すでに大きく売り込まれた中国市場が底を付けるまで、最低でもあと15%下落する可能性があるという予想が、トップレベルのストラテジストやマネーマネジャーから出ています。28日に3232.35の終値を付けた中国本土株のベンチマークである上海総合指数は、2700近辺で底を付けるまでさらに下落する可能性があるとみられています。逆張り発想の投資家が、絶好の買い場だと考えるのも仕方がないが、過去の株価収益率(PER)から見ると、中国市場の下げ止まりにはもう少し時間がかかりそうです。
上海総合指数のPER水準は現在15倍で6月のピークの約22倍から大きく下がりました。しかし、昨年の大幅な上昇相場が始まる前の10倍と比較するとまだ高いのです。PERで10倍の水準まで戻るには、2700程度まで指数が下落する必要があります。
CLSAの中国・香港戦略責任者のフランシス・チュン氏は、信用買いのポジション解消や現金化目的の売りが、上海総合指数を2700まで押し下げるとみています。これは、昨年12月の水準です。同氏は、その水準で投資するべきだと推奨しています。その水準であれば、低金利とファンドマネジャーのバーゲン・ハンティング(安値拾い)によって下げ止まると見ているからです。
さえない利益成長を考慮すると、中国株は買われ過ぎだと言えます。また、上海総合指数の平均PERが、非常にウエートが高い優良株によって押し下げられているといった側面を見ることも重要です。中国政府系の中国工商銀行(601398.中国)、中国農業銀行(601288.中国)、そして中国銀行(601988.中国)が指数の11%程度を占めていますが、各社のPERは4倍から5倍です。これらの銘柄を除外して、上海もしくは深圳に上場されている人民元建てのA株だけで算出してみるとPERは30倍かそれ以上になります。市場全体がまだ過大評価されていることを示唆しているのです。
「2700底値説」に懐疑的な専門家もいます。サンフォード・C・バーンスタインのストラテジスト、マイケル・パーカー氏は「1週間前には3500が底だと言っていたアナリストがかなりいたはずだ」と皮肉っています。同氏は、中国株が底を打つためには、中国政府による一段と効果的な政策の実施が必要だと指摘します。その中で、同氏が最も期待するのは、対米ドルで人民元を6.4元水準で安定させること。もし中国政府が人民元のさらなる下落を容認すれば、景気の悪化を認めるか、政府首脳の無能ぶりをさらけだすことになるからです。どちらも投資家にとっては魅力に乏しい。一方で同氏は、何らかの厳しい通貨政策が出てくることをリスクと見ています。
中国の不安定な株式の評価指標としてPERに頼ることに懸念を表している専門家もいます。スタンダード・ライフ・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、マグダレン・ミラー氏は、中国株のより適正な株価水準をとらえるために、投資家は株価純資産倍率(PBR)を見た方がいいと話します。
同氏は、PBRはPERより市場変動の影響を受けにくいと考えているからです。現在、市場のPBRは高値の2.7倍から下落して1.7倍近辺です。同氏によると、上海総合指数の底値はPBR1.4倍で、ちょうど昨年の11月に指数が2500を超えて上昇した時の水準。これが下値支持線になるとしています。
しかし、たとえバリェーションが魅力的な水準に近付いてきているとしても問題は残っています。中国政府は金利の引き下げや銀行資本規制の緩和といった景気刺激策を打ち出していますが、利益成長の見通しが弱いのです。また、その利益予想にはかなりばらつきがあります。CLSAのチュン氏が6~7%の1株当たり利益(EPS)の成長を予想しているのに対し、バーンスタインのパーカー氏は16~17%と強気の成長を見込んでいます。ブラックロックのアジア株責任者のアンドリュー・スワン氏によると、景気敏感銘柄を中心に業績予想は全て下方修正されました。指数構成銘柄トップの中国石油天然気(ペトロチャイナ、PTR)のEPSは50%の急減が予想されています。また、中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行の利益は前年比横ばいか、若干の減少が見込まれているのです。
中国株投資には一般的な教訓が生きてくると言えそうです。それは、投資対象として、ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)がしっかりした企業、もしくはスワン氏が言うような全天候型の企業を選ぶこと。上海市場の銘柄より、香港に上場するH株の方が質も高く、割安な銘柄が多いからです。中でも、中国移動(チャイナ・モバイル、941.香港)、中国中鉄(チャイナ・レールウェイ・グループ、390.香港)、嘉里建設(ケリー・プロパティーズ、683.香港)が魅力的だと言っています。(ソースWSJ)
