メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」
交響曲第3番「スコットランド」
指揮:ペーター・マーク
管弦楽:ロンドン交響楽団
発売:1980年
LP:キングレコード K15C‐8056
1829年4月、メンデルスゾーンは、ロンドン・フィルハーモニック協会から招待を受け、ロンドンでの演奏旅行の後、スコットランドの旅を楽しんだが、このときの印象を基に作曲したのが、序曲「フィンガルの洞窟」と交響曲第3番「スコットランド」なのである。ロンドンに招かれたときにメンデルスゾーンは20歳であり、その才能は若いときから人々を魅了していたことがこのことからも分る。イギリス旅行から帰った4年後に「フィンガルの洞窟」、8年後に交響曲第3番「スコットランド」が作曲されている。2曲とも大自然が巧みなオーケストレーションによって描き込まれた作品であり、ワーグナーが「メンデルスゾーンこそは無類の音楽による風景画家」と絶賛したほどだ。しかし、2曲とも単純な表面的風景描写で終わっておらず、一旦メンデルスゾーンの心のフィルターを通して、爽やかな音楽へと昇華されているところが、現在でも人気がある最大の理由であろう。このLPレコードで指揮しているのはスイス出身の指揮者のペーター・マーク(1919年―2001年)である。当時、ペーター・マークは“モーツァルトとメンデルスゾーンのスペシャリスト”として名高かった指揮者である。そんなペーター・マークがロンドン交響楽団を指揮し、十八番のメンデルスゾーンを録音したのがこのLPレコード。2曲とも何のけれんみもなく、清々しく演奏している。あたかも真っ直ぐに伸び切った美しい花のように光り輝く指揮ぶりだ。これによってペーター・マークは、メンデルスゾーンの曲の特徴を、くっきりと浮かび上がらせることに成功している。現在、指揮者はどんな曲でも一通り指揮できなければまっとうに評価されないが、ペーター・マークが“モーツァルトとメンデルスゾーンのスペシャリスト”として評価されていたのは、その時代が古き良き時代であったからかもしれない。ペーター・マークは、スイス東北部のザンクトガレンの出身。バーゼル大学とチューリッヒ大学で哲学と神学を修め、ピアノをアルフレッド・コルトーに、また指揮をエルネスト・アンセルメとウィルヘルム・フルトヴェングラーに師事。1945年からチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団やスイス・ロマンド管弦楽団などを指揮して活躍。1947年スイス・ビールゾロトゥルン歌劇場音楽監督、1952年デュッセルドルフ市立歌劇場第1指揮者、1955年ボン市音楽監督、1964年ウィーン・フォルクスオーパー音楽監督、1984年ベルン交響楽団専任指揮者などを務めた。(LPC)
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