★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇イヴリン・クロシェのフォーレ:舟歌全曲(第1曲~第13曲)

2023-05-04 09:38:44 | 器楽曲(ピアノ)

 

フォーレ:舟歌全曲(第1曲~第13曲)

ピアノ:イヴリン・クロシェ

LP:ワーナー・パイオニア(VOX) Hー4513V

 フランス出身のピアニストのイヴリン・クロシェ(1934年生まれ)は、VOXに4枚のLPレコードからなるフォーレ:ピアノ曲全集を完成させているが、このLPレコードはその第1集に当るもので、全13曲の舟歌を収めてある。因みに他の3枚のLPレコードはというと、<第2集>夜想曲(全13曲)/小品集<第3集>ヴァルス・カプリス(全4曲)/アンプロンプチュ/マズルカ<第4集>前奏曲集/主題と変奏/無言歌集となっている。イヴリン・クロシェのピアノ演奏は、如何にもフランスのピアニストらしく、繊細でニュアンスに富んだ表現力に優れており、フォーレ:ピアノ曲全集を一人で録音するには最適なピアニストの一人であると言っても決して過言ではない。イヴリン・クロシェは、ルドルフ・ゼルキンに見い出され、米国でマールボロ音楽フェスティバルに出演するなど、世界的に知られたピアニストで、日本での評価も高く、特にフォーレなどフランスの作曲家の演奏では定評がある。舟歌は、6/8あるいは12/8拍子のリズムによる、ゆったりとした旋律を奏でる曲をいう。舟歌は、元来、ヴェネツィアのゴンドラ漕ぎが櫂を動かして舟を進めるときに歌う歌を指していた。これらは、既に18世紀には広く知られるようになっていた。19世紀の歌曲やオペラには、しばしば舟歌が登場する。例えば、シューベルトの歌曲「水の上にて歌える」、オッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」、ショパンの「舟歌」などがそれである。メンデルスゾーンやショパンなども舟歌を作曲しているが、生涯にわたり13曲もの舟歌を作曲したのはフォーレ以外にはいない。それだけに13曲のすべてがフォーレのつぶやきのようでもあり、イタリアへの憧れのピアノの歌のようでもある。フォーレは、ピアノ独奏による舟歌を生涯わたって書き続けた。それらは、第1期(初期)の舟歌=4曲(第1番~第4番)、第2期(中期)の舟歌=3曲(第5番~第7番)、第3期(後期)の舟歌=6曲(第8番~第13番)と3つのグループに分けることができる。ところが、これらのピアノによる舟歌の前に、フォーレは作品7の歌曲による舟歌を書いている。また、その後の声楽曲の伴奏にも舟歌の様式を取り入れている。そんなフォーレの舟歌をイヴリン・クロシェは、一曲一曲を繊細に噛み締めるように丁寧に歌うように弾いており、その響きがリスナーに優しく語り掛けてくる。それらを聴くと、一時夢の世界へと迷い込んだ気分にさせられる。(LPC)


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