★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇フランスの名ピアニスト ヴラド・ペルルミュテルのショパン:ワルツ集(全14曲)

2024-05-20 09:44:43 | 器楽曲(ピアノ)


 ショパン:ワルツ集(全14曲)                

       第5番「大ワルツ」/第7番/第8番/第1番「華麗な大ワルツ」/
       第9番「別れのワルツ」/第4番「華麗なワルツ」/第13番/第3番/
       第14番/第10番/第11番/第12番/ 第6番「子犬のワルツ」/
       第2番「華麗なワルツ」

ピアノ:ヴラド・ペルルミュテル

録音:1962年10月、ジュネーヴ

LP:日本コロムビア OW‐7874‐PK

 このLPレコードでピアノを弾いているフランス出身のヴラド・ペルルミュテル(1904年―2002年)は、若い頃にラヴェルに直接師事したこともあることから、“ラヴェル弾き”といった評価をされるケースが多かった。このことは、1950年代(モノラル)と1970年代(ステレオ)の2度にわたり、ラヴェルの全ピアノ曲をレコーディングしていることからも裏付けられる。同時に、アルフレッド・コルトーからショパンの教えを受け、“ショパン弾き”とも呼ばれていた。しかし、ペルルミュテルは、日本において、必ずしも“ショパン弾き”として正統な評価を受けていたとは言えなかった。その原因は、当時の日本では、“ショパン弾き”と言えば、コルトーを筆頭に、ディヌ・リパッティ、サンソン・フランソワ、クララ・ハスキルなどのピアニストの知名度が高く、ペルルミュテルの名前が知られていなかったことが挙げられる。今もそうだが、わが国のクラシック音楽界は、ドイツ・オーストリア系の音楽が主流であり、フランス系音楽は、あまり正統な評価がされないことに起因するのであって、演奏そのものを比較して評価が下されたものではない。フランス人のコルトーは、ペルルミュテルのことを「彼は単なるピアニストではなく、偉大な芸術家だ」と称えたことからも分るとおり、ペルルミュテルは、名ピアニストというだけの位置づけだけでなく、フランス・ピアノ楽派の最も正統な継承者として評されていたのである。それは、1950年にローザンヌ音楽院のピアノ科教授、1951年にパリ音楽院の教授になったことからも裏付けられる。このLPレコードでのペルルミュテルの演奏は、ショパンの演奏の本道を行くもので、気品があり、優雅な雰囲気を漂わせたものだ。単なる情緒纏綿たる演奏とは程遠い、きっちりとした形式美に貫かれた演奏であり、「本来ショパンの演奏はこうあらねばならない」という思いに至る。世の中には手を入れ過ぎたショパン演奏があまりにも多すぎる。ペルルミュテルの演奏を一度は聴かないと、ショパンの真価は到底分らない。今、ペルルミュテルのこのLPレコードを聴き直してみて、つくづくと感じた。ペルルミュテルは、13歳でパリ音楽院に入学し、アルフレッド・コルトーに師事。ディエメ賞などを受賞。1966年に初来日し、以後、数回にわたって来日を果たした。(LPC)

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