モーツァルト:セレナード第12番「ナハト・ムジーク」
セレナード第11番
合奏:コレギウム・アウレウム合奏団員
録音:1970年、バイエルン州キルヒハイム・フッカー城、糸杉の間
LP:テイチク(ハルモニア ムンディ レコード) ULS-3130-H
モーツァルトは、セレナードをはじめディヴェルティメント、カッサシオンなどの社交音楽といおうか、肩のこらない気楽に聴ける音楽を我々に数多く遺してくれており、それらの音楽が、ありとあらゆるものが変化を遂げた現代においても愛好されているということは、ある意味では驚異的なことなのかもしれない。交響曲とか協奏曲などは、時代を越えて普遍的な音楽を伝えてくれるので、現代の我々が聴くことは納得がいくが、社交音楽は、その時代の雰囲気を背景にして、はじめて成り立つ音楽であり、それが今でも聴かれるということは、モーツァルトの作曲自体に、単なる社交音楽以上の何かが込められているからだろうな、と感じざるを得ない。今回のLPレコードはそんなモーツァルトが作曲したセレナードの中でも、管楽器の合奏によるセレナードを2曲収めてあるところに特徴がある。モーツァルトが作曲した管楽器のためのセレナーデというと、誰もが真っ先に思い浮かべるのは「13の管楽器のためのセレナード“グラン・パルティータ”」だろう。セレナード第12番「ナハト・ムジーク」は、「13の管楽器」と同じ年の1781年に作曲され、セレナード第11番は、翌年の1782年に作曲されている。これらの2曲の管楽器合奏のためのセレナードは、「13の管楽器」ほどポピュラーではないが、内容がなかなか充実した曲で、一度は聴いておきたい曲ではある。演奏しているコレギウム・アウレウム合奏団は、ハルモニア・ムンディのレコーディングを目的として1962年ドイツで結成されたアンサンブルで、原則的に指揮者を持たなかった。名前は“黄金の集団”を意味し、“宮廷音楽を復活させる楽団”としてバロックおよび古典の作品を、当時の響きで再現したアンサンブルであった。この録音でも一部の隙もなく、同時に社交音楽の持つ明るさも加味した、優雅な演奏ぶりを聴かせてくれている。このLPレコードでは、バロックオーボエ、クラリネット、ファゴット、インヴェンティオンズホルンという4種の管楽器が用いられているにすぎないが、それでも彼らの演奏が醸し出す雰囲気は、“黄金の集団”の名に値するものと言えよう。このLPレコードは、1970年に録音されたが、1971年度のウィーン芸術祭におけるレコード賞である「ウィーン・モーツァルト協会賞」、すなわち「ウィーン・フレーテンウール賞」を獲得している。このことからも、この録音がモーツァルト演奏における最も優れた一つであることが証明されよう。(LPC)