★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇カザドシュのラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲/ロベール、ギャビー・カザドシュのモーツァルト:2台のピアノのための協奏曲K.365

2021-11-08 09:43:26 | 協奏曲(ピアノ)


ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲
モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲K.365

ピアノ:ロベール・カザドシュ
    ギャビー・カザドシュ(モーツァルト)

指揮:ユージン・オーマンディ

管弦楽:フィラデルフィア管弦楽団

LP:CBS・ソニー 13AC 1070

録音:ラヴェル:1960年12月14日
   モーツァルト:1960年12月15日

 フランスの名ピアニストであったロベール・カザドシュ(1899年―1972年)が、妻のギャビーと共に録音したのがこのLPレコード。カザドシュの才能は若いときから花開いたようで、3歳で人々の前でピアノを弾き、10歳でパリ音楽院に入学し、一等賞を得て1913年に卒業している。第2次世界大戦後は、アメリカにも拠点を広げ、フランスとアメリカで演奏活動を行った。第2次世界大戦中は米国に亡命したが、戦後は1950年に帰国した。また、1952年までアメリカ音楽院の院長を務めた。カサドシュは、ギャビー夫人と息子ジャンとの共演により、このLPレコードにあるモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲のほかに、3台のピアノのための協奏曲も録音している。また、作曲家としても作品を残しており、7曲の交響曲、3曲のピアノ協奏曲、それに多数の室内楽曲などがある。ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲は、ラヴェルの創作活動の最晩年に完成した作品。この曲の委託者は、オーストリア出身のピアニストであったパウル・ヴィトゲンシュタイン(1887年―1961年)である。彼は、第1次世界大戦で右手を失い、左手だけでピアノ演奏活動を行ったことで当時、広く人々に知られていた。この曲は、単一楽章で書かれており、切れ目なく演奏されるが、実際には、レント、アレグロ、レントという3部構成となっている。このLPレコードでのロベール・カザドシュのラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲の演奏は、不安げでありながら、ほの暗い情熱的な面を持ち、しかもラヴェルが「ジャズの要素も取り込んだ」という曲想を、カザドシュは誠に的確に表現しており、今でもこの曲の代表的録音と言っても過言でないほど。一方、モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲K.365は、モーツァルトがザルツブルグ時代に書いた最後の作品で、モーツァルト唯一の2台のピアノのための協奏曲となった。当時、モーツァルトは、母を亡くし、悲しみに沈んでいたが、この曲はそのようなことをまったく感じさせない、幸福感に溢れた作風となっている。これは、モーツァルトがパリ滞在中に受けた影響であろうと言われている。ここでのロベール・カザドシュとギャビー・カザドシュの2人によるモーツァルト:2台のピアノのための協奏曲の演奏内容は、雰囲気がラヴェルの時とはがらりと変わり、ロベール・カザドシュが妻のギャビーとのデュオ演奏をすることによって、明るく華やかに、しかも楽しそうに演奏を行うことによって、微笑ましいことこの上ないものに仕上がった。(LPC)

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