かなり硬派な科学雑誌、
「数理科学」(サイエンス社)の2014年4月号。この号の特集は、
「物理現象における表現の多様さ」である。
物理学には、同じ自然現象を説明していくのに、複数のアプローチの仕方がある。例えば、力学の場合、通常の力学の教科書に書かれているようなニュートン形式で記述する方法と、ラグランジェ形式、ハミルトン形式を使った解析力学という形で表す方法がある。
また、電磁気学においても、電磁力を電磁場の中に置かれた電荷や磁荷に働くクーロン力として記述する方法の他に、ファラデーの電気力線や磁力線に働くマックスウェルの応力として表す方法もある。
本書には、上記に関する記事のほか、量子力学の経路積分的見方、熱力学を説明する様々な見方、超伝導のマクロな見方とミクロな見方など、多くの興味深い話が続く。これらの多彩な表現法は、その中のどれが絶対的に優れているというようなものではない。色々な見方に習熟することで、自然現象に対して、幅広い見方をすることができるようになるのだ。
ただし、細かい説明はなしに、いきなりエッセンスとなる数式がばんと示されたり、出てくる概念が難しかったりと、専門家ならともかく、一般の科学好きの人は、相当の予備知識を持っていないと、スラスラと読む訳にはいかないだろう。素人向けに、直感的に分かりやすくといった妥協はほとんど見られないのだ。冒頭で硬派と言ったのはそういう意味である。(正直私も半分くらいしか理解できません(涙))
しかし、数理科学には、こういった領域があるということが分かるだけでも、この方面を志す方にとっては、大きな指針となることだろう。科学雑誌が売れないという日本で、私が学生のころに既にあったこの雑誌が、現在まで月間で発行が続いているという意味は大きい。
ところで、連載記事「大学院入試問題からみた大学の数学」のこの号のテーマは「ラプラス変換」。この変換を使えば、微積分方程式を、解析的にではなく、代数的に解くことができるという優れモノで、電気工学を学ぶ人には必須のものである。こういった記事ばかりなら割と読みやすいんだけどなあ(苦笑)。
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