★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ピエール・モントゥー指揮ボストン交響楽団のチャイコフスキー:交響曲第5番

2024-03-04 09:38:14 | 交響曲(チャイコフスキー)


チャイコフスキー:交響曲第5番

指揮:ピエール・モントゥー

管弦楽:ボストン交響楽団

発売:1976年

LP:RVC(RCA) RGC‐1008

 このLPレコードのライナーノートに門馬直美氏は「このレコードで、モントゥーのすばらしく偉大な才能を改めてしのんではどうだろう」と書いているが、正に正鵠を射た言葉だ。このLPレコードでのモントゥーの指揮ぶりは、隅々まで気配りが行き届くと同時に、チャイコフスキーらしい雄大さも持ち合わせた演奏内容になっている。そして、ボストン交響楽団の楽団員達を奮い立たせ、恐ろしいほどのエネルギーをそこから引き出すことに成功しているのだ。指揮者とオーケストラの隔たりを取リ払い、指揮者とオーケストラとが混然一体化したような演奏である。メリハリのあるリズム感も誠に聴いていて心地良い。あらゆる面からみてバランス感覚に優れている演奏だ。通常、バランス感覚に優れてた演奏である場合、「欠点はないのだが、どうも強烈に引き付ける何かに欠ける」といったケースが多いのだが、モントゥーの場合にはこれが当て嵌まらない。モントゥーの指揮はリスナーをぐいぐいと引き付けて決して離さない。特に、このLPレコードでの“チャイコフスキー節”の演出効果は抜群の出来だ。この録音はリスナーを泣かせること請け合いだ。今でもチャイコフスキー:交響曲第5番の録音の中でトップを争う演奏内容だと私は思う。ピエール・モントゥー(1875年―1964年)はフランス出身の指揮者。パリ音楽院でヴァイオリンを学ぶ。1911年からはディアギレフのロシア・バレエ団で指揮を担当し、ストラヴィンスキーの「春の祭典」「ペトルーシュカ」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」、ドビュッシーの「遊戯」など、20世紀の名作バレエ音楽の初演を数多く手掛けたことで知られる。米国メトロポリタン歌劇場、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団、パリ交響楽団、ボストン交響楽団、サンフランシスコ交響楽団などで指揮を行い、1961年にロンドン交響楽団の首席指揮者となり、死去するまでその地位にあった。1963年にはロンドン交響楽団を率いて来日している。モントゥーは、フランス出身なので当然フランス音楽に長じると同時に、ドイツ・オーストリア系の曲の演奏においても一目置かれていた。さらに当時の現代音楽の初演を手掛けるなど、正にスーパーマン的活躍を見せ、不世出の名指揮者だった。チャイコフスキー:交響曲第5番は、チャイコフスキー48歳の時の1888年8月に完成した交響曲で、有名な悲愴交響曲の5年前に当たる。(LPC)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする