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文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:なれる!SE(2)基礎から学ぶ?運用構築

2016-01-24 10:16:54 | 書評:小説(その他)
なれる!SE2 基礎から学ぶ?運用構築 (電撃文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA / アスキー・メディアワークス


 うっかりブラック企業に入ってしまった桜坂工兵のSEとしての成長物語(いや社畜化の物語か?)、「なれる!SE」(夏海公司:電撃文庫)の第2弾、「基礎から学ぶ?運用構築」

 この巻のテーマは、開発系と運用系のバトル。いわゆるIT業界では、開発系と運用系の人たちは仲が悪いらしい。その原因は、運用系の人々が報われない立場にいるからだ。脚光を浴びがちな開発系に対して、運用系はシステムが動いていて当たり前。トラブルでも発生しようものなら大変なことになる。給与の方にも残酷なまでの格差がついているという。このあたりの事情は、例えば「ウチのシステムはなぜ使えない SEとユーザの失敗学」(岡嶋 裕史 :光文社新書)などを読むとよく分かる。

 ご多聞に漏れず、スルガシステムでも開発系のSE部と運用系のOS(オペレーションサービス)部の関係は最悪。工兵の上司である室見立華とOS部の姪乃浜梢との関係は、まさに不倶戴天の敵同士。二人の間に挟まれて、工兵君はおろおろ、うろうろ。しかし、ブラック企業の毎日が修羅場という環境に鍛えられたのか、それとも二人共ロリッ娘系のかわいらしい女子だからか、なんとかその間を取り持とうとする。

 ソフトウエア関係ではないが、私も設備の運用には関わったことがあるので、「運用」の重要性はよく分かる。しかし、その業務をやったことがない人にはそのことがなかなか理解されない。特に経営陣や人事などは、運用系のことなど、まったく実態を分かっていない可能性がある。

 開発系と運用系の間に横たわる大きな溝は、本書にあるように、それぞれのリスクに関する考え方が違うということにより生まれる。これを解消するには、例えば人事交流により相互理解を図るといったようなことが考えられるだろう。明日は我が身のことだと思えば、片方だけの論理に囚われている訳にもいくまい。また社内の評価制度の問題もある。本来顧客の評価と社内の評価は別物である。それを同じ評価基準に押し込めようとするから齟齬が生じるのだ。

 ついこんなことを考えてしまったが、ストーリーのほうはブラック企業内でのバトルを描きながらもコミカルな感じで進んでいく。立華はツンデレキャラのためそれほど素直には工兵のことを褒めないが、梢の方はすっかり彼に懐いてしまったようでやたらとべたべたしてくる。これはもう完全にラブコメ展開。システムトラブルを、立華と梢が協力して片づけたことにより、仕事上では二人は歩み寄ったようだが、こんどは工兵を巡って一波乱ありそうだ。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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電力販売業者の営業活動ルールまとまる

2016-01-23 21:27:03 | オピニオン

 gooニュース(読売新聞)によれば、経済産業省電力取引監視等委員会が、4月からの電力小売りの全面自由化を受けて、電力販売業者が一般家庭に宣伝や勧誘などの営業活動を展開する上でのルールをまとめたという。

 これによれば、「停電しにくい」という宣伝文句はアウトだという。これは当然のことで、停電するかどうかは、送電事業者の範疇だし、仮に販売業者の電源が落ちたとしても、電力系統につながっている以上、電気は流れてくる。

 料金を時価とするのも禁止だというが、寿司屋じゃなんだから、時価はないだろう(笑)。市場原理に任せていると、需給状況によっては電気の単価が高くなる場合も当然ある。しかし、需要家にとっては、電気料金があらかじめわかっていないと、怖くて使えない。

 「地産地消」をアピールする場合、発電所の場所、電気の供給地域を明示しなければならないというが、電気の場合、受給の不一致で必ず過不足が生じるうえ、電気に色はついていないのでどこから来た電気かもわからない。完全な「地産地消」に根拠がない以上、これも禁止したらどうかと思うのだが。

