★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルのシューマン:交響曲第4番/ハイドン:交響曲第88番

2021-04-08 09:43:00 | 交響曲

 

シューマン:交響曲第4番
ハイドン:交響曲第88番

指揮:ウイルヘルム・フルトヴェングラー

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

LP:日本グラモフォン LGM‐1012

 シューマン:交響曲第4番は、第1交響曲「春」の完成後直ぐに着手された作品で、本来なら第2交響曲となるはずであった。そして、その初演時には「交響的幻想曲」と記されていたという。しかし、初演で、第1交響曲ほどの反響が得られなかったため、出版するのを控え、2つの交響曲を書いた後の1851年に、主として金管の部分を改作して出版された。このため第4交響曲となってしまったという経緯がある。そして、1853年には、改作の初演が、作曲者自身の指揮で行われた。初演時に「交響的幻想曲」と書かれていたことで分かるように、この交響曲は、あたかもシューベルトの「さすらい人幻想曲」を思い起こさせるような独特な構成をしている。4つの楽章からなってはいるが、それらは途切れることなく演奏され、曲全体が、動機や主題が一つの楽章から、次の楽章に変形して引き継がれるような、循環形式となっているのである。つまり、シューマンはここで古典的交響曲からの範疇を大きく踏み出し、独創的で革新的な交響曲を創造したということができよう。シューマンの持つロマンの雰囲気はベースとしては持っているが、ベートーヴェン的な力強さ、さらにシューベルトの曲のような自由な発想の世界を、一つの交響曲の中に閉じ込めたのである。この意味では、交響曲史上画期的な作品と言っても過言でなかろう。しばしば「シューマンの交響曲は構成力が弱い」といった批判がされるが、新しい交響曲の創造という観点に立てば、この曲は、より近代的に脱皮を遂げた交響曲といった位置づけがされよう。このLPレコードで演奏しているのは、ウイルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルである。このLPレコードでのフルトヴェングラーの指揮ぶりは、シューマンの幻想的でロマン溢れる美しさの表出に加え、ベートーヴェンの交響曲を思い浮かべるような力強さに溢れた名演を聴かせる。各楽章の情感の変化を巧みに操りながら、地底から絞り出すような低音の響きを、ベルリン・フィルの弦から見事に引き出している。何か、ものに取りつかれたような凄味が漂う演奏だ。この演奏を一度でも聴いたら「シューマンの交響曲は構成力が弱い」などという言葉はニ度と発せられなくなるであろう。この録音は、現在シューマン:交響曲第4番の録音の中で最高峰に位置づけられる演奏内容と言える。ハイドン:交響曲第88番の演奏内容は、手堅く、がっちりとした構えのこの曲を、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルは、細部にも目を充分に行き届かせ、重厚さの中にも、軽快に演奏を進める。(LPC)

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