謎多き人類の祖先「ホモ・ナレディ」の手足の特徴を分析した結果が、10月6日付の科学誌「Nature Communications」に掲載されました。
南アフリカのライジング・スター洞窟で発見された化石人骨を基に、2つの研究チームが運動の様子を再現。いずれもナショナル ジオグラフィック協会の助成を受け、一方のチームは足の骨107個を、他方はほぼ完全な右手の骨26個をそれぞれ詳しく調べました。
その結果、ホモ・ナレディの足は多くの点で驚くほど現生人類に似ていることが明らかになったのです。足首の関節、他の4本と平行になった親指、幅の広いかかとは、2本の脚で直立して効率よく歩く生活に十分に適応した生物のものだったのです。一方、土踏まずがそれほど発達しておらず、足指の骨が曲がっている点は類人猿に近いことがわかりました。
曲がっている手の指は、ホモ・ナレディが軽々と木に登れたことを示します。同時に、長く力強い親指と衝撃を吸収できる手首で、道具を使いこなすこともできたとみられています。
このように対照的な特徴が混ざっている状態を、現生人類を含むヒト属(ホモ属)において科学者がはっきり目にするのは初めてのことです。特に、ホモ・ナレディの樹上生活を強く示唆する点は異例です。
ホモ・ナレディの足に関する論文の著者、米ニューヨーク市立大学リーマン校のウィリアム・ハーコート・スミス氏は、「彼らは、ヒト属の一員としては独特な運動の形態を有していました」と語ります。「直立二足歩行」「木登り」「手で道具を扱う」という3種目で競う先史時代のトライアスロンがあったなら、彼らはきっと活躍できるだろうと。
人類は進化の過程で、いつ木から下り、大地を歩き始めたのだろうか。その判断はまだ難しい。アウストラロピテクス属として知られるルーシーなど、ごく初期の人類の祖先たちは、少なくとも400万年前には直立二足歩行をしていました。だが、樹上生活もまだ続けており、同時に石器も使っていた可能性があります。
ホモ・ナレディには極めて原始的な特徴と、極めて現代的な特徴が奇妙に併存していたのです。とはいえ、ヒト属の系統から見つかっている樹上生活の証拠は少ないのです。科学者たちは、「器用な人」を意味するホモ・ハビリスは約200万年前の時点でも木登りの能力を保っていた可能性があると推測していますが、根拠はわずかな化石の断片しかありません。そんな中、ホモ・ナレディの手が物語るのは、彼らが驚くほど現代的な足で二足歩行をしながら、類人猿のように巧みに木に登る能力も保っていたということです。
「人類の進化の大部分で、我々の祖先たちは歩行と樹上生活の能力を並行して活用しており、それが変化にうまく対応できた一因です」と語るのは、米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のビル・ジャンガーズ氏です。「ホモ・ナレディも例外ではありません」
ライジング・スター洞窟の人骨の年代測定はまだ行われていないため、ホモ・ナレディが人類進化の系統樹のどこに入るかは明らかではありません。形態だけに基づくなら、初期のヒト属に近いように見えます。ホモ・ナレディの手に関する論文の著者、英ケント大学のトレーシー・キビル氏は、「それが正しければホモ・ナレディの年代はおよそ200~250万年前となり、道具の使用を容易にした手の特徴はこれまで科学者たちが考えていたよりも早く現れたことを意味します」と話しています。
一方、ホモ・ナレディが10万年前のような比較的新しい年代と判明すれば、現生人類と同時代に生きていたヒト科の種が、曲がった指などの原始的な特徴を保っていた(あるいは、独自に発達させていた)ことになります。キベル氏は「どちらのシナリオも非常に興味深い」と話しています。
南アフリカのライジング・スター洞窟で発見された化石人骨を基に、2つの研究チームが運動の様子を再現。いずれもナショナル ジオグラフィック協会の助成を受け、一方のチームは足の骨107個を、他方はほぼ完全な右手の骨26個をそれぞれ詳しく調べました。
その結果、ホモ・ナレディの足は多くの点で驚くほど現生人類に似ていることが明らかになったのです。足首の関節、他の4本と平行になった親指、幅の広いかかとは、2本の脚で直立して効率よく歩く生活に十分に適応した生物のものだったのです。一方、土踏まずがそれほど発達しておらず、足指の骨が曲がっている点は類人猿に近いことがわかりました。
曲がっている手の指は、ホモ・ナレディが軽々と木に登れたことを示します。同時に、長く力強い親指と衝撃を吸収できる手首で、道具を使いこなすこともできたとみられています。
このように対照的な特徴が混ざっている状態を、現生人類を含むヒト属(ホモ属)において科学者がはっきり目にするのは初めてのことです。特に、ホモ・ナレディの樹上生活を強く示唆する点は異例です。
ホモ・ナレディの足に関する論文の著者、米ニューヨーク市立大学リーマン校のウィリアム・ハーコート・スミス氏は、「彼らは、ヒト属の一員としては独特な運動の形態を有していました」と語ります。「直立二足歩行」「木登り」「手で道具を扱う」という3種目で競う先史時代のトライアスロンがあったなら、彼らはきっと活躍できるだろうと。
人類は進化の過程で、いつ木から下り、大地を歩き始めたのだろうか。その判断はまだ難しい。アウストラロピテクス属として知られるルーシーなど、ごく初期の人類の祖先たちは、少なくとも400万年前には直立二足歩行をしていました。だが、樹上生活もまだ続けており、同時に石器も使っていた可能性があります。
ホモ・ナレディには極めて原始的な特徴と、極めて現代的な特徴が奇妙に併存していたのです。とはいえ、ヒト属の系統から見つかっている樹上生活の証拠は少ないのです。科学者たちは、「器用な人」を意味するホモ・ハビリスは約200万年前の時点でも木登りの能力を保っていた可能性があると推測していますが、根拠はわずかな化石の断片しかありません。そんな中、ホモ・ナレディの手が物語るのは、彼らが驚くほど現代的な足で二足歩行をしながら、類人猿のように巧みに木に登る能力も保っていたということです。
「人類の進化の大部分で、我々の祖先たちは歩行と樹上生活の能力を並行して活用しており、それが変化にうまく対応できた一因です」と語るのは、米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のビル・ジャンガーズ氏です。「ホモ・ナレディも例外ではありません」
ライジング・スター洞窟の人骨の年代測定はまだ行われていないため、ホモ・ナレディが人類進化の系統樹のどこに入るかは明らかではありません。形態だけに基づくなら、初期のヒト属に近いように見えます。ホモ・ナレディの手に関する論文の著者、英ケント大学のトレーシー・キビル氏は、「それが正しければホモ・ナレディの年代はおよそ200~250万年前となり、道具の使用を容易にした手の特徴はこれまで科学者たちが考えていたよりも早く現れたことを意味します」と話しています。
一方、ホモ・ナレディが10万年前のような比較的新しい年代と判明すれば、現生人類と同時代に生きていたヒト科の種が、曲がった指などの原始的な特徴を保っていた(あるいは、独自に発達させていた)ことになります。キベル氏は「どちらのシナリオも非常に興味深い」と話しています。