★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇アンタール・ドラティ指揮ロンドン交響楽団のシベリウス:交響詩「ルオンノタール」/「伝説」/「夜の騎行と日の出」/「波の娘」

2021-04-01 09:36:27 | 管弦楽曲

シベリウス:交響詩「ルオンノタール」(ソプラノと管弦楽のための/フィンランド語)
      交響詩「伝説」
      交響詩「夜の騎行と日の出」
      交響詩「波の娘」

指揮:アンタール・ドラティ

管弦楽:ロンドン交響楽団

ソプラノ:ギネス・ジョーンズ

LP:東芝EMI EAC‐30353

 これは、アンタール・ドラティ指揮ロンドン交響楽団の演奏で、シベリウスの交響詩4曲を1枚に収めたLPレコードである。シベリウスの交響詩というと、すぐに「フィンランディア」を思い出すが、1892年の「伝説」から1925年の「タピオラ」まで、約30年にわたって12曲ほどの交響詩を作っており、シベリウスと交響詩との相性がいかにいいかを窺わせる。これらの多くは、フィンランドの叙事詩文学である「カレワラ」に基づいていることでも知られている。第1曲目の交響詩「ルオンノタール」は、独唱パートが付いた交響詩ということが特徴の曲だ。第4交響曲の完成直前の1910年ごろに作曲された。ソプラノの歌のテキストは「カレワラ」からとられている。「カレワラ」は、フィンランドの庶民によって口伝によって語り伝えられてきた大韻律詩による英雄物語。第2曲目の交響詩「伝説」は、シベリウスの初期の傑作としてコンサートでもしばしば取り上げられている曲。シベリウスは、1892年に作曲した「クレルヴォ交響曲」で大成功を収め、楽壇にデビューを果たが、当時の大指揮者のカヤヌスは、シベリウスにアンコールピースの作曲を依頼して、完成したのがこの交響詩「伝説」。第3曲目の交響詩「夜の騎行と日の出」は、1907年に完成した作品で、あまり有名な曲ではないが、初めて聴くとその内容の充実さに驚かされる。第4曲目の交響詩「波の娘」は、シベリウスとしては珍しく、フィンランドの伝承文化には基づいてはおらず、ホメロスの神話から取られている。このLPレコードの第1曲目の交響詩「ルオンノタール」で歌っているギネス・ジョーンズ(1936年生まれ)は、イギリスのソプラノ歌手。指揮者のアンタール・ドラティ(1906年―1988年)は、ハンガリー出身。1947年にアメリカ合衆国に帰化。ミネソタ管弦楽団首席指揮者、デトロイト交響楽団音楽監督・首席指揮者などを歴任した。「ルオンノタール」でのギネス・ジョーンズの歌唱は、シベリウス特有な精緻な世界を、その歌唱力で巧みに表現して、聴き応え十分。次の「伝説」でのドラティの指揮は、明快で同時に力強く、リスナーの耳によく馴染む快演。一方、「夜の騎行と日の出」では、その精緻な指揮ぶりが一際光輝き、この名曲の全容をリスナーに余すところなく伝えてくれる名演となっている。最後の「波の娘」では、シベリウス特有の透明であると同時に静寂感に包まれた感覚が前面に打ち出され、当時のドラティ指揮ロンドン交響楽団の演奏の質の高さに脱帽させられる。(LPC)

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