 
 
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きのえ温泉ホテル清風館(見学会バス旅行2)

2016-01-23 19:12:19 | 旅行:広島県

ホテル清風館


 大崎クールジェンの見学が終わると、食事のために、同じ大崎上島にある「きのえ温泉ホテル清風館」に移動する。最近はあまり視た記憶はないのだが、このホテルはこちらのほうではテレビでCMが時折流れている。


清風館の食事(まだいくつか出ていないものがある)


 上の写真が、清風館で出た食事だ。今回の会費はいつもより高かっただけあり、なかなかいいものが出てくる。列挙してみると、①先付 和え物、②造里 三種盛り、③鍋物 牡蠣鍋、④焼物 アワビ踊り焼き、⑤揚物 海老天ぷら、⑥蒸物 茶碗蒸し、⑦吸物 つみれ汁、⑧御飯 チリメン釜飯、⑨香物 三種盛り合わせ、⑩水物 盛合せ。あまり食べるものに興味がない私は、こんな機会でもないと、まず口にすることはないだろう(笑)。


温泉入口


 食事のあとはゆっくり温泉につかる。上の写真が温泉の入り口。ナトリウム、カルシウムを多く含んだ塩化物冷鉱泉で、神経痛、関節痛、冷え性、高血圧など広く効能があるという。露天風呂からは瀬戸内海の景色が見えて、なんとも綺麗だ。血流がよくなるためか、体がポカポカするような感じがしばらく続いて、温泉に入ったという気分を十分に味わった。


○関連過去記事
大崎クールジェン見学(見学会バス旅行1)
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大崎クールジェン見学(見学会バス旅行1)

2016-01-23 10:53:26 | 旅行:広島県

竹原港の建物(たけはら海の駅)


フェリー


 もう先週のことになるが、所属しているある団体の見学会に参加してきた。目的は、大崎上島にある「大崎クールジェン」の見学。竹原港からバスごとフェリーに乗り込んで、大崎上島を目指す。


大崎クールジェン


 「大崎クールジェン」は中国電力と電源開発が半々の出資を行い、酸素吹きIGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle)の実証試験を行っている会社だ。IGCCとは、石炭をガス化し、そのガスでガスタービンを回したうえ、排熱を回収して蒸気タービンを回すというもので、石炭ガスを使ったコンバインドサイクル発電方式である。

 この会社は、中国電力の大崎火力発電所の構内にある。ここでは、PFBC(加圧流動床複合発電方式:Pressurized Fluidized Bed Combustion Combined Cycle)による石炭火力発電所が運転されていたが、現在は動いていない。しかし、IGCC実証試験のために発電所のユーティリティ設備を活用するとのことだ。

 この試験は3期に分けて行われ、第一段階の開始はH28年度から。効率は、送電端で40.5%(HHV)とのことである。ここで発電端とか送電端という言葉の説明をしておこう。発電所には、発電機だけでなく、そのほかにも多くの補機があり所内電力が必要となる。この分を差し引いて計算した効率が発電所出口の効率ということになり送電端効率という。また、それを考慮しない発電機だけの効率は発電端効率と呼ばれる。

 また火力設備の効率にはHHV(高位発熱量:Higher Heating Value)とLHV(低位発熱量:Lower Heating Value)の2通りがある。これは、燃料の発熱量として、含まれている水分や燃焼により生成される水分の凝縮熱を含むかどうかという違いである。要するに水が蒸発する際に必要な熱量を、燃料から差し引くかどうかということだ。差し引いた熱量で計算した値がLHV、差し引かないで計算した値がHHVである。

 ここで効率は(発電量)/(燃料の発熱量)×100(%)(ただし、分子分母は単位をKcalかkWhでそろえる)なので、分子が小さいほど、効率の数字は大きくなる。だから、本質は変わらないのに、LHVの方が数値としては大きくなるのだ。日本の電力会社の火力発電所は、伝統的にHHVを使ってきたが、欧米やアジアの発電設備ではLLVが主流だそうだ。わが国でもコジェネなんかはLHVで表されていることが多いので、効率を見るときには注意が必要である。数値的には大体1割くらい違ってくると思えばよい。

