文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:文化が織りなす世界の装い

2019-02-28 19:20:36 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
文化が織りなす世界の装い (シリーズ比較文化学への誘い)
クリエーター情報なし
英明企画編集

・山田 孝子, 小磯 千尋ほか13名

 本書の内容を一言で表せば、「装い」の文化人類学といったところか。3つの座談会と7つの論考により世界の装い文化が紹介される。本書中になかなか興味深い疑問が示されている。紹介すると共に私の考えを述べよう。

1.人はなぜ装うのか(pp27~50の論考)
 これにはいろいろな目的があると思うのでそれを列挙してみたい。

①実用のため
 例えば、寒冷地などでは体温保持のために服を着ないと凍死してしまうだろう。紫外線除けのために女性が長袖などを着ているのはよく見る風景だ。また、作業時にはそれに適した服装にしないと事故につながる。

②顕示のため
 要するに自分は偉いんだとか、金持ちなんだということを誇示するためだ。

③異性を引き付けるため
 君は、デートのときに、彼女がミニスカートを穿いているのともんぺを穿いているのと(いるのか?)、どちらがうれしいかな(笑)。異性が存在しないとしたら、男女ともおしゃれなんてしないんじゃないかな。

④自分たちのアイデンティティを示すため
 制服などはこれに含まれるだろう。民族衣装などもこれに含まれると思う。

 本書には①に関する記述が多い。「裸のサル」と言われる人間が、服を着ることによって環境に適応し、その過程で服に適した素材を発見してきたことは確かだろう。また、④の視点からの記述もあるが、その他の観点も忘れてはならないと思う。

2.何をもって「装い」とするのか
世界の「装い」文化について考えるうえで押さえておくべきことのひとつに、「何をしたら装っていることになるのか」というものがあります。世界の民族誌をみれば、腰巻だけ、あるいはペニス・ケースだけを付けて暮らしている民族もいますね。それもまぎれもなく「装い」であるわけです。(p70)


 これは、一般的な基準はなく、その文化や社会システムによるとしか言えないだろう。周りがみんなそのように装っていれば特に何とも思わないだろうが、もし日本でやったら、変態として即逮捕されると思う。

 興味深かったのは、インド女性の民族衣装である「サーリー」。地域や出身ジャーティ(インドのカーストを構成する要素のひとつ)により色々な着方があることを初めて知った(pp156-157)

 アフリカやインド、オセアニアなどの伝統的な衣装の話が多いのに最後の章が「加賀友禅」の話になっているのは、どうも違和感があると思ったら、著者に金沢星稜大学の教員が多いからそうなったのだろう。

☆☆☆☆

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放送大学から学位授与式の案内が来た

2019-02-27 20:23:00 | 放送大学関係
 放送大学広島学習センターから学位授与式(卒業式)の案内が来た。前回卒業時に初めて出席したのだが、今回も予定は空いているので出席してみようか。放送大学も、5回目の卒業ともなれば、それほど新鮮味もないのだが。
コメント (2)
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書評:東大教授の「忠臣蔵」講義

2019-02-27 20:19:22 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
東大教授の「忠臣蔵」講義 (角川新書)
クリエーター情報なし
KADOKAWA

・山本博文

 本書は、「忠臣蔵」で有名な浅野内匠頭が江戸城松の廊下で吉良上野介を相手に刃傷事件を起こしてから、赤穂浪士が切腹するまでが描かれている。この話は多くの者が知っていると思うが、歴史家の間では「赤穂事件」と呼ばれ、「忠臣蔵」とは呼ばれていないと言うことだ。

 善悪の基準は、その時々の時代背景、社会システムにより異なるものだが、今の基準では、浅野内匠頭というバカ殿と、47人のテロリストであり、決して「忠臣」なんてものではないと思うのだが。それにしても浅野のバカ殿ぶりには呆れてしまう。いくらバカでも、殿中で刃傷事件を起こせば多くの部下を路頭に迷わせることは分かっていたはずだ。この原因ははっきりと分かっていないとはいうものの、内匠頭がバカだということは間違いなく言えるだろう。

