★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇若き日のピリス、東京での録音 モーツァルト:ピアノソナタ第11番/幻想曲ニ短調/ピアノソナタ第16番/ロンドイ短調

2022-12-26 09:43:43 | 器楽曲(ピアノ)


モーツァルト:ピアノソナタ第11番「トルコ行進曲つき」K.331
       幻想曲ニ短調K.397
       ピアノソナタ第16番K.545
       ロンドイ短調K.511

ピアノ:マリオ・ジョアオ・ピリス

録音:1974年1月~2月、東京、イイノホール

LP:日本コロムビア OX‐7010‐N

 ある時、世界のピアニストの頂点を極めた一人となり、現在では第一線を引退したピリス(正しくはピレッシュ)のコンサートを聴く機会得た。その演奏は、力強く、説得力を持った、そして何よりも年輪を感じさせるそのピアノ演奏に接し、昔、LPレコードで聴いた耳にとっては、何とも懐かしさが込み上げてきてしょうがなかった。このLPレコードもその一つであるのであるが、私は、ピリスの録音したLPレコード、CDを聴いて初めて、真のピアノ演奏の美しさに触れることができたのだと思う。今から40年以上前、東京で録音されたこのLPレコードのピリスの演奏は、若々しく、一貫して優美さに貫かれたものになっており、同時に、一つのタッチも曖昧さがなく、明快さそのものなのである。でも機械的な雰囲気は微塵も感じられない。そして、何か物悲しく、憂いを含んだような表現は、ピリスしか表現することが不可能とさえ言ってもいいのではないか。マリア・ジョアン・ピリスは、1944年にポルトガルのリスボンで生まれる。7歳でモーツァルトの協奏曲を公開演奏したという。1953年から1960年までリスボン大学、その後、西ドイツにのミュンヘン音楽アカデミーで学ぶ。1970年ブリュッセルで開かれたベートーヴェン生誕200周年記念コンクールで優勝。1970年代には、デンオンと契約してモーツァルトのピアノソナタ全集を録音している。室内楽演奏にも積極的で、1989年よりフランス人ヴァイオリニストのオーギュスタン・デュメイと組んで演奏会や録音を現在に至るまで続ける。1989年ドイツ・グラモフォンの専属アーティストとしてモーツァルトのピアノソナタ集の録音を行い、1990年「国際ディスク・グランプリ大賞」のCD部門賞を受賞する。現役は引退したものの、現在、世界各地でマスタークラスを主宰し、後進の指導にも大いに力を入れている。日本へは1970年以来度々訪れており、親日家で日本でのファンも多い。このLPレコードのピアノソナタ第11番「トルコ行進曲つき」の演奏は、快活で歯切れの良さに特に引き付けられる。幻想曲ニ短調は、一転して、ほの暗い曲の持つ特徴を最大限に表現し切ったピリスしか弾けない名演だ。間の取り方の何と絶妙なことか。ピアノソナタ第16番の演奏は、何とも爽快で、その胸のすくような爽やかさに、身も心も天国に居るような錯覚に捉われてしまうほどである。最後のロンドイ短調は、ゆっくりと過去のことを思い出すかのように、ピリスは無心に弾き続ける。あたかも曲の終わりがないかのように・・・。(LPC)


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