 ところで2期は、CO2分離・回収装置を追設したCO2分離・回収型IGCC実証試験。また3期は、これに燃料電池を組み合わせた、CO2分離・回収型IGFCの実証試験が計画されているとのことである。




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常磐共同火力 勿来発電所の排出ガス量虚偽報告問題に思う

2016-01-22 22:25:19 | オピニオン
 gooニュース(時事通信)によれば、東北電力や東京電力などが出資する常磐共同火力の勿来発電所6〜9号機で、2000年10月以降、15年間にわたり排出ガス量のデータを同市などに虚偽報告していたという。

 興味を持ったので、同会社のホームページに掲載してある調査報告書を読んでみた。気になるところを挙げてみよう。まず「2.原因の究明 (1)「ばい煙に関する説明書」の届出値に対する認識不足」の箇所に、<排出ガス量については、現実的な煙道での空気の漏れ込み分を考慮しないまま、理論値をベースに「届出値」としていた>と書かれていたこと。詳細は分からないが、推理してみると、設備が古くなってきたため、空気の漏れ込み量が多くなってきたので、理論値よりガス量が多くなったということだろうか。空気が漏れ込むことによって見かけ上のガス量が増えたのなら、実質的には問題はないはずだ。なぜ現実にあった数字に修正して届けなおしをせずに、改竄などという安易な手段に走ったのだろうか。もし、修正がやりにくいような制度になっていたり、そのような雰囲気が強かったりするのなら、そのほうが大きな問題だろう。

 次に、「2.原因の究明 (5) 内部監査」の箇所に、<内部監査については、当業務も監査の対象としていたが、環境部門の専門性が高いこともあり、詳細を確認することなく書類の確認にとどまった。また、書類を故意に改ざ んし別管理する中で、これを発見することは困難であった>と書かれていること。そもそも内部監査は、内部統制がきちんと機能しているかを確認することが第一義であり、個々の不具合の検出は副次的なものに過ぎないというのが私の理解である。このように、内部監査で発見できなかったことの言い訳をする必要があるとは思えない。内部監査部門とは不正発見のための捜査機関ではないのだ。

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地域別中小企業向け知的財産セミナー【広島開催】聴講

2016-01-22 16:06:53 | セミナー、講演会他

広島発明会館(このときは写真を撮り忘れたので、過去撮影したものを使用)


 昨日の午後は広島発明会まで、「地域別中小企業向け知的財産セミナー【広島開催】聴講」聴講に出かけた。テーマは、「~ 知財を企業経営に活かす ~ キヤノンのブランド戦略」である。

 まず森特許事務所所長で弁理士の森寿夫氏から「知財を企業経営に活かす」というタイトルで、概論的な話があり、続いてキヤノンの久留靖夫知財担当部長から「キヤノンにおけるブランド戦略」として、キャノンにおける取組状況が説明された。

 私も以前知財に関係する仕事に少し関わっていたことがあり、ある程度の知識は持っているのだが、時々制度が変わったりすることがあるので、常にアップデートを心がけていなければ、知識はすぐに古新聞になってしまう。

 今回驚いたのは、商標の使い方が変わってきているということだ。少し前なら、製品のデザインは意匠で保護するものだというのが普通の理解だったと思う。ところが立体商標が認められるようになって、製品の形そのものを商標として登録するようになっているらしい。商標だと、意匠と異なり10年毎の更新で半永久的に権利を維持できるので、ビジネスを進めていくうえで、ものすごく強力な武器になる。

 ヨーロッパでは、色彩のみからなる商標というのもあるらしい。これはさすがに少しやりすぎだと思うのだが、音だの動きだのも商標になる時代のようだからすごい世の中になったものだ。

