★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ディヌ・リパッティのバッハ:ピアノ協奏曲第1番/ブラームス:「愛の歌」

2021-08-05 09:51:59 | 協奏曲(ピアノ)


バッハ:ピアノ協奏曲第1番 BWV1052 (ライヴ録音:1947年10月2日)

  ピアノ:ディヌ・リパッティ

  指揮:エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム
  管弦楽:アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

ブラームス:「愛の歌」op.52~四手のピアノと歌のためのワルツ~

  ソプラノ:ジャンヌ・ドゥ・ポリニャック
  メゾ・ソプラノ:イレーヌ・ケドロフ
  テノール:ユーグ・クエノー
  バス:ドダ・コンラート

  ピアノ連弾:ディヌ・リパッティ/ナディア・ブーランジェ

発売:1978年5月

LP:日本コロムビア OZ‐7549‐BS

 ディヌ・リパッティが遺したピアノ協奏曲のレコードは、まず、1950年8月23日、ルツェルン音楽祭において、カラヤン指揮でモーツァルトのピアノ協奏曲第21番を演奏したものがある。ディヌ・リパッティが遺したピアノ協奏曲のもう一つの録音は、1950年2月22日のジュネーブ、ヴィクトリアホールにおけるアンセルメ指揮スイスロマンド管弦楽団と共演したシューマンのピアノ協奏曲。こちらの方は、リパッティ没後20年を記念して、英デッカから発売となった。その後、もうディヌ・リパッティが遺したピアノ協奏曲の録音はあるまい、と思われていた時に、ひょっこりと発売されたのが、この、1947年10月2日にエドゥアルト・ヴァン・ベイヌム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団と共演したバッハ:ピアノ協奏曲第1番 BWV1052の演奏会のライヴ録音盤である。1947年9月にリパッティは、イギリスを訪問して、演奏会のほかに、グリーグ:ピアノ協奏曲とショパンのワルツをレコーディングした。その帰途にオランダに立ち寄り、アムステルダムのコンセルトヘボウの大ホールで演奏会を開催した時の録音が、このLPレコードのバッハ:ピアノ協奏曲第1番 BWV1052というわけである。原盤はアセテートの78回転盤。このため、音質はぎりぎり鑑賞に耐えうる、といった感じであり、現在の録音レベルとは比較はできない。しかし、そのことさえ我慢すれば、この録音は1947年という、リパッティの最盛期の演奏会の模様が収められている、リパッティを知る上で誠に貴重な録音なのである。演奏内容は、リパッティの特徴である、輪郭のはっきりとした、透明感あふれる名演を聴き取ることができる。特に第2楽章のつぶやくような、しみじみとした情感あふれる演奏を聴くと、リパッティはつくづく不世出のピアニストだったのだという感慨にとらわれる。第1楽章と第3楽章は、一部の隙もない、軽快なテンポに加え、リパッティ一流のロマン感覚をたっぷりと注ぎ込んで、バッハの世界を思う存分描き切っている。一方、このレコードのB面には、20歳のリパッティが恩師のナディア・ブーランジェ(1887年―1979年)と一緒にピアノ連弾で伴奏をした録音。ブーランジェは、フランスの作曲家・指揮者・ピアニスト・教育者で、特に音楽教師として数々の名演奏家を育てたことで知られる。ブラームス:「愛の歌」op.52は、愛らしい18曲からなる、混声四重唱と連弾のためのワルツ集。ここでの演奏内容は、先生と教え子達が仲睦まじく演奏する、心温まる雰囲気が伝わってくる。(LPC)

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