★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇仏のクラリネットの名手エティエンヌのモーツァルト:クラリネット協奏曲/クラリネット五重奏曲

2023-02-13 09:40:53 | 協奏曲


モーツァルト:クラリネット協奏曲
       クラリネット五重奏曲

クラリネット:フランソワ・エティエンヌ

指揮:モーリス・エウィット

管弦楽:エウィット室内管弦楽団

弦楽四重奏:ヴェーグ弦楽四重奏団

録音:1941年(クラリネット協奏曲)/1952年(クラリネット五重奏曲)

発売:1969年

LP:東芝音楽工業 AB‐8089

 クラリネットは、その音色が何か人々の郷愁を呼び覚まし、一度聴き始めるとなかなか忘れがたい印象をリスナーに与える管楽器だ。モーツアルトは交響曲でもクラリネットを巧みに取り入れ、効果を上げているが、クラリネットを使った協奏曲や室内楽でも傑作を残している(とは言え、モーツァルト自身はあまりクラリネットは好きではなかったという)。それが今回のLPレコードのクラリネット協奏曲とクラリネット五重奏曲であり、現在に至るまで、それぞれを代表する名曲として、現在でもコンサートなどでもしばしば取り上げられている。そして、これまでこの2曲は数多く録音されてきたが、その原点とも言うべきものが、LPレコード初期に発売された、このフランスのクラリネットの名演奏家フランソワ・エティエンヌが遺した録音であった。録音は、クラリネット協奏曲が1941年(SPレコード)、クラリネット五重奏曲が1952年と第二次世界大戦を跨いだ時期に当る。このためクラリネット協奏曲の音質は良いとは言えないものの、今聴いても鑑賞には差し支えはない。それより、演奏内容が極上の出来であり、聴いている間中、音質などは気にならない。ジャック・ランスローなど、フランスはこれまで優れたクラリネット奏者を輩出してきたが、フランソワ・エティエンヌは、それらの元祖というか、象徴的存在であった。聴いてみると、クラリネットをいとも軽快に演奏することに唖然とさせられる。クラリネット協奏曲はモーツァルトが死の2カ月前に作曲した曲だけに内容が深く、しかも諦観に満ちている。そんな曲を、エティエンヌのクラリネットは、七色の音色を巧みに使い分け、奥深い曲想を、明快にリスナーの前に提示してくれる。モーツァルト:クラリネット協奏曲で、今もって、このエティエンヌの演奏を越える演奏は、あまり見当たらない。クラリネット協奏曲の指揮のモーリス・エウィットは、有名なカペエ弦楽四重奏団草創期からのメンバーで、エウィット室内管弦楽団を組織した。一方、クラリネット五重奏曲は、1789年に作曲された曲で、モーツァルトの室内楽の中でも傑作として知られる作品。ここでもエティエンヌの演奏は、溌剌としていて、清々しい感情が前面に出ている演奏を繰り広げ、聴いていて思わずうっとりとさせられるほどの出来栄えとなっている。ヴェーグ弦楽四重奏団は、ブタペスト音楽院の出身者たちによって結成され、1946年「ジュネーヴ国際コンクール」で優勝し、世界的に知られたカルテットであった。主宰者のシャーンドル・ヴェーグ(1912年―1997年)は、ハンガリー生まれのフランスのヴァイオリニスト。1924年リスト音楽院に入学。1930年に同音楽院を卒業後ソリストとして活動すると同時に、1935年にはハンガリー四重奏団を結成したが、1940年リスト音楽院の教授に就任すると共に、自身の名を冠したヴェーグ四重奏団を結成した。(LPC)

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