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書評:藍色回廊殺人事件

2016-01-22 10:10:34 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
藍色回廊殺人事件 (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社


 男女が車ごと断崖から落とされるというちょっと怖いシーンから始まる「藍色回廊殺人事件」(内田康夫:講談社文庫)。浅見光彦シリーズのひとつとなる旅情ミステリーだ。

 今回の舞台は、四国徳島。光彦は八十八箇所の10番までの取材で徳島を訪れた。本書によれば、八十八箇所は、全てが弘法大師が開いたというわけではないそうだ。行基が開いた寺もかなりあり、今回光彦の取材対象である10番までのうち3番まどは行基の開基だという。こういった豆知識を作品の中に織り込んで、旅情を醸し出しているのがこのシリーズの特徴であり魅力なのだろう。

 ところで、冒頭の事件は12年前の出来事で光彦が徳島を訪れたときには迷宮入り寸前だった。光彦は、祖谷渓のかずら橋で被害者の妹、飛内奈留美と出会う。彼女とは、このあと色々なところで、出会うのだが、そのツンツンした態度に、光彦の印象は最悪。高いところとお高くとまった女が嫌いな光彦は、この2つが重なり、「あんな女」扱い。

 このシリーズでは、光彦とヒロイン候補とは色々な出会い方をしている。今回の奈留美とは、まるでラブコメ漫画を思わせるような出会い方だ。しかし、この作品でのヒロイン候補は奈留美だけではない。

 光彦は、五百羅漢のところで今尾賀絵と名乗る女性とも出会う。しかし実はその女性は、賀絵の妹の芙美だった。こちらは姉から「あほな女」扱い。ということで、今回はてっきりダブルヒロインかと思っていたのだが、残念なことに、後半では二人ともあまり存在感がなくなっている。

 取材先で必ずと言っていいほど事件に興味を持ってしまうのは光彦の病気のようなものだが、今回は奈留美のこともあり、案の定、12年前の事件に首を突っ込んでしまう。そしてもう一つ彼が興味を持ったのが、吉野川の第十堰問題だ。

 これは、歴史的価値のある古い堰を壊して、多額の建設費をかけて1キロ下流に稼働堰をつくるというもの。この工事は、150年に1度の洪水に備えてのものらしい。この作品は、これに疑問を呈している。実は、シミュレーションなど、前提条件を変えたりパラメータをいじくればなんとでもなるようなものだ。だからシミュレーションにより出しましたというようなものは、きちんと前提条件や使われているアルゴリズムなどを検証する必要がある。この意味で本作品の問題意識は正しい。

 そして、この可動堰の実施計画立案が始まったのも12年前。事件のもういっぽうの被害者である棟方崇は、建設会社に勤務していた。光彦はこの時期の一致に不穏なものを感じ取る。

 この作品に描かれているのは政官財の癒着。公共工事にまつわる利権をテーマにして社会派ミステリーとしての性格を覗かせながらも、88箇所の寺や祖谷渓や脇町のうだつの町並み、伝統工芸の藍染めなどを紹介して旅情もたっぷりだ。更には、男女の愛憎、親子の情愛などを旨く絡まった面白いミステリーに仕上がっている。

 ところで光彦は、警察が事故と見做したような事件を、まったく違う観点からひっくり返すことがよくある。この作品でもそういった場面が盛り込まれているのだ。ここから学べるのは、予断を持って物事を見ることの危険さだろう。これは、ミステリーという狭い世界に限らず、ビジネス一般にも通じること。ミステリーからでも色々学ぶべきことはあるのだ。

 しかし、最後の1%で間違えているのもいかにも光彦らしい。あまり完璧な名探偵だと、読者は親しみがわかないものだ。だから、これも光彦を完璧な名探偵にはしたくないという作者の思いがあるからなのだろう(きっと)。


☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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書評:フロスト日和

2016-01-20 09:10:08 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
フロスト日和 (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社


