goo blog サービス終了のお知らせ 

文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

浅見家四重想 須美ちゃんは名探偵!?

2025-05-09 21:20:12 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 表題にある須美ちゃんとは、浅見家のお手伝いさん吉田須美子のことである。浅見光彦シリーズ番外とついているように、浅見家というのは故内田康夫が生んだ名探偵浅見光彦の実家である。

 ただ、本編のように殺人事件が出てくるわけではなく、須美ちゃんが日常のちょっとした疑問を解き明かすというもの。

 このタイトルにある四重想というのは、浅見家の面々、ただし光彦と兄の陽一郎を除いた4人、すなわち光彦にとっては兄で警察庁刑事局長の陽一郎の子供で姪、甥にあたる智美(さとみ)、雅人(まさと)、陽一郎の妻和子、陽一郎と光彦の母親である雪江が抱いたちょっとした疑問を澄ちゃんが解決していくというもの。

 なお四重想と名付けられている通り、この作品は4つの短編から成り立っている。そして、どれも上記の4人の名前が短編のタイトルにつけられている。

1.雅な悩みごと
 俳句の盗作騒動。これは雅人の話。

2.智は愛されし
 智美がラブレターをもらった。智美の話。

3.和を繋ぐもの
 和子が昔の友人との絆を取り戻す話。

4.雪に希いしは
 雪江が見かけた二人の少女。見かけたときは片方が目をつむっていたので目が不自由かと思ったら、次のときは目をつむっている少女がいれかわっていた。次に須美ちゃんが見かけたときは二人とも目を開けていた。

 浅見光彦シリーズ、私のお気に入りのシリーズだったので、全話を踏破していたのだが、内田さんが亡くなられて、新作が読めなくなったのが残念であるが、新作は読めなくても番外という形で登場人物が出てくるのはなんとも楽しい。
☆☆☆☆








コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

半七捕物帳 42 仮面

2025-04-11 23:52:43 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 この話も他の話と同じように、明治になって、新聞記者の「わたし」が、元江戸の岡っ引だった半七に、岡っ引時代の思い出話を聞くという形式になっている。

 内容は京橋東仲通りの伊藤という道具屋に、一人の男が現れた。その男は店の片隅にある古い面に目を付け、この面を買いたいという。伊藤の主人・孫十郎はその面の値段は25両だというが、男は通りがかりなので、手持ちがなく3両の手付を払った。

 ところが、それから1刻あまり過ぎ、立派な若侍が道具屋を訪れ、その面は屋敷の主人が権現様から直々に拝領したもので、虫干しの折に紛失したものであると言う。

 孫十郎、ここで欲を出し、面の値段は150両と吹っ掛ける。そして最初の客に手付を返して破断にしようとする。しかし、最初の客は、手付をそのまま返すのでは納得しない。最初は100両と言っていたのだが、結局75両で手打ちにした。

 75両出しても大儲けだと、取らぬ狸の皮算用をした孫十郎だが、いくら待っても若侍は現れない。孫十郎は騙されたと思ったが、実は「事実は小説より奇なり」ということだろうか。驚くような結末だった。これから得られる教訓は、「人間欲をかきすぎると碌なことはない」ということだろうか。
☆☆☆☆





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

百足屋殺し

2025-04-05 19:19:28 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 これも銭形平次シリーズのひとつだ。お玉ケ池に店を構える煙草問屋百足屋の主人市之助が殺された。それに先立って、お玉ケ池周辺で変な泥棒が流行っていた。大きい家を狙つて、雨戸を外して入り、泥足で家中荒し廻るのだが、それに反して、盗るものといえば。薬缶だの洗濯物の包みだの子供の玩具だのといった大したものではないものばかりなのだ。

 これに挑むのが平次である。平次は見事に百足屋殺しと変な泥棒の謎を解き明かすのだが、犯人を捕まえようとはしていない。事件は市之助の自業自得のようなものだったからだ。多くの警察ドラマなどでは、犯人をつかまえるのが自分の仕事だとばかりに、どんな動機があろうとも逮捕するが、平次にはそんなところはない。法律を厳密に適用すればアウトだが、平次はそんなことにはとらわれない。それが平次の魅力の一つではないかと思う。