上海総合指数のPER水準は現在15倍で6月のピークの約22倍から大きく下がりました。しかし、昨年の大幅な上昇相場が始まる前の10倍と比較するとまだ高いのです。PERで10倍の水準まで戻るには、2700程度まで指数が下落する必要があります。
CLSAの中国・香港戦略責任者のフランシス・チュン氏は、信用買いのポジション解消や現金化目的の売りが、上海総合指数を2700まで押し下げるとみています。これは、昨年12月の水準です。同氏は、その水準で投資するべきだと推奨しています。その水準であれば、低金利とファンドマネジャーのバーゲン・ハンティング(安値拾い)によって下げ止まると見ているからです。
さえない利益成長を考慮すると、中国株は買われ過ぎだと言えます。また、上海総合指数の平均PERが、非常にウエートが高い優良株によって押し下げられているといった側面を見ることも重要です。中国政府系の中国工商銀行(601398.中国)、中国農業銀行(601288.中国)、そして中国銀行(601988.中国)が指数の11%程度を占めていますが、各社のPERは4倍から5倍です。これらの銘柄を除外して、上海もしくは深圳に上場されている人民元建てのA株だけで算出してみるとPERは30倍かそれ以上になります。市場全体がまだ過大評価されていることを示唆しているのです。
「2700底値説」に懐疑的な専門家もいます。サンフォード・C・バーンスタインのストラテジスト、マイケル・パーカー氏は「1週間前には3500が底だと言っていたアナリストがかなりいたはずだ」と皮肉っています。同氏は、中国株が底を打つためには、中国政府による一段と効果的な政策の実施が必要だと指摘します。その中で、同氏が最も期待するのは、対米ドルで人民元を6.4元水準で安定させること。もし中国政府が人民元のさらなる下落を容認すれば、景気の悪化を認めるか、政府首脳の無能ぶりをさらけだすことになるからです。どちらも投資家にとっては魅力に乏しい。一方で同氏は、何らかの厳しい通貨政策が出てくることをリスクと見ています。
中国の不安定な株式の評価指標としてPERに頼ることに懸念を表している専門家もいます。スタンダード・ライフ・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、マグダレン・ミラー氏は、中国株のより適正な株価水準をとらえるために、投資家は株価純資産倍率(PBR)を見た方がいいと話します。
同氏は、PBRはPERより市場変動の影響を受けにくいと考えているからです。現在、市場のPBRは高値の2.7倍から下落して1.7倍近辺です。同氏によると、上海総合指数の底値はPBR1.4倍で、ちょうど昨年の11月に指数が2500を超えて上昇した時の水準。これが下値支持線になるとしています。
しかし、たとえバリェーションが魅力的な水準に近付いてきているとしても問題は残っています。中国政府は金利の引き下げや銀行資本規制の緩和といった景気刺激策を打ち出していますが、利益成長の見通しが弱いのです。また、その利益予想にはかなりばらつきがあります。CLSAのチュン氏が6~7%の1株当たり利益(EPS)の成長を予想しているのに対し、バーンスタインのパーカー氏は16~17%と強気の成長を見込んでいます。ブラックロックのアジア株責任者のアンドリュー・スワン氏によると、景気敏感銘柄を中心に業績予想は全て下方修正されました。指数構成銘柄トップの中国石油天然気(ペトロチャイナ、PTR)のEPSは50%の急減が予想されています。また、中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行の利益は前年比横ばいか、若干の減少が見込まれているのです。
中国株投資には一般的な教訓が生きてくると言えそうです。それは、投資対象として、ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)がしっかりした企業、もしくはスワン氏が言うような全天候型の企業を選ぶこと。上海市場の銘柄より、香港に上場するH株の方が質も高く、割安な銘柄が多いからです。中でも、中国移動(チャイナ・モバイル、941.香港)、中国中鉄(チャイナ・レールウェイ・グループ、390.香港)、嘉里建設(ケリー・プロパティーズ、683.香港)が魅力的だと言っています。(ソースWSJ)