文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:ジョン・カーター

2016-02-29 08:14:30 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
ジョン・カーター (映画文庫)
スチュアート・ムーア
竹書房

・スチュアート・ムーア/エドガー・ライズ・バロウズ

 ジョン・カーターという名前はある年代以上のSFファンには懐かしいだろう。もちろん、エドガー・ライズ・バロウズによる名作「火星シリーズ」の主人公のことだ。その1作目にあたる「火星のプリンセス」が、2012年に彼の名前をタイトルとして映画化された。本書は、その映画化された作品をもう一度ノベライズし直したものだ。原作の小説がちゃんとあるのだから、映画を再びノベライズすることにどんな意味があるのか。実は映画の設定が、細かいところでバロウズの原作と違っているので、こちらはこちらでちゃんと楽しめるのである。

 ストーリーはよく知られているとおりだ。時代はアメリカの南北戦争のころ。南軍の大尉だったジョンカーターが、火星に行き、4本腕の緑色人タルス・タルカスと友情を結び、美しい赤色人の王女デジャー・ソリスを助けて大活躍するというものである。

 原作となる「火星のプリンセス」で、かって武部本一郎さんの描くデジャー・ソリスの女神のような美しさに胸をときめかした青少年も多かったろう。しかし本書に掲載されたデジャー・ソリスの写真を見ると、そのイメージががらがらと崩れていく(笑)。いや美人なのは美人なのだが、女神というよりはアマゾネスという感じなのだ。

 ところでデジャー・ソリスは赤色人という設定だ。赤色人と聞いて、連想するのはネイティブアメリカンの人々である。カーターが火星にいくきっかけになったのは、ネイティブ・アメリカンに追われて洞窟に逃げ込んだことだ。そして彼は奴隷制度を支持していた南軍の将校だったのである。それが火星に渡って赤色人の王女であるデジャー・ソリスと恋に落ちるのは、一種のアイロニーのようにも思える。

☆☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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書評:めくりめくる4

2016-02-27 09:17:24 | 書評:その他
めくりめくる 4巻 (ガムコミックスプラス)
クリエーター情報なし
ワニブックス


 この作品は、倉敷を舞台に繰り広げられる、とっても可愛らしい女子校生たちの青春群像を描いたものだ。特に大事件が起きるというわけではない。ドラマチックな出来事などもない。描かれているのは、彼女たちの日常風景。友達と遊んだり、男の子のことが気になったり。どこにでもあるありふれた光景だ。

 しかし、それこそが青春の1頁。特別なことが無くとも、キラキラと輝いていたあの時代。人はそれをノスタルジーと呼ぶのかもしれない。そう、この作品は、ノスタルジーをいたく刺激するのだ。

 例えば、岡咲瑠華という少女の話。気になる日高君と携帯番号を交換して喜んでいたところ、彼が携帯を水没させデータが消えてしまったらしい。番号を登録しなおしているところに、自分の番号を教えようとすると、「岡咲さんのは別に・・・」と言われて落ち込む。実はこれは、彼女の分は別にメモしているので聞かなくてもよかったという意味だったのだ。誤解が解けて、二人の仲はちょっとだけ進んだようだ。納められているどの話も、このようにちょっとした出来事を描いているのだが、とっても微笑ましいものばかりで心がほっこりする。

 作者は、倉敷出身だということだ。そのせいだろうか、作品には倉敷の少女たちに対する暖かい眼差しを感じる。

☆☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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書評:琵琶法師 -<異界>を語る人びと

2016-02-25 12:37:30 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
琵琶法師―“異界”を語る人びと (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店

・兵藤裕己

 ハーンの「怪談」に収められている「耳無し芳一」の話。琵琶を持ち、物語を弾き語る琵琶法師は、中世における物語・語り物伝承の担い手だった。本書は、この琵琶法師について歴史的な沿革をたどりながら、その芸能と宗教の面についても考察したものだ。

 楽器としての琵琶自体はペルシャ周辺で発生したものが、中国で改良され日本に渡来したものだという。また盲人が琵琶を弾いて芸能や宗教活動に関わるのも、同じように大陸渡来と推測されるとのこと。琵琶法師が文献にあらわれるのは平安時代中期のことらしい。ここでは琵琶法師は、琵琶を弾いて歌謡や物語を演唱する芸能民であると同時に、寺院に付属する下級の宗教民として描かれているという。彼らはかまど祓いで、五竜王や堅牢地神を称えた「地神経」(地心経)を唱えた。

 冒頭でも触れたように、琵琶法師と平家物語との関係は切っても切れないものだ。本書はこの「平家物語」の成立過程や、どのようにして琵琶法師が平家物語を語るようになったのか、そして彼らが権力の中でどのように位置づけられてきたかなどに関して、多くのページを使い詳細な考察を行っている。それらは、この方面に興味がある方にはぜひとも熟読して欲しいような内容だと思える。

 残念なことに、現代において、琵琶法師というものは消え去ってしまった民俗のひとつだ。それでも、中国地方西部から九州一円にかけては、琵琶演奏が民間宗教儀式と結びついていたこともあり、近代まで琵琶法師が存在していたようである。1996年に亡くなった山鹿良之という方は、最後の琵琶法師と呼ばれていた。

 このような民俗的なものは、放っておけばどんどん忘れ去られてしまうだろう。我が国にこのような文化があったことを、本書のように誰でも読みやすいかたちで残した意義は大きいのではないかと思う。同じ岩波新書の「瞽女うた」(ジェラルド・グローマー)と併せて読みたい。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。
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白神社(広島市を歩く142)

2016-02-24 11:54:18 | 旅行:広島県




 写真は電車通りと平和大通りが交わった場所のすぐ傍にある「白神社」。市民からは「白神さん」と呼ばれて親しまれている神社だ。神社の名前は、かって海難事故防止のために岩礁に設置された「白い紙」に由来する。かっては広い境内をもっていたということだが、現在はごらんのとおりこじんまりした神社である。

 お参りしていると、たまたま宮司さんがいたので、幣を使って中からお祓いをしてくれた。人がいるとは知らなかったので、ちょっとびっくりしたが、今年はたぶん縁起のいい年になるだろう。


○関連過去記事
旧日銀広島支店(広島市を歩く141)
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書評:謎好き乙女と奪われた青春

2016-02-23 07:18:18 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
謎好き乙女と奪われた青春 (新潮文庫nex)
クリエーター情報なし
新潮社

・瀬川コウ


 何よりも赤坂アカさんによる表紙イラストの感じが秀逸な本書。思わずジャケ買いしたくなる作品だ。シリーズものとなっており、これはその1作目。

 本作は、藤ヶ崎高校に通う矢斗春一と早伊原樹里の物語。春一は、ミステリーを巻き起こす人物として有名だった。そこに目を付けたのが、新入生の美少女・早伊原樹里。恋愛などには全く興味がなくミステリー大好きという彼女が、いっしょに「青春」する(つまり、ミステリーを解く)仲間として目を付けたのである。この樹里、かなりの変わり者で曲者だ。春一はなし崩し的に樹里の彼氏ということにされ、いっしょに「青春」させられることになってしまう。

 実は、春一の回りでミステリーが起きるのにはある秘密があったのだ。本作は、それをストーリーの中骨にして、これにカンニング事件や春一の浮気告発メール事件などのエピソードを織り込み、青春ミステリーとしてうまく仕上げている。春一のミステリー体質に関しては、ラストにちょっとした叙述トリックが仕掛けられているのだが、これの必要性はよくわからなかった。却って作品を分かりにくくしているのではないかと思う。

 もうひとつ、春一がミステリー体質になった原因である中学時代のいじめ事件。これが原因で、春一は高校で普通の青春を送れなくなってしまったのだが、中学生のやることにしてはどうかなという感じがつきまとう。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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電気主任技術者試験の日程他

