
ひさし なって仕舞しもたで わんまま あんた小島の 浜の久木ひさぎか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七五三)
                                 (久木ひさきひさしく)




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古今相聞往来(上)編(21)恋(こひ)に死なする

2013年02月01日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年2月1日】

人もなき りにし里に ある人を めぐくや君が こひに死なする



焦がれ 女は 必死の思い
こいにするで 胸ける
せて影やで がれは夏草くさ
果ては来るなと うらはらごころ

大原おほはらの りにし里に いもを置きて 我れねかねつ いめに見えこそ
《大原の 田舎いなかにあの児 独り置き わし寝付ねつけへん 夢出ててや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八七)
  
里中さとなかに 鳴くなるかけの 呼び立てて いたくは泣かぬ こもづまはも
《あぁお前 内緒の妻は 大声で 泣きも出けんで がれてるか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇三)
  
人もなき りにし里に ある人を めぐくや君が こひに死なする
《人らん 田舎いなかまいの このうちを あんたひどいで こいにさすか》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五六〇)
  
ことへば 耳にたやすし 少なくも 心のうちに 我が思はなくに
《口したら なんでもうに 聞こえるが うちのこの胸 やで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八一)
  
夕月夜ゆふづくよ あかときやみの 朝影あさかげに が身はなりぬ を思ひかねに
《朝出来できる 影法師かげぼしみたい せて仕舞た あんた思うて えられへんで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六六四)
  
我が背子せこに が恋ふらくは 夏草の 刈りくれども ひしくごとし
《あんたへの うちのがれは 夏草なつくさや ったしりから えてきよるで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七六九)
  
さす竹の 節隠よごもりてあれ 我が背子せこが 我がりしずは れ恋めやも
《もうあんた 何処っかもって んといて あんたたび うち恋苦くるしんや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七七三)




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古今相聞往来(上)編(20)なぞ汝(な)がゆゑと

2013年01月29日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年1月29日】

きぬの 思ひ乱れて 恋ふれども なぞがゆゑと 問ふ人もなき



独りごち歌 愚痴ぐち歌多い
相手 ある歌 趣き変わる
相手こての 心伝つたえの歌は
がれ歌さえ 甘えが宿る

 し待っても 焦がれはするで
恋し相手を なじってみせる
こんな芸当げいとう 出来るは女
出来ん 男の 歌少しだけ

 旋頭歌】
真澄鏡まそかがみ 見しかと思ふ いもも逢はぬかも
たまの えたる恋の しげきこのころ
《逢いたいと 思うあの児に 出逢であえんもんか
 ここんとこ 逢わんで恋焦こがれ つのってる》
                          ―作者未詳―(巻十一・二三六六)
  
きぬの 思ひ乱れて 恋ふれども なぞがゆゑと 問ふ人もなき
《こんなにも こころみだれて がれるに 「うちの所為せいかと」 かへんのんか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六二〇)
                         (がゆゑ=間接話法・直接話法なら「がゆゑ」)

伊勢の海ゆ 鳴きたづの おとどろも 君が聞こさば れ恋ひめやも
たまにでも あんた音沙汰おとさた あるんなら うちこんなにも がれへんのに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二八〇五)
  
韓衣からころも 君にうち着せ 見まくり 恋ひぞ暮らしし 雨の降る日を
韓衣からころも 着せたあんたを うち見とて がれ過ごした 雨降るこの日》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六八二)
  
我が背子せこが け見つつ 嘆くらむ 清き月夜つくよに 雲なたなびき
《あの月を あんたあおいで がれるか このえ月に 雲かかりなや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六六九)
  
君に恋ひ ねぬ朝明あさけに が乗れる 馬のおとぞ 我れに聞かする
《恋しいて 寝られん朝に 誰なんや 馬足音あしおとさして 馬で行くんは》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五四)




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古今相聞往来(上)編(19)打てども懲(こ)りず

2013年01月25日 | 古今相聞往来編(上)
【掲載日:平成25年1月25日】

おも忘れ だにもえやと 手握たにぎりて 打てどもりず 恋といふやっこ



独りごち歌 くくるのは
他男ほか共寝る児に がれる男
あと思わんと 共寝仕舞た女
どこまでりん こいやっこ

ころも りといめに見つ うつつには いづれの人の ことしげけむ
《結ばれた 夢見たけども じつとこ 誰とも噂 立たへんのんや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六二一)
                                   (ころもを着る=結婚する)

あま飛ぶや かるやしろの いはつき 幾代いくよまであらむ こもづまぞも
かる神社やしろ まつつき神木 永久とこしえや 内緒ないしょの妻は いつまでやろか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五六)
  
こもの したに恋ふれば らず 人に語りつ むべきものを
むねなかで こらえてた恋 たまらんで しゃべって仕舞しもた たあかんのに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七一九)
  
我妹子わぎもこが なにとも我れを 思はねば ふふめる花の に咲きぬべし
《気にすらも あの児んので れて仕舞て めたむねなか 出て仕舞しまや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七八三)
  
しるしなき 恋をもするか ゆふされば 人の手まきて らむ子ゆゑに
《何でまあ こんな詰まらん 恋するか ばん他男ほかのと 共寝るあの児やに》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五九九)
  
そき板もち ける板目の あはざらば いかにせむとか 我が寝めけむ
いまえが あとわへんて なったとき どうおもて うち共寝たんやろ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五〇)
                         (そき板=薄くそいだ板 これでいた板目いためは合いにくい)

おも忘れ だにもえやと 手握たにぎりて 打てどもりず 恋といふやっこ
《せめて顔 忘れさそかと どついても 恋のやっこめ りんとるわ》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五七四)




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