 これに巻き込まれた吉良家こそはた迷惑だろう。何しろ、当主は殺されただけでなく、その息子(上杉家に養子に出した息子の次男を養子にしているので、血縁的には孫になる)の左兵衛は、重傷を負った挙句に、討ち入りが防げなかったのが不届きだとして、信州高島藩諏訪家に御預け(流罪)となったのだから。殺人事件の被害者が罰を受けるというのはどう考えてもおかしい。そもそも内匠頭を切腹させたのは将軍徳川綱吉であり、別に吉良上野介が内匠頭を害したというわけではないので仇討というのもおかしなことだ。

 年末になると恒例のように放映される「忠臣蔵」だが、本書を読んで思ったのは、今伝わっている話はかなり盛られており、どこまでが真実かよく分からないということである。

<赤穂事件については、当時からいろいろな書物が書かれていて、話がどんどんつけ加わっていくものですから、真偽の判定もなかなか大変なところもあります。>


 例えば、内匠頭の辞世の和歌「風さそう 花よりもなを われはまた 春の名残を いかにとかせむ」

 これは、当時の検使で内匠頭に同情的だった多門伝八郎の覚書にしか見られず、多門の創作である可能性が高いという。この他にもいろいろと創作部分があるようだ。(pp34~39)

 また大石内蔵助であるが、映画やドラマなどでは、京都に住んでいる時代に、仇討の意思を隠すために遊郭などでどんちゃん騒ぎをしている場面がよく出てくるが、実際には、そんな証拠はないようだ。ただ、京都にも妾はいたらしい。この他病死したはずの親が、息子の決意が鈍ったと思って自害したことになっていたり(p157)と枚挙に暇がない。

 ところで、赤穂浪士の一人である堀部安兵衛だが安兵衛の読み方はよく言われる(やすべえ)ではなく(やすびょうえ)が正しいということだ。この辺りはちょっとしたトリビアになるだろう。(p63)

 この事件の顛末だが、大石内蔵助の3男は、広島の浅野本藩に父と同じ1200石で召し抱えられ、元々3000石の旗本だった内匠頭の弟大学は500石(これとは別に浅野本藩から300石をもらっていたらしいが)の旗本に復帰したという。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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書評:鉄子の旅1~3

2019-02-24 10:00:35 | 書評:その他
鉄子の旅 3代目 (3) (サンデーGXコミックス)
クリエーター情報なし
小学館

・霧丘晶

1~3巻までのレビューとなります。

 横見さんのお守係を託された3代目。この3代目になって2年半、初代鉄子の旅で第1旅が行われたのが2001年7月29日というから漫画家を変えて、もう20年近く続いていることになる。この間、ブームを巻き起こした初代、絵は下手だがどこか味のある2代目、そしてこの3代目へお守係が引き継がれたことになる。ちなみに、横見さん本人は、2代目までの漫画に出てくる自分は大分脚色されていると言っていたようだが、やっぱり漫画通りの人だったようだ(笑)。

 記念すべき第一度は、恒例の久留里線全駅下車の旅。ちなみに初代も2代目もまず最初にこの洗礼を受けている。これは、ダイヤグラムを作成して、上り下りの列車にうまく乗ることにより、効率的に全駅を制覇しようというものだが、結構ハードである。

 この3代目が始まったときのサンデーGXの編集長が、初代鉄子の旅担当編集だったイシカワさん。どんな感じだったのか初代の第1巻をひっくり返して、昔はかなり初々しかったことを実感。横見さんも若い(笑)。あれ、でもこのころは「スピリッツ増刊IKKI」や「月刊IKKI」に連載していたはずだと思ったら、どうも3代目から、月刊サンデーGXに連載されているようだ。

 記念すべき100旅目も終わり、この3代目による鉄子の旅も3巻完結となるはずだったが、現編集長の鶴の一声で、もう1巻出ることになったらしい。この時初めてイシカワさんが編集長でなくなったことを知り、いつも鉄子の旅について行っているので、もしかして仕事をしないので格下げになったのかと心配したが、ネットで調べてみると、「第二コミック局 サンデー企画室 編集長」になって、サンデーGXの編集長は2017年の時点でノリマツさんという人になっていたようだ。でもデータを見ると、人事異動の後もイシカワさんは旅に参加している。もしかして新部署って暇なのか?