 フロスト警部が活躍するシリーズのひとつ「フロスト日和」(芹沢恵訳:創元推理文庫)。

 主人公のフロスト警部は、デントン署に勤務する警部だが、所長のマレットからの覚えは最悪。なにしろ描かれている姿は、皺だらけのスーツを着た、すっかり生え際が後退している、見るからにだらしない40代後半の男。事務仕事は大の苦手で、犯罪統計や残業申請はいつも後回し。それがよけいにマレットをイライラさせる。

 このマレットという所長。上司としては最低の部類。権力者にはへいこらし、下には威張り散らす。フロストも、しょっちゅう小言を聴かされるので、嫌ってはいるのだが一応は上司。なるべく顔を合わさないようにすることと、陰で悪口をいうことしかできない。

 なぜか、このデントン署管内では事件がよく起きる。女子中学生失踪事件、若い娘の連続強姦事件、浮浪者殺害事件、警官殺人事件、ソヴリン金貨盗難事件、老人ひき逃げ事件、強盗傷害事件といった具合だ。実はこれらの事件は色々絡まり合っており、それがフロストによりどのように解きほぐされていくのかというのが、この作品の読みどころの一つだろう。

 この作品には、アレン警部というデントン署のもう一人の警部が出てくる。こちらは自分を有能だと思っており上昇志向が強い。階級が下の者にはやたらと威張りちらすばかりでなく、同じ階級のフロスト警部への接し方もまるで部下扱い。マレット所長の覚えも目出度い。

 しかし自分が優秀だと思っているアレンは、実際には殆ど犯罪の解決に寄与せず、すべての事件の解決にはぼんくら親父扱いされているフロスト警部が関わっている。この大きなアイロニーに、読者はスカッとするのである。

 もっともフロストの捜査方法も、あまり褒められたものではない。ハッタリが多く、所持している万能鍵を使って勝手に人のロッカーを開けたり他人の家に忍び込んだりするのだ。また一旦捜査に入ると、まるで時間感覚がなくなる。だから彼のお守りをするはめになる部下は大変だ。

 今回彼のお守り訳をするのは、上司を殴り飛ばしたために警部から巡査に降格されて、デントン署に配属されてきたウェブスターという男。不眠不休で捜査に駆り出され、せっかく仲良くなった婦警のスーザンとのお楽しみも幾度となくチャンスを潰されるという悲惨さ。フロストのことを心の中で散々「ぼんくら」と呼んでいたウェブスターだが、最後の方では少し認識が変わったような感じだった。このお守り役の存在が物語の面白さを増加せているのだと思う。

 ともあれ、この冴えない中年オヤジが大活躍する物語は、同じような年代の人の共感を呼ぶのではないだろうか。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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産業創出後援会 新時代を切り拓く超高速鉄道の実用化 聴講

2016-01-19 11:33:54 | セミナー、講演会他



 昨日の午後は、広島市の基町にあるメルパルクで、「産業創出後援会 新時代を切り拓く超高速鉄道の実用化 ~リニアモーターカーの技術動向~」を聴講してきた。講師は、東京大学大学院教授 大崎博之 氏。内容は、中央新幹線で使われるリニアモーターカーの概要に関してである。

 リニアモーターカーにもいろいろ種類があり、中にはすでに実用化されているものもあるが、中央新幹線で使用されるのは、電磁誘導方式磁気浮上/リニア同期モーター推進の超高速鉄道システムである。最高速度はなんと500km/h以上。東京~大阪を67分で繋ぐ計画だそうだ。これだと、料金的なことを別にすれば、空港までのアクセスや搭乗手続きの煩雑さを考えたら飛行機よりずっとよい。しかし、まず開業する東京~名古屋の約87%がトンネル区間だそうだから、旅の楽しみというようなものはなくなり、ただの移動手段に過ぎなくなってしまうということもある。ビジネス命という人たちには歓迎されるかもしれないが。

 2027年に、まず東京~名古屋が開業し、東京~大阪の開業予定は2045年だそうだから、まだまだ先の話だ。2027年は話の種に乗ってみたいと思うのだが、2045年だとはたして自分自身がどうなっているか(笑)。





