「原発を動かせる状況になれば、電気料金は安く済む。貿易収支は助かる」との話は麻生財務相の言葉です。また経団連の米倉前会長は「安全審査を加速して早期の原発再稼働に努めてもらいたい。そうすれば化石燃料の輸入にストップがかかり望ましい」と言っています。本当にそうなのでしょうか。
今年に入り、政財界では原発ゼロが貿易収支悪化の主犯であるとの大合唱が続いています。7月半ば、九州電力川内原発1,2号機が原子力規制委員会の審査に合格し、秋の再稼働が現実味を帯びてきただけに、その主張のボルテーイジは一段と上がってきました。
たしかに日本の貿易収支はここ数年で急速に悪化しています。財務省の貿易統計によると、東日本大震災前の2010年に6,6兆円の黒字だったが、11年から赤字に転落し、13年は1,5兆円の赤字になり、巨額の「国富」が流出しています。
この間、輸出は2,4兆円しか増えていないのに、輸入はそれをはるかに上回る20,5兆円の増加。自動車や電気製品などの海外輸出で稼ぎ「黒字大国」を誇った日本が、今や大幅な輸入超過に悩む「赤字国」に様変わりしたのです。とは言え、それがあたかも「原発ゼロのせい」と強調するかのような政財界の主張には専門家も首をかしげています。
「原発停止の影響はあくまで一部に過ぎない」と指摘するのは、シティーグループ証券のエコノミストの飯塚氏です。「原油・粗油」の輸入額はこの3年で4,8兆円増えたのですが、量自体はむしろわずかながら減っているのです。10年初めから、13年末までに、原油は約4割値上がりし、為替も1ドル90円から105円まで安くなりました。つまり、輸入額が増えたのは原油価格の上昇と円安と言う経済環境の変化が主因で、原発ゼロは理由にならないという事です。
火力発電の主力燃料、液化天然ガス(LNG)もそうです。10~13年で輸入額は3,5兆円~7,1兆円とほぼ倍増しましたが、輸入量は25%しか増えていません。飯塚市によれば、原発の代替火力の増加で日本からの需要が急増したため市況が一気に高騰。これに円安が加わり、高値で買わされたことが輸入額を「水ぶくれ」させる要因になっていると分析しています。
飯塚氏は「仮に原発が再稼働してLNGの輸入量と価格が下がったとしても、貿易赤字は3兆円くらいしか減らない。再稼働で赤字が一気に解消することはない」と断言しています。貿易収支悪化の本質的な要因は、輸出産業の主力である自動車などが国内から海外へと生産をシフトしたり、情報通信産業の国際競争力が急激に悪化したりしたためで、「むしろ、産業・貿易構造の変化が大きい。日本の貿易収支は今後も長期にわたって赤字を続ける可能性が高い」と指摘しています。
そもそも円安は、12年に発足した安倍政権が掲げる経済政策「アベノミクス」が誘導しました。本来は、円安が進めば製造業の輸出が増え、貿易収支はいずれ黒字化するはずだったのですが、輸出は伸び悩み、輸入額を必要以上に膨らませたのです。貿易赤字の背景には「原発ゼロ」よりも根深い問題があるのでしょう。経団連などの産業界が原発ゼロにとの大合唱も、実はそんなに影響がないと分かっているはずで、政府とぐるになって原発推進を図っているのではないでしょうか。
今年に入り、政財界では原発ゼロが貿易収支悪化の主犯であるとの大合唱が続いています。7月半ば、九州電力川内原発1,2号機が原子力規制委員会の審査に合格し、秋の再稼働が現実味を帯びてきただけに、その主張のボルテーイジは一段と上がってきました。
たしかに日本の貿易収支はここ数年で急速に悪化しています。財務省の貿易統計によると、東日本大震災前の2010年に6,6兆円の黒字だったが、11年から赤字に転落し、13年は1,5兆円の赤字になり、巨額の「国富」が流出しています。
この間、輸出は2,4兆円しか増えていないのに、輸入はそれをはるかに上回る20,5兆円の増加。自動車や電気製品などの海外輸出で稼ぎ「黒字大国」を誇った日本が、今や大幅な輸入超過に悩む「赤字国」に様変わりしたのです。とは言え、それがあたかも「原発ゼロのせい」と強調するかのような政財界の主張には専門家も首をかしげています。
「原発停止の影響はあくまで一部に過ぎない」と指摘するのは、シティーグループ証券のエコノミストの飯塚氏です。「原油・粗油」の輸入額はこの3年で4,8兆円増えたのですが、量自体はむしろわずかながら減っているのです。10年初めから、13年末までに、原油は約4割値上がりし、為替も1ドル90円から105円まで安くなりました。つまり、輸入額が増えたのは原油価格の上昇と円安と言う経済環境の変化が主因で、原発ゼロは理由にならないという事です。
火力発電の主力燃料、液化天然ガス(LNG)もそうです。10~13年で輸入額は3,5兆円~7,1兆円とほぼ倍増しましたが、輸入量は25%しか増えていません。飯塚市によれば、原発の代替火力の増加で日本からの需要が急増したため市況が一気に高騰。これに円安が加わり、高値で買わされたことが輸入額を「水ぶくれ」させる要因になっていると分析しています。
飯塚氏は「仮に原発が再稼働してLNGの輸入量と価格が下がったとしても、貿易赤字は3兆円くらいしか減らない。再稼働で赤字が一気に解消することはない」と断言しています。貿易収支悪化の本質的な要因は、輸出産業の主力である自動車などが国内から海外へと生産をシフトしたり、情報通信産業の国際競争力が急激に悪化したりしたためで、「むしろ、産業・貿易構造の変化が大きい。日本の貿易収支は今後も長期にわたって赤字を続ける可能性が高い」と指摘しています。
そもそも円安は、12年に発足した安倍政権が掲げる経済政策「アベノミクス」が誘導しました。本来は、円安が進めば製造業の輸出が増え、貿易収支はいずれ黒字化するはずだったのですが、輸出は伸び悩み、輸入額を必要以上に膨らませたのです。貿易赤字の背景には「原発ゼロ」よりも根深い問題があるのでしょう。経団連などの産業界が原発ゼロにとの大合唱も、実はそんなに影響がないと分かっているはずで、政府とぐるになって原発推進を図っているのではないでしょうか。