Long Ming Diary ~I'll show you myself honestly~

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『ぐるぐるまわるすべり台』 by 中村航

2008年02月11日 11時15分28秒 | Book Review
以前、伊坂幸太郎の短編が入っている『I LOVE YOU』という本の話を書きましたが、その本には伊坂氏を含め6人の男性作家が書いてます。その中の一人に中村航がいたのですが、ちょっと面白い文体だったので、本屋で見つけた氏の本を買ってきました。

『ぐるぐるまわるすべり台』 by 中村航


この本には、同タイトルの作品と、「月に吠える」という作品の2つが収録されています。

まず、「ぐるぐるまわるすべり台」ですが、コチラはタイトルからして「え?」と思わせるのですが、このタイトルはビートルズの「ヘルター・スケルター」という曲の日本語タイトルらしいです。僕はビートルズには全く興味がないので分かりませんが、そんな曲があるんだって。作中にこの曲の話が出てくるのと、物語の内容を合わせてこんなタイトルになったのだとか。

主人公は小林という元大学生。彼が建築関係の大学を辞めるところからスタートします。その中で、「黄金比」や「白銀比」などの言葉、いろんな数式が出てきますが、正直一般人には理解が難しい。黄金比はモノが一番自然に美しく見える比率で、古代から建築や美術で用いられたもの。白銀比は紙のサイズでおなじみで、A3の紙を半分に折るとA4の紙になり、この2つは相似となっている。つまり、A0の紙さえ作れば、A1もA8の紙も作れるということで、生活上は非常に無駄がなく美しいというもの。

そんな数学的な話がたくさん出てきます。が、そんな小林があるときバンド募集の掲示板でバンドメンバーを募ることに。そして集まったのが、ベースの尾崎、ギターのてつろー、ドラムのチバの3人。そしてボーカルの小林を合わせて結成したのが「狛犬」というバンド。その初練習の前、もう一人ボーカル希望の中澤が現れたところから、小林の考えが変わっていく。そして、意外な結末を迎える。

のですが、意外すぎて未だに僕は理解できていません。人それぞれの理解にゆだねられているのだろうとも取れますし、作者が怠惰的なようにも思えます。少し消化不良ですね。

そしてもう1作の「月に吠える」ですが、コチラはてつろーとチバが出合った話です。この話には数学的な話ではなく、作者が勤務していたであろう写真機器のメーカーが舞台。しかも取り上げている題材がQC活動です。

QC活動。我々サラリーマンには聞きたくもない言葉。その内容が出てきます。PDCAサイクルとか、QC7つ道具、特性要因図、別名魚の骨とか。うちの会社でも未だにやってます。製造業じゃないのにね。サービス業にもQCの考えは必要ですが、QC大会は必要ないと思いますが。業務改善活動に意欲をもってやってるんだけど、本業のお仕事がおろそかになってる人とかもいるしね。本末転倒です。

さておき、そんなQC活動をきっかけに知り合ったてつろーとチバ。この作品は哲郎サイドのお話です。「ぐるぐるまわるすべり台」での哲郎はちょっとロック野郎的で、アウトロー的なイメージを持っていたのですが、「月に吠える」のほうを読んでみるとすんげーいいヤツでした。コッチのほうが僕は好きでしたね。

とまぁ、ある意味、作者の中村氏の過去の経歴がいかんなく発揮された2作品。「ぐるぐるまわるすべり台」のほうは第130回芥川賞にノミネートされたそうです。そのときの受賞作は金原ひとみの「蛇にピアス」と綿矢りさの「蹴りたい背中」で、当時は若い女性2人ということでニュースにもなりました。

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