 なんやかんや言いながらも(霧丘さん、横見さん、イシカワさん、カミムラさん)+ゲストによる珍道中はとっても楽しい。鉄の人には「鉄子の旅」はもはやバイブルだろう。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。


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書評:あなたと子どものお金が増える大金持ちの知恵袋30

2019-02-22 10:09:26 | 書評:ビジネス
あなたと子どものお金が増える大金持ちの知恵袋30 (単行本)
クリエーター情報なし
集英社

・菅井敏之

 本書の内容を一言で言えば、子供へのお金教育ということだろう。確かにお金はあればいいというものではないが、無いといろいろ困るのは事実だ。本来は子供のころからきちんとした教育が必要だと思うが、学校ではあまり教えられないものの一つだ。だから家庭できちんと教育するしかない。

 著者は、子供に与えるお小遣いの定額制は大問題だという(p37)。定額制というのは、何もしなくともお金が入るということだ。だから著者の家では、「働きに応じて」お小遣いをあげていたらしい。しかし、高校生になってからは、部活が忙しくなったので、「定額制+報酬制」に変えたということだ(p89)。子供たちは、何もしていないのにお金がもらえることに最初は少しむずむずしていたということだが、ちょっと疑問がわく。別に部活なんかしなくともいいと思うのだが。自分の好きなこととお金とどちらがいいかを選択させるというのも教育ではないだろうか。

 面白いと思ったのは、どうしても欲しいものが出たような場合には、「家族の経営会議でプレゼンテーションさせる」(p134)というものだ。子供のうちからプレゼン力を鍛えるということは、塾などに行くよりはよほどよい教育になると思う。しかし、親の方にもそのプレゼンを判断する能力が求められるので、なかなか大変だろうと思う。

 もちろん子供に教育をするのなら、親の方にもしっかり芯があることが必要だろう。お父さんが、いつも酔っぱらって、休みになればパチンコ三昧では、教育もなにもあったものではない。自分に自信があり、子供にお金教育をしたい人には参考になることも多いものと思う。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。



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放送大学から成績通知と卒業認定書がきた

2019-02-21 19:04:17 | 放送大学関係
 放送大学から2通封筒が届いていたので何だろうと思って開いてみた。1通は、成績通知で、もう1通は卒業認定書だった。後者には、学位授与式への出席届の葉書が入っていたが、東京のNHKホールで行われるので欠席。また学習センターで行われるやつの案内があるだろうからそちらへは都合が合えば出てみようかな。
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書評:トランクの中に行った双子

2019-02-20 12:10:27 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
トランクの中に行った双子 (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社

・ショーニン・マグワイア、(訳)原島文世

 メインの登場人物はジャクリーン(ジャック)とジリアン(ジル)双子の姉妹。訳者あとがきを読むと、著者の前作「不思議の国の少女たち」の前日譚とも言える作品のようだ。ジャックとジルは、両親の希望通りに育つ。すなわち姉のジャックは、母親の理想の娘として可愛らしく、そして妹のジルは父の望み通り、男の子のように育った。しかしそこには二人の意思はない。二人とも両親のお人形なのだ。

 12歳のある日二人は祖母の残していったトランクを開ける。なんとそこには階段があり、「荒野」という異世界に通じていたのだ。トランクを開けると、そこに階段があるという理由はよく分からないが、なろう系でおなじみの、一種の異世界転移ものに分類されるのだろうか?

 なろう系のものでは、たいてい神様が出てきて、主人公にチート能力を与えるが、この作品では、そんなことはない。ただ姉妹は階段を降りて、別の世界に踏み込むのである。これはおそらく日本には八百万の神々が存在しているので、中にはチートな能力をくれる神もいるかもしれないということだろう。この辺りが、なんだかキリスト教のような一神教の世界との違いが表れているような気がして、極めて興味深い。

 興味深いのは、異世界において、ジャックとジルがこれまで自分が余儀なくされてきた役割とは真反対のものを選んだのだろう。ジャックはマッドサイエンティストの弟子、ジルはその世界の領主であるバンパイアの娘として。そして意外な結末。

 それまで本当の自分を抑圧されていたことにより、二人はそれまでとはまったく違う自分になることを選択したのだろう。それこそが本来の自分。この物語は「抑圧からの解放」が一つのテーマになっているように思える。

 この作品にはまだまだ続巻があるようだ。異世界ファンタジーものが好きな人に勧めたい。

☆☆☆
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放送大学の成績発表

2019-02-19 11:44:13 | 放送大学関係
 今日からシステムWAKABAで先般受験した放送大学の単位認定試験の成績を確認できる。合格自体は、先般再入学申請を行った際に、巷で評判の「裏技」を使って分かっていたが、これで正式に放送大学5回目の卒業が確定したということだ。

