ビゼー:交響曲第1番
組曲「美しきパースの娘」
小組曲「子供の遊び」
指揮:ジャン・マルティノン
管弦楽:フランス国立放送管弦楽団
録音:1971年2月、パリ
LP:ポリドール(グラモフォンレコード) MGW5154(2544 100)
交響曲と言うと直ぐに、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどの古典派やマーラーやブルックナーなどのロマン派のドイツ・オーストリア系の曲が思い浮かぶ。それでは、フランス系の交響曲を挙げてみなさいと言われると・・・ベルリオーズの「幻想交響曲」ぐらいしか思い浮かばない人も少なくない。今回のLPレコードは、そんなドイツ・オーストリア系偏重の交響曲の中で、フランス系の交響曲として、ベルリオーズの「幻想交響曲」と並んで気を吐いている、ビゼーの交響曲第1番である。ビゼーと言えば、オペラ「カルメン」が有名だが、この初期の作品の交響曲第1番は、何とも親しみやすい交響曲に仕上がっており、昔から多くのリスナーに愛聴されてきた曲である。この曲は、1855年、ビゼーがまだパリ音楽院に在学中の17歳の時の作品である。当時、ビゼーは、ドイツ音楽の様式を勉強していた時であり、このため、この曲には、ハイドンやモーツァルトの影響が色濃く反映されている。とはいえ、ビゼーはフランスのパリ生まれであり、南フランスの明るく、ラテン的気質が存分に盛り込まれており、ドイツ・オーストリア系とフランス系の2つの様式が融合され、その結果独特の魅力を発揮する交響曲が生まれた。この曲のスコアは長い間パリ音楽院の図書館に埋もれていたが、20世紀に入りようやく発見され、1935年にワインガルトナーによって初演されたといういわく付きの曲でもある。ところでビゼーは、交響曲を何曲作曲したかというと、この第1番のほかに、第2番を作曲したが破棄し、第3番は作曲されたかどうかも分らないという。つまり、第1番といっても、ビゼーの交響曲はこの曲しか遺されてはいない。このLPレコードで指揮しているジャン・マルティノン(1910年―1976年)は、フランスの名指揮者。フランスものの作品の指揮には定評があり、ドビュッシーの管弦楽曲全集、サン=サーンスの交響曲全集、ベルリオーズの「幻想交響曲」、ラヴェル管弦楽曲全集などの優れた録音を今に遺している。このLPレコードでも、実に軽妙洒脱に3曲のビゼーの作品を指揮しており、聴いていて楽しめる。特に、交響曲第1番の指揮では、軽快なテンポと的確な構成力で、全体がきりりと引き締まった曲づくりに成功しており、この曲のベスト録音として、現在においてもその存在価値は少しも失われていない。(LPC)