2016-02-22 17:06:06 | 資格試験受験関係

 先般ネット書店から届いた「OHM 2016.2」を読んでいると、電気関係の資格試験のスケジュールが掲載されていた。ちなみにOHMとは、昔からある電気技術者のための雑誌である。私も毎月買うとかなり財布に応えるので、興味のある記事が載っている号だけ買っている。昔は、そのあたりの本屋にも売っていたのだが、最近こちらではネットで注文しないと手に入らないのが残念。

 それはさておき、電気主任技術者試験の実施日であるが、3種が9月4日(日)、2種、1種が1次が9月3日(土)、2次が11月20日(日)だそうだ。また8月7日(日)にはエネルギー管理士試験も行われる。私も電験1種を受験して合格したのは確か40歳くらいのころだと思う(ちなみに初受験)。もう歳だなんて思わず、どんどんチャレンジしてほしい。

オーム 2016年 02 月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
オーム社
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マクドナルドでの風景

2016-02-22 12:16:52 | その他
 株主優待券の期限が迫っているので、今日の昼はマクドナルドに行った。そこでふと面白いことに気が付いた。親子連れで来ている人は別にして、一人で来ている人たちは、みんな熱心に仕事をしているようなのだ。ある人はパソコンを広げ、ある人はスマホを眺めている。手帳を一生懸命睨んでいる人も。(スマホの人はもしかして遊んでいるだけかもしれないがw)

 こうしてみると日本人ってやっぱり勤勉だなあと思う。かってはこの勤勉さが、我が国を世界有数の工業国に押し上げたのだろう。しかし時代は変わって、今はクールジャパンの時代だ。この時代には、勤勉さよりは閃きの方が重要になる。しかしやはり日本人は勤勉さを守り続けていくのだろう。こんなつまらないことを考えながらハンバーガーをぱくついていた。

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旧日銀広島支店(広島市を歩く141)

2016-02-21 13:31:16 | 旅行:広島県


 上の写真は旧日銀広島支店。広島市にいくつか残る被爆建物のひとつだ。広島市指定重要文化財になっており、建物の公開を兼ねて各種催し物が開催されている。訪れた時もいくつか開催されていたが、時間の関係もあり、「被爆70周年 広島平和記念資料館収蔵資料展 -原爆の絵・被爆資料・新収集写真-」と「日韓美術交流展2016」を見た。

 「被爆70周年 広島平和記念資料館収蔵資料展 -原爆の絵・被爆資料・新収集写真-」の会場は地下だったので降りてみると、なんと展示が金庫の中。分厚い金庫の扉をくぐって、展示物を見るのだが、なかなか不思議な感覚である。金庫の中には、原爆の熱線で変形したビンなどの資料や被爆された方が描いた絵などが展示されており、当時の惨状がうかがえる。

 「日韓美術交流展2016」の方は、入り口から入ったすぐのところに展示されているが、はっきり言って現代美術というのはよくわからない。一応ざっと見て歩いたという感じだ。


○関係過去記事
中華そば 陽気(広島市を歩く140)
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書評:・ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者

2016-02-21 08:09:32 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者 (中公新書)
クリエーター情報なし
中央公論新社

・矢野久美子


 本書は、「全体主義の起源」、「人間の条件」などの著作で知られる政治哲学者ハンナ・アーレントの生涯とその思想を描いたものだ。ハンナ・アーレントは、1906年ドイツのリンデンでユダヤ人中産階級の両親のもとに生まれた。7歳になる月に、父を梅毒で亡くしたが、裕福で自由主義的なユダヤ人親族に囲まれて育つ。14歳で、哲学を学ぶことを決意し、カントやヤスパース、キルケゴールなどを読み始めたというからすごい。日本のJCたちに、爪の垢を煎じて飲ませてやりたいと思うのは私だけだろうか。

 しかし、アーレントは勉強ばかりしているような大人しい娘ではなかった。大学への入学資格を得るための卒業資格試験の前に、教師から個人的侮辱を受けたと感じ、授業のボイコットを企てて退学になっているのだ。なかなか激しい性格だったようである。17歳で、卒業資格試験の受験を特別に認められ、大学入学資格を得、その年の秋には、マールブルク大学に進んだ。ここで彼女は、ハイデガーと恋愛関係となる。

 ヤスパースの指導により22歳で博士号取得するもナチの台頭により、パリに亡命せざるを得なくなった。しかし、ドイツの攻撃が続くなかで、ドイツ出身者としてギュルヌ収容所に収容されてしまう。彼女はナチがパリを占拠したどさくさに紛れて脱走し、アメリカに渡る。そして戦後もドイツには戻らず、アメリカ国籍を取得することになるのだ。

 彼女はアイヒマン裁判について「イェルサレムのアイヒマン」を書いたことにより、多くのユダヤ人の友人を失ってしまう。彼女の指摘が、政治的な思惑と相容れなかったからだ。彼女への攻撃は組織的なキャンペーンとなり、テキストをまったく読んでない大量の人々から追い詰められることになった。

 こういうことは、今の日本でもよく見られることだ。アーレントは、「事実を語る」ことの重要性を強調する。しかし、現代社会では、イデオロギーや結論ありきのロジックがはびこっていることがまま見られる。よく分からないままに、他人の尻馬に乗って過激な行動をする連中はいつの世にもどこの世界にもいるということだろう。このエピソードは、自分の頭で考えることの大切さを如実に示しているといえよう。

 我が国においては広く知られているとは言い難いハンナ・アーレント。しかしまさにその人生は波瀾万丈。ユダヤ人としてのプライドを持ちながら、全体主義との対決を続けた生涯だった。私のような門外漢にとっては、必ずしもするすると頭に入ってくるような内容とは言い難いが、この方面の勉強をしようとする人にはまず読むべき一冊だろうと思う。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。


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養殖セミナー受講

2016-02-20 20:37:48 | セミナー、講演会他


 昨日は、クリスタルプラザ内のひろしま国際センター交流ホールで行われた「養殖セミナー」に出席してきた。完全に畑違いなのであるが、多様な視点を身に着けるために、時間の許す限りいろいろなセミナーや講演会に顔を出すことにしている。

 初めての場所だったので、行くのにちょっと苦労した。最初はエスカレータで上ったのだが、5Fまでしか通じていない。会場は6Fなので、そこからエレベーターに乗り換えたのだが、これなら最初からエレベーターで昇ればよかった。上がってみると事務所しかない。よく見ると、奥のほうに会議室らしきものがあり、そこが会場だった。他の人が同じようなことを言っていたのを聞いたので、わかりにくかったのは自分だけではないということが分かって、ちょっと安心(なんのこっちゃ(笑))。

 ところで講演の方だが、主催がJICA中国国際センターということで、海外協力に視点を置いた養殖が、第1部の講演のテーマだった。行われたのは以下の講演。

①クロマグロ完全養殖技術を応用したマグロ類の資源管理技術開発とパナマでのキハダマグロ完全養殖実現に向けた基礎研究について
 (近畿大学水産研究所教授 澤田好史氏

②開発途上国の養殖事情 (JICA国際協力専門員 杉山俊士氏)

③パプアニューギニアの養殖 (JICA青年海外協力隊 鹿野陽太氏)


 また、これに続いて第2部として神石高原町にある油木高校の皆さんによる「ナマズの養殖」に関するプレゼンがあった。7年前からまちづくりのために、ナマズの養殖の研究を始めたそうだ。ナマズ料理は、イベントでの人気メニューだったが、来年度はマツダ球場でも食べられるようである。行く機会があれば、ぜひ食べてみたいものだ。

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