 銭形平次といえば投げ銭である。ドラマでは毎回のように平次の投げ銭シーンがあるが、原作の方では投げ銭をすることは稀である。この話にも投げ銭は出てこない。投げ銭シーンが出てくると、この話では出てくるんだと変な感動を覚えてしまう。でも投げ銭がほとんどでてこないならどうして銭形平次なんだろうと思った。
☆☆☆☆
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

放課後探偵団

2025-03-05 00:27:33 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 本書は学園ミステリーのアンソロジーである。最初に断っておくが学園ミステリーなので、殺人事件など起こらない。登場人物たちが挑むのは、学園で起こったちょっとした謎。普段はあまりアンソロジーは読まないのだが、相沢沙呼さんの作品が入っているので手を出してみた。私は気に行った作家の作品は一気に読みたい方であるが、他にもお気に入りの作家を見出すチャンスかもということもある。

 収録されているのは次の5人の作家による5つの短編。
1.似鳥鶏 お届け先は不思議を添えて
 映研所蔵のVHSテープをDVD化すると言うので段ボール3箱分送ったのだが、そのうち一箱分のVHSテープが伸びてぐちゃぐちゃになり再生不能になっていた。なぜ?

2.鵜林伸也 ボールがない
 一年野球部員が、ノックに使ったボールをひたすら探すという話。鬼監督が一年生部員にボールを探させるが見つからない。
 
3.相沢沙呼 恋のおまじないのチンク・ア・チンク
 サンドリアンシリーズの短編が収録されている。バレンタインのチョコがなぜか教室の先生の机の上に集められていた。義理チョコも、本命チョコも。

4.市井豊 横槍ワイン
 他は高校時代の話だが、これは大学での話。同好会で撮影した映画の鑑賞会の最中、メンバーの女学生がワインをかけられた。犯人は誰?

5.梓崎優 スプリング・ハズ・カム
 高校卒業後15年目の同窓会に集まったかっての同級生。実は彼ら彼女らの卒業式の時に、「仰げば尊し」を流すはずが「燃え北」という曲が流れた。しかし放送室はもぬけの空。「燃え北」というのは昨春の学園祭用に放送委員会が作ったロック調の曲なのだが、なぜか受けてその後も流行していたものだ。ところが同窓会でタイムカプセルを開けると「犯人は私だ」と記載されたものが。残念なことに無記名。そこで推理が始まる。最後はちょとオカルッティックな終わり方だった。

 残念なことに、続けて読みたいと思った作家はいなかったが、相沢沙呼さん以外は寡聞にして知らない名前ばかり。でもやはりミステリーには大事件が付随して欲しいなあ。 
☆☆☆☆
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オロチの郷、奥出雲

2025-02-03 18:35:29 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 本書は、「鬼棲む国出雲」から続く「古事記異聞シリーズ」の2冊目にあたる。主人公は橘樹雅(たちばなみやび)という日枝山王大学に通う女子学生。大学4年で某一流企業への就職を希望していたが、彼女の就職活動は全廃。新学期から大学院へ通うことになった。研究テーマは「出雲」。

 興味があった水野史比古教授の主宰する民俗学研究室に所属することになっているが、肝心の水野教授は1年間のサバティカル・イヤーということで留守中。

 この水野研究室の面々が変人だらけなのだ。教授の水野も変わっているといえばいえるのだが、准教授の御子神伶二と助教の波木祥子のコンビは雅の目からは最悪である。なにしろ御子神は見てくれはいいが、口を開けば棘だらけの言葉が飛び出すのである。波木の方は一日中資料に目を通していて、用事があって声をかけても。挨拶をしても完全に無視されてしまう。この二人、大学でこそ生きていけるが、普通の社会人にはなれないだろうなと思うのは私だけだろうか。

 さて本書の内容だが前回出雲の神社を回った雅は、出雲に関する見識を深めるため、今回は奥出雲まで足を延ばしている。奥出雲というのはヤマタノオロチ伝説の舞台となった地である。

 高田ミステリーの特徴は、古代の出来事と現代の事件がクロスオーバーしていることだろう。今回も雅は奥出雲で起きた事件に巻き込まれる。しかし他の作品にも言えることだが、こういう原因で殺人事件を起こすのならもう狂信者としか言いようがない。極めて特殊な人しか事件を起こすまでには行かないだろうと思うのだが。まあ事実は小説より奇なりというので、もしかしたら結構いるのかな。
☆☆☆







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

軽井沢迷宮 須美ちゃんは名探偵!?