 昼食は、株主優待券を使ってマクドナルドで摂った。券1枚で、バーガーとサイドメニューそして飲み物をそれぞれ1点選べるのだが、今回はえびフィレオとチキンマックナゲット、爽健美茶のLサイズ。優待券はまだ残っているが、3月末が期限なので、しっかり使わないといけない。

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書評:秋田殺人事件

2016-01-18 08:23:03 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
秋田殺人事件 (光文社文庫)
クリエーター情報なし
光文社


 かって秋田県の第三セクターが世間を騒がせたことがあった。首都圏における秋田杉の需要を増やすために作られた「秋田県木造住宅株式会社」が、千葉県でとんでもない欠陥住宅を大量に販売して大きな社会問題になったというものである。世にいう「秋住事件」だ。「秋田殺人事件」(内田康夫:光文社文庫)は、この「秋住事件」をモチーフにした浅見光彦シリーズの一冊である。

 このシリーズは旅情ミステリーと言われることが多いが、実はその時々の事件をモチーフにした作品も結構存在する。本作もその一つで、社会派小説としての性格が強いものだ。なおこの作品では、「秋田県木造住宅株式会社」は「秋田杉美林センター」という架空の名前に変えられている。作品の中では、秋田県はこの会社の巨額な使途不明金の問題で大きく揺れ動いていた。

 事件はアパート経営者の富田秀司という男が、車が燃えて火達磨になりながらも助けを求めて歩くという、かなりショッキングなシーンから始まる。更には米代川から、秋田県調査部部長付の石坂修という人物が死体で見つかるのだ。ところが警察は、この2つの事件を早々に自殺と断定してしまうのである。
 
 そんな秋田県に副知事として招かれたのが、文部省(作品当時)の女性課長で光彦の兄陽一郎の東大の後輩である望月世津子。行った先で何が待ち受けているか分からないということで、副知事の私設秘書という名目で光彦を同行させることに。

 つまり今回光彦は、いつものようにフリーのルポライターとして事件に首を突っ込んでいくのではない。副知事の後ろ盾があって、堂々と事件を調査していくのだから、このシリーズとしては、かなりの異色作といっても良いだろう。

 しかしいくら副知事のバックアップがあったにしても、一筋縄でいくようならミステリー作品にはならない。光彦たちを待ち受けていたのは、政治家、役人、経済界に暴力団、そして警察までが複雑に絡み合った、どろどろとした伏魔殿。実際の事件の方の真相がどのようなものであったかは、寡聞にして知らないのだが、内田氏もモデルが誰かということがすぐ分かるような話を、よくここまで書けたものだと感心する。

 ところでこのシリーズにはヒロインがつきものだ。望月世津子の方は美人という設定ながら、光彦との年齢差が大きいためヒロインと呼ぶのは少し違うようだ。しかしさすがに陽一郎の後輩。気持ちの良い女傑だ。

 この作品でヒロインを演じるのは、石坂修の娘の留美子である。秋田大学の2年生で典型的な「秋田美人」のようだ。かなりのミステリー好きということもあり、光彦とはかなりいい関係になっていたのだが、最後に光彦がある誤解をしたために今回もヒロインとはすれ違いになってしまった。誤解から秋田美人を袖にするとは、光彦の痛恨のミスといっても良いだろう。

 事件の結末だが、こちらはどうも不完全燃焼と言う感じだ。光彦が事件の全貌をレポートに纏めて、爆弾を投げ込んだ形で終わっているからである。筋は通っているが仮説も多く、それを裏付けるのは警察と検察の仕事だということで済ましてしまっている。

 殺人事件の実行犯は分かったと書かれてはいるものの、具体的に誰がどのような役割を演じていたのかは謎のままだ。こういった終わり方も、このシリーズでは珍しい。やはり実在の人物との関係で、さすがの内田氏もそこまでは書けなかったということなのだろうか。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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