シューベルト:交響曲第9番「ザ・グレート」
指揮:ルドルフ・ケンペ
管弦楽:ミュンヘン・フィルハーモニック
録音:1968年5月22日、27日
LP:CBSソニー 13AC 956
シューベルトの交響曲第9番「ザ・グレート」が完成したのは、自身の死の8か月前、ベートーヴェンが死去してから約1年の後のことある。シューベルトは、ベートーヴェンを崇拝していたこともあり、何としてもベートーヴェンに比肩できる交響曲を書いておきたいと考えていた。そして完成したのが「ザ・グレート」である。それだけに自信作であったと思われるが、当時の評判は捗々しいものではなかった。唯一、メンデルスゾーン指揮のライプツィヒ・ゲヴァントハウスでの演奏会において評価されたぐらいだったという。しかしシューマンは、この交響曲をして「天国的長さ」という有名な言葉で表し、その真価を広く知らしめた。以後、シューベルトの代表的作品の一つとして知られている。このLPレコードは、ルドルフ・ケンペ(1910年―1976年)がミュンヘン・フィルを指揮した録音だ。ルドルフ・ケンペは、シュターツカペレ・ドレスデン音楽総監督・首席指揮者、バイエルン国立歌劇場音楽総監督、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者、BBC交響楽団首席指揮者などを歴任したドイツの名指揮者。「ザ・グレート」は、全楽章がシューベルト特有の歌うような優美な旋律で覆い尽くされた交響曲であるが、ケンペはこの録音でその長所を最大限に発揮させることに成功している。ともすると巨大さだけが強調されがちなこの曲を、ケンペは緻密で流れるように旋律を歌わせ、ケンぺとミュンヘン・フィルとが一心同体化したかのようにして曲が進む。ケンぺの手綱捌きは実に見事で、この交響曲の雄大さを余すところなく表現し尽し、さらに優雅さも兼ね備えた稀に見る名演が完成した。交響曲第9番「ザ・グレート」の録音の聴き比べ企画の記事で、このケンぺ指揮ミュンヘン・フィルの録音が抜け落ちている出版物を見かけることがある。本命中の本命の録音を抜かしてランキングを付けるのはあまりにも問題だ。現在、CD盤も発売されているようなので選者には一度聴き比べてもらいたいものだ。そして演奏の質の高さに加え、LPレコードの音質の素晴らしさについて、改めて思い知らされる一枚でもある。ちょうどコンサートホールの指揮台の位置でオーケストラの音を全身で浴びているような感じだ。LPレコード特有の柔らかい感触にに加え、奥行きの深い響きが何とも心地良い。一度でもこのLPレコードを聴くともうLPレコードの世界から離れなくなる。(LPC)
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