 成績は、受験した「生理心理学」、「社会心理学」共Bが付いていた。これまで、心理と教育コースではすべてA以上だったので、多少思うところはあるが、一応卒業となったので、まあいいだろう。

 あと卒業には関係ないのだが、面接授業の「ミクロ経済学の思考法 」と「ニンジンで学ぶ量子の世界 」はもちろん合格。しかし来学期から面接授業も評点を付けるということだ。どうやって点数をつけるのだろう。

 次は、情報コースだ。毎学期4単位づつ取れば2年で卒業となる。ここまでくると「生活と福祉」も卒業してコンプリートを目指したいが、あまり興味がないんだよなあ・・・。
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書評:雑品屋セイゴオ

2019-02-18 20:29:29 | 書評:その他
雑品屋セイゴオ
クリエーター情報なし
春秋社

・松岡正剛

 博識で知られる松岡正剛氏が、身の回りにあるものをテーマにして書いたエッセイ集。目次の前にある「触れ書」によれば昭和20年代後半から昭和50年代半ばまでのいささか懐かしい雑品のみを取り扱っていると書かれているが、今でも目にするものも結構ある。ただ、エッセイの中に、本の話題や、いかにも松岡氏らしい蘊蓄が語られるのは見事だろう。

 特に笑えたのは、「便器」、「キンカン」、「万年筆」とタイトルがつけられたエッセイである。ちなみに、どれもいわゆる下ネタだ(笑)。

 「便器」は、正剛氏が高1の時に京都から横浜の洋館に越してきて初めて西洋便器と出会った時のエピソードだ。勘のいい人は彼がどうしたか見当がつくと思うが、今では半ば定番ギャグになっているようなあれである。なんと正剛氏便器によじ登って用を足したらしい。正剛氏の妹は、泣きながら立ったまま済ましたとのことだ(pp135~137)。

 「キンカン」は、あれが男子の大事なところに付くとすごいことになるという話(pp190~191)。「万年筆」では小2のころ、友人と万年筆のキャップを男子の持ち物に嵌めて抜いて遊んでいたことが書かれている(p289)。

 本のレビューを書くとき、真正面から取り組むスタイルと、からめ手から入るやり方があると思う。松岡氏の場合は後者の色合いが強いように思えるのだが、このエッセイ集を一読してそのテクニックを覚えれば便利だろう。もっとも色々なことで蘊蓄を語れるくらいの勉強は必要なのであるが。

 ところで、この本にもやっぱり、「正しい理科知識普及委員会(自称)」としては見過ごせないところがある(笑)。「電気花火」というエッセイに次のような個所があるのだ。

 
<レイ・ブラッドベリの「発電所」は、雨宿りのために発電所で眠ってしまった女が、あっというまにスパークや高圧電流と化して地球上のあらゆる電気回路に同時に出現するという話だった。>(p300)


 既に何度も指摘している通り、「高圧電流」なんてものはないし、電気のことを知っているものならまずこの言葉は使わない。そもそも高圧であろうが低圧であろうが、流れる電流が大きければ危ない。例えばドアノブを触った際にビリっとくる静電気だって、数千ボルトの十分な高電圧である。しかし電流が小さいし一瞬しか流れないので、ビリっと来るだけで済む。しかし低圧に区分される100Vの家庭用電源での感電は、電流が系統側から供給されるので、死の危険がある。

 この辺りでも、正剛氏が文系の人間だということが分かる。シーザー(カエサル)ではないが、次のようなセリフが頭に浮かんだ。

「セイゴオお前もか!」

☆☆☆
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確定申告をしてきた

2019-02-18 11:42:25 | その他
 今日から確定申告受付日なので、税務署に行って申告書を提出してきた。確定申告といっても還付申告で、還付申告の場合はどうも1月から受け付けているようだが、一応期日になったので行ってきた。

 今は昔と違い、パソコンがあれば簡単に国税庁のホームページで簡単に申告書がつくれるので助かる。昔だったら、自分でやるか、税務相談会のようなものを利用しないといけなかったのだが。

 還付までに1か月半くらいかかるとのこと。

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