★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇フィッシャー・トリオのブラームス:ピアノ三重奏曲第1番/第2番

2023-07-27 09:38:07 | 室内楽曲


ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番/第2番

ピアノ三重奏:フィッシャー・トリオ
          
         エドウィン・フィッシャー(ピアノ)
         ヴォルフガング・シュナイダーハン(ヴァイオリン)
         エンリコ・マイナルディ(チェロ)

録音:第1番:1953年11月30日/第2番:1951年12月2日、バイエルン放送スタジオ

発売:1979年5月

LP:日本コロンビア OZ‐7560‐BS

 ブラームスは、数多くの室内楽を書いた。中でもヴァイオリンソナタ、ピアノ五重奏曲、クラリネット五重奏曲、弦楽6重奏曲などは、度々演奏会でも取り上げられるし、FM放送でも流されることが多く、数多くのリスナーから親しまれている。ところが、ピアノ三重奏曲やピアノ四重奏曲、さらにはチェロソナタなどは、そう滅多に聴くことができない。これらは、内省的であり、晦渋であり、しかも暗い印象を漂わせる曲が多い。逆に言うと、最もブラームス的な要素を凝縮している曲であるとも言うこともできるかもしれない。これらの作品は、緻密で、強固な構成力を持っている曲が多く、内容の深みという点から見ると、他のジャンルの作品を凌駕しているという見方もできよう。今回のLPレコードは、ブラームスのピアノ三重奏曲第1番と第2番である。これらに対し第3番は、比較的牧歌的な要素がある。第1番の第1楽章の出だしの部分と第2番の第2楽章が比較的穏やかで、聴きやすいが、他の部分は、実に晦渋であり、内省的な性格で覆われている。しかし、よく聴いてみると、第1番は、若い時の作品だけに意欲的な面はあるものの、構成力は今一歩。一方、第2番は、充実期の作品だけあって十分な構成力を見せている。ここで、演奏しているのが、当時の3人の大家、スイス出身のピアニストで、とりわけバッハの演奏では同時代の第一人者であり「平均律クラヴィーア曲集」の全曲録音を世界で初めて行ったエドウィン・フィッシャー(1886―1960年)を中心に、オーストリア出身のヴァイオリニストのヴォルフガング・シュナイダーハン(1915年―2002年)、イタリア出身のチェリストのエンリコ・マイナルディ(1897年―1976年)からなるフィッシャー・トリオである。このトリオは、1949年のルツェルン音楽祭で登場して以来、1955年まで6年間の間、活動して名声を得ていたが、このLPレコードが発売になるまでは、口伝のみの評判であったようだ。フィッシャー・トリオが活動を停止した大分後になって、このLPレコードが登場し、初めてそのベールが剥がされたのである。このLPレコードに付けられた帯には、「戦後ヨーロッパ最高のトリオとして活躍したフィッシャー・トリオ初のレコード化!」と書かれており、当時のリスナーのフィッシャー・トリオへの熱い思いが伝わってきそうである。演奏内容は、3人の息が合い、期待に違わぬ、密度の濃い、充実したブラームスの調べを聴くことがでる。(LPC)

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