先般より、当ブログに寄せられた私の記事に対して、bobbyさんより色々とコメントをいただいたり、反論記事をbobbyさんのブログに掲載していただいたりしている。先般も私の
「解雇自由に関する私の意見(まとめ)」をはじめとする私の記事に対し、
「風竜胆さんの意見に対する見解」という記事を載せられていた。
bobbyさんの記事には、私の見解に関して様々な反論が述べられていたが、私の見解の要旨は、上記「解雇自由に関する私の意見(まとめ)」の通りであり、一番重要な部分なので、これに対する見解から述べておこう。
bobbyさんは、私の記事に対して、
「私の目からは理論に飛躍があり、その飛躍を埋めているのは、企業と労働者を並べて検討しているのではなく、労働者の利益により近い価値観であると感じる事。その背後にあるのは、労働環境や労働市場に対する知識や経験が(国内のものに)限られていて見識が狭く、「日本企業の古き良き伝統」みたいなものを過大評価しているのではないか」と述べられている。
私の見解は、理論(Theory)と呼ぶほどのものでもなんでもなく、単純な論理(Logic)からの帰結なのだが、それはさておき、もう一度私の記事を読み直してみていただきたい。どこにも、特定の価値観などは入っておらず、ごく単純に経済学の知識から派生するような論理を組み立てているにすぎない。飛躍があるというのなら、どこに飛躍があるのかを具体的に示すべきだろう。これが、飛躍があると思えるのは、おそらく、bobbyさんの主義や信条から、思考にバイアスがかかっているためだろう。bobbyさんは、私に対して、
「知識や経験が(国内のものに)限られていて見識が狭く」と書かれているが、これは裏を返せば、
「自分は知識や経験があり見識は広い」と自認しているということであり、そのことがかえって思考のバイアスを形成しているのではないだうか。
ここで、私の立場を言わせていただけば、別に「労働問題」に興味があるわけではない。趣味で、「経済学」関係のことを勉強しているのだが、影響力のある人が、論理的に納得のできないことを言っているのを時折目にするので、それに対して「おかしいでしょう?」と言っているだけなのである。残念ながら、ほとんど反響がないので、今回のように議論できるのは、大変ありがたい。なお、俗に「政治経済」というように、「経済」と「政治」は密接に結びついているのだが、残念ながら「政治」の方にはほとんど興味がわかないので、あまりそちら側に入りすぎるような議論については、ご遠慮申しあげる場合もある。
さて、上に述べたことが、私の主張のキモであり、後は、どちらかと言えば派生的なことなので、それほど議論に熱意はわかないのだが、一応見解を述べておこう。
bobbyさんは、私の、
「需要超過の場合はうまくいくでしょうが、需要のないところに市場だけあっても、それは、既卒者と新卒者が同じパイを奪いあうだけなので、需要と供給の関係により、より悪い条件での再就職となることでしょう」という見解に対して、
「柔軟な労働市場の構築は、その社会(企業と労働者とその家庭)に選択の幅と柔軟性を与える事ができます。ご指摘のように、不況時には労働市場の利用度は低下しますが、好況になれば増します。」と書かれている。これは、反論なのかどうかは、よく分からない。私もこの部分について特に述べることはないし、案外私とbobbyさんの見解は近いのではないかとも思われる。しかし、一つ指摘しておきたいのは、解雇の自由と労働市場の流動性を高めることは、関連はあるものの別の概念であるということだ。現在の仕事が意に染まないものは、新たな職を探せばよい。企業が新卒採用偏重を改めるべきだというのは、bobbyさんと意見が一致するところだと思う。
さらに、モラルハザードについて
「どのような情報の非対称性により、株主の意に染まないどのような事を行うのでしょうか。意味が良くわかりませんので、具体例をお願いします」と書かれている。情報の非対称性によるモラルハザードについては、
「非対称情報の経済学」(藪下史郎:光文社)などに割と詳しく書かれているので、そちらを参照していただきたい。
最後に、bobbyさんは、
「ロボットに追い出された数千人のラインワーカーの行き先はどうするつもりですか。行政が先手を打ち、その人達の労働需要を吸収する別の産業(介護その他)を用意する必要があると思われませんか?」と書かれているが、これはおそらく私とbobbyさんが念頭に置いている「労働者」の区分に差があるのだろう。bobbyさんの言われる
「数千人のラインワーカー」は、現状でも非正規雇用者の割合が多いと考えられ、これらの方々にきちんとした職を用意できるようにすることも行政の責任であるということには別に異存はない。
なお、bobbyさんは、自分のブログのトラックバック機能を殺しておられるようだ。こちらからも、時折トラックバックを差し上げたいと考えるので、ぜひ活かして欲しいものである。
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