★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇カレル・アンチェル指揮チェコ・フィルのスメタナ:交響詩「わが祖国」全曲

2021-11-11 09:39:52 | 管弦楽曲


スメタナ:交響詩「わが祖国」全曲
   
       1高い城ーヴィシェフラド 
       2モルダウ 
       3シャールカ 
       4ボヘミヤノの森と草原より 
       5ターボル 
       6プラニーク

指揮:カレル・アンチェル

管弦楽:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

発売:1978年

LP:日本コロムビア(SUPRAPHON) OQ‐7126‐S

 このLPレコードは、聴いていて心から感動する録音だ。それはスメタナ(1824年―1884年)が、愛する祖国チェコを心の底から想って作曲したことが、ひしひしと伝わってくるからである。この交響詩「わが祖国」は、第2曲の「モルダウ」が突出して名高いために、逆に全曲を聴く機会が意外に少ない。私も全曲はそう多くは聴かないが、今回全曲を聴いてみて、改めて名曲だと感じ入った。しかも、指揮がチェコ出身のカレル・アンチェル(1908―1973年)、管弦楽がチェコ・フィルという、これ以上のコンビはないという組み合わせなのだから貴重この上ない録音だ。カレル・アンチェルが来日して、スメタナの歌劇「売られた花嫁」序曲を演奏した時のテレビ生中継されたことが、昨日のことのように思い浮かぶ。カレル・アンチェルは、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者、トロント交響楽団首席指揮者などを歴任した名指揮者だ。この録音でもスメタナの祖国へ対する思いを、カレル・アンチェル指揮チェコ・フィルの演奏は、余すところなく引き出している。「わが祖国」は、スメタナが、当時はまだオーストリアのハプスブルグ家の支配下にあったボヘミアの首都プラハ市に捧げた連作交響詩である。1946年以来、毎年開催されている国際音楽祭「プラハの春」は、その年の5月12日に、この交響詩「わが祖国」全曲演奏で幕を開ける習わしとなっている。この交響詩「わが祖国」は、6曲からなっているが、奇数番号の曲は、現代そして未来を表そうとしているのに対し、偶数番号の曲は、歴史的あるいは回顧的な主題が用いられており、第1曲と第2曲、第3曲と第4曲、そして第5曲と第6曲とがそれぞれペアとなっており、それにより「国民と国土が固く結ばれている」ことが表現されている。作曲は、スメタナが50歳~55歳の時に行われ、1879年に完成した。全曲演奏は、その3年後に行われ、大成功を収めた。しかし、スメタナの晩年は、耳が全く聞えなくなったことに加え、狂気の発作にも襲われ、60年の生涯を閉じている。だから、交響詩「わが祖国」が演奏されても、その場にいたスメタナは、全く音を聴くことができなかったと言われている。6つの曲(高い城ーヴィシェフラド/モルダウ/シャールカ/ボヘミヤノの森と草原より/ターボル/プラニーク)には、スメタナ自身が付けた表題と解説が書き残されている。これは、スメタナが、当時プラハには独立した交響楽団がなかったことから、「聴衆によく分からせたい」という思いから付けられたという。(LPC)

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