2025-01-15 01:02:31 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 タイトルにある須美ちゃんとは吉田須美子、浅見家のお手伝いさんである。本書は故内田康夫さんによる浅見光彦シリーズの番外となる。ただ主役はあくまでも須美ちゃん。光彦は一応出てくるが、この作品では割と重要な役割をこなしてはいるものの、どちらかといえば脇役のような扱いである。本編のように殺人事件など出てこない。でもミステリーらしく、謎解きは出てくる。

 今回須美ちゃんは、歳の離れた友人である花屋・花春の主人小松原育代といっしょに1泊2日のミステリーツアーで軽井沢を訪れる。このミステリーツアーに応募するには、ちょっとした謎解きが必要である。

 このミステリーツアーの企画者は多田光羽(おおたみつは)という女性。この光羽さんのまだ見ぬ父を探すというのが全体の大きなテーマである。

 光彦は電話の向こうで須美ちゃんにいろいろとヒントとなることを話しているが、これを謎解きに活かせるのは、さすが浅見家で鍛えられた?須美ちゃんというところか。でも出てくるパズル、よほど好きな人でなければ解けないだろうなあ。
☆☆☆☆

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鬼棲む国出雲

2024-10-28 22:47:50 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)


 高田嵩史さんの「古事記異聞」と名付けられたこのシリーズ。舞台は出雲だが、出雲といっても、今の出雲市だけではない。要するに島根県の東半分、昔で言う出雲の国ということである。

 主人公は東京麹町にあると言う設定の日枝山王大大学院に新学期から通う橘樹雅(たちばなみやび)という女子学生。実は彼女就職希望だったのだが、志望する会社は全滅。一流企業に入って、エリートサラリーマンと恋に落ちと頭の中に描いていた夢は儚くも崩れ、大学院に進むことになった。

 彼女は民俗学に興味を持ち、民族学の研究室を主宰する水野教授の研究室に入るのだが、肝心の水野教授はサバティカルイヤーで長期休暇中。研究室を任されている准教授の御子神伶二や助教の並木祥子は一癖も二癖もありそうな変人である。それでもめげずに研究テーマの出雲を取材するために旅立つのだが、そこで事件に巻き込まれる。

 古代の出来事と現在の事件をクロスオーバーさせるという手法は、他の高田作品と同様。でも彼女と事件がクロスオーバーするのは全体の7割近くである。これはさすがに遅すぎるのではないか。まあ、古代史の謎が色々提示されるのは面白いと思うのだが。
☆☆☆☆










コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

半七捕物帳 46 十五夜御用心

2024-10-17 19:23:33 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 この話も他の話と同じく、半七老人が、目明し時代の思い出話を作家の「私」に聞かせるという形のものだ。今回話されるのは虚無僧の話。舞台は本所押上村にあった竜濤寺という荒れ果てた古寺。そこにある古井戸からなんと4人もの死体が見つかった。内訳は謎の虚無僧二人に、その寺の住職と納所。不思議なことにその死体には疵が無かった。

 我らが半七親分が解き明かすのは、事件の謎と4人の死因。そして4人の正体。ヒントは彼らの話に出てきた「諏訪神社」と言う名前。「諏訪大社」ではない。「諏訪神社」だ。ただし、通称は「〇〇大社」らしいのでちょっとややこしい。そしてその寺に関係すると思われる2人の女。

 もちろん半七親分は、その謎を解き明かして、事件を解決に導く。副題の「十五夜御用心」とは、犯人の一人が、細工された木魚に自分の甥を助けようと思って入れた注意を促す文から。もっとも、この文には誰も気がつかなかったようで、結局半七らによって発見され、事件にはあまり関係はなかったかな。そういった意味で、これを副題とするのはどうかと思う。
☆☆☆










コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

銭形平次捕物控 183 盗まれた十手

2024-10-11 09:38:14 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 毎度おなじみの「銭形平次捕物控」である。盗まれたのは平次の十手だが、直接盗まれたという訳ではない。ガラッパチ」が平次から借りたものを盗まれたのである。

 この話の迷探偵役は、いつものように三輪の万七ではなく、ガラッ八が勤めている。万七も出てくるが、敵役としてである。ガラッ八が迷探偵というのは、思い込みで、無実の人間を犯人扱いしたというところだ。そして万七が敵役というのは、平次の十手を本人に返さずに、わざわざ奉行に届けているところである。おかげで万七は面目を失うようなものを盗られたのだが、平次は易しいので、それをこっそり返すことになった。

 さて話の方だが、平次とガラッ八は兩國橋で身投げしようとしていた一人の男を救う。水右衛門というその男は、領主の大久保加賀守の屋敷に年貢筋100両を届けに行く途中で掏られたというのだ。ここからが迷探偵ガラッ八の出番。水右衛門から聞いた話によると、掏ったのは一枚絵のお時に違いないと言って、彼女の貯めていた100両を水右衛門に渡してしまった。一枚絵のお時は元掏りで、その二つ名は某の描いた一枚絵の美女に似ているという噂からだ。今は足を洗ってささやかな小間物屋を開いている美女だ。

 もちろんこの事件には裏があった。それにまんまとだまされたのが平次と八五郎という訳だ。そう平次も珍しいことにまんまと騙されたのだ。お時は意趣返しに八五郎の十手を盗んだのだが、実はそれが平次から貸してもらっていた十手だったというわけである。

 ところで、平次の十手だが、房が付いているという設定だが、実際には岡っ引きの十手には房はついていない。平次も岡っ引気には変わりはないので、十手に房はついていないはずだ。それにしても平次は何のお咎めもなかったのだろうか。一応事件は解決したが、十手を盗まれたということに何のお咎めもないとは思われない。でもその辺りがこの作品には書かれていないのでよく分からない。

 この話にも平次お得意の投げ銭は出てこない。平次=投げ銭と思っている人は、認識を新たにして欲しい。投げ銭の出てくる話もあるが、むしろ少数派である、テレビドラマの旅に事件ごとに銭を投げているわけではない。貧乏暮らしの場面が良く出てくるので、あまり銭を投げると、お静さんに怒られるんだろうな。
☆☆☆☆
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

須美ちゃんは名探偵!?

2024-07-28 19:04:29 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)


 2018年に亡くなられた内田康夫さんの代表作といえば浅見光彦シリーズなのだが、このシリーズによく登場しているキャラクターがいる。それは吉田須美子(愛称須美ちゃん)、浅見家住み込みのお手伝いさんだ。浅見家の当主は兄の陽一郎であり、次男の光彦はしがないフリーのルポライター。この光彦が名探偵役となり数々の難事件を解決していくというのが浅見光彦シリーズなのだが、兄の陽一郎が警察庁刑事局長と言う設定なので、最初は光彦を犯人扱いしていた警察が見事な手のひら返しをするシーンがなんとも面白いのである。

 それにしてもいくら兄の陽一郎が警察庁刑事局長とはいえ公務員である。だから陽一郎の給料だけでは、とても住み込みのお手伝いさんを雇うことは無理だろう。おそらく浅見家はかなりの資産家なのだろうと思う。

 それはさておき、本編の方では殺人事件が当然のように起こるのだが、「浅見光彦シリーズ番外」と銘打ったこの作品では殺人事件は起こらない。本書で描かれているのは、須美ちゃんと生花店の店主である小松原育代との交流を通じた優しい謎。

 収録されているのは次の4編、すなわち「花を買う男」「風の吹く街」「鳥が見る夢」「月も笑う夜」である。どれもハートウォーミングな物語と言えるだろう。
☆☆☆☆








コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする