曲学阿世:真実を追求し、虚実の世間に迎合するようなことはしたくない。

真実を曲解し不正な情報によって世間の人々にこびへつらい、世間にとり入れられるような、ことはしたくない。

シロアリ退治なくして消費税再増税なし

2015年06月03日 18時24分39秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

                   

             「植草一秀の『知られざる真実』」

                             2015/06/03

 シロアリ退治なくして消費税再増税なし

           第1160号

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日本政策投資銀行の社長に柳正憲副社長が昇格することが政府の閣議で了解さ
れた。

前身の日本開発銀行の時代も含めて、生え抜きの行員がトップになるのは初め
てのことになる。

日本政策投資銀行は旧大蔵省、現在の財務省にとって最重要の天下り機関のひ
とつである。

財務省の天下り先には序列があった。

東西正横綱が日銀総裁と東証理事長だった。

その次に重要な「御三家」が

開銀(現在の日本政策投資銀行)

輸銀(現在の国際協力銀行)

国民金融公庫(現在の日本政策金融公庫の前身の一部)

である。

また、民間企業では、

JT(従来の日本専売公社)

横浜銀行

西日本シティ銀行

などが、最重要天下り機関として位置付けられてきた。

これらの機関を頂点として、巨大な天下りピラミッドが構築されてきた。



官僚は民間企業よりも低い給与で働いているのだから、退官後に天下りで生涯
所得の挽回を図るのは当たり前だとの意識が持たれてきた。

その天下りの構造は、ほとんど改革されていない。

旧開銀、現在の日本政策投資銀行には優れた人材が数多く、大卒で入行してい
る。

したがって、この機関の幹部を生え抜き職員=プロパー職員が務めるのは当然
のことなのだ。

ところが、財務省は、政投銀が所管の金融機関であることを理由に、永きにわ
たって、政投銀(開銀)を実効支配し続けてきた。

今回社長に就任する柳氏の前任にあたる橋本徹氏は、旧富士銀行出身で、民間
からの起用であるが、実は副社長に財務省出身者が天下りしており,実体とし
ては、財務省出身の副社長がこの銀行を支配してきたわけだ。

今回、社長に生え抜きの職員が就任するが、これまで同様に、経営の実権が財
務省出身の副社長に握られないのか、監視が必要である。



「天下り」の問題は、2009年に「消費税増税」の問題と絡めて大きな問題
に浮上した。

私は1990年代の後半から、「天下り根絶」を提唱し続けてきた。

20年来の主張である。

橋本龍太郎政権が、この声に対応して、政府関係機関の統廃合に取り組んだ
が、抜本的なメスを入れるまでには至らなかった。

それでも、官僚利権の問題に焦点が当てられるようになったことは、大きな前
進ではあった。

小泉政権は政府系金融機関の統廃合に取り組み、一定の前進を示したが、官僚
天下りの根絶には手が届かなった。

それでも、これまでは財務省の指定席とされてきた政府系金融機関のトップポ
ストに民間人が起用されるような変化が生じたのである。

政府系金融機関のトップに民間人が起用されるようになった。

しかし、外から来た民間人が政府系金融機関を完全掌握することは至難の業で
ある。

財務省はナンバー2ポストを死守して、実体として政府系金融機関の支配を確
保してきたのである。

いわゆる実効支配である。



今回は、生え抜き職員が初めて政投銀トップに就任することになる。

これはこれで、意味のあることだが、これで問題が解決するわけではない。

2009年8月30日の総選挙に際して、野田佳彦氏は

「シロアリを退治しないで消費税を上げるのはおかしい」

と、声を張り上げて訴えた。

2009年8月15日の野田佳彦氏による大阪街頭での演説は、

「野田佳彦のシロアリ演説」

として有名になった。

2012年初に本ブログで紹介して広まった演説である。

http://www.youtube.com/watch?v=y-oG4PEPeGo

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-f909.html

「改革」を断行すると宣言したのは野田佳彦氏だけではない。

岡田克也氏も同じだ。

いま改めて、「シロアリ」と「消費税増税」の問題を徹底的に掘り下げる必要
がある。

財務省は政投銀社長ポストを狙っていた。

ところが、今回は生え抜き職員が社長に起用された。

その裏側から透けて見えるのは、2017年4月の消費税率10%実現に向け
ての「パフォーマンス」である。

政投銀社長に生え抜き職員が起用されるのは歓迎すべきことだが、より重要な
ことは、これで溜飲を下げてはならないということだ。

「めくらまし」に惑わされてはならない。



現在の税制改正の方向は、明確に

「弱肉強食推進」

である。

消費税を大増税して、法人税減税を推進する。

「資本栄えて民亡ぶ」

方向に経済政策、税制改革の方向を定めている。

他方、政府の財政赤字が問題であるとしながら、財政支出の無駄を切る詰める
ことは一切しない。

財務省が切ろうとする政府支出は

1.社会保障支出

2.地方交付税

3.公共投資

の三つである。

しかし、3の公共投資については、与党の利権と対立する分野であるから、財
務省は「官僚利権」を守るために「公共事業利権」を容認している。

悪代官と御用商人が結託して、

「越後屋お前も悪じゃのう」

と盃を交わす関係になっている。



地方交付税は国と地方の縄張り争いで、省庁としては

財務省 対 総務省・警察庁

の対立図式で決着が図られる。

財務省も強いが、総務・警察も、旧内務省であって、強い力を有している。

だから、ここも簡単には圧縮されない分野である。

この結果として、歳出抑制の最大のターゲットとされているのが

社会保障支出

なのだ。



政府の支出は二つに分類できる。

利権になる支出



利権にならない支出

である。

透明な制度で、国民の権利として提供される政府支出が、一番利権になりにく
い。

制度で定められた支出を国民が受け取るのは「権利」であって、そのことに
よって、「支出」見合いの「キックバック」を国民に求めることはできないか
らだ。

「キックバック」というのは、「お金」のこともあれば、「選挙での協力」と
いうこともある。

つまり、「カネと票」になるのかが判断の基準になる。

「官僚の利権」となると、話はもう少し複雑になる。

政府支出の対象となるさまざまな機関が、天下りの受け入れ先になっている。

たとえば、地方の観光振興のためにパンフレットやさまざまな補助金の提供が
行われるとする。

このとき、このパンフレットを作成する機関が政府の外郭団体で、天下り受け
入れ先になっている。

観光産業に補助金を出す機関があれば、その機関が天下りの受け入れ先になっ
ている。

官僚機構は、このような政府支出だけを優遇するのである。



生活保護、医療費の公費負担、その他さまざまな社会保障支出は、

「国民の権利」

として政府支出が行われるために、官僚、政治屋、御用企業の利権になりにく
い分野なのである。

そこで、財務省が進める財政改革では、常に、社会保障支出だけが削減の標的
にされるのである。

逆に、官僚利権につながる支出には、指一本触れようとしないのだ。

具体的には、天下り機関が関与する政府支出は財政改革の対象とされない。

かつて、民主党政権時代に「事業仕分け」なるものが実施されたが、これも
「パフォーマンス」の一環でしかなかった。

財務省が仕切る「事業仕分け」は、財務省の利害に基づく作業であって、肝心
要の財務省の利権を切る作業はまったく行われなかったのである。



2009年7月14日に野田佳彦氏が衆院本会議で行った、麻生太郎政権不信
任決議案に対する賛成討論の内容を再掲する。

実は本メルマガのサンプルとして掲載している記事に、この内容を盛り込んだ
のだ。

本メルマガの出発点に位置する事項でもあるのだ。

http://foomii.com/00050

「私どもの調査によって、ことしの五月に、平成十九年度のお金の使い方でわ
かったことがあります。二万五千人の国家公務員OBが四千五百の法人に天下
りをし、その四千五百法人に十二兆一千億円の血税が流れていることがわかり
ました。その前の年には、十二兆六千億円の血税が流れていることがわかりま
した。消費税五%分のお金です。さきの首都決戦の東京都政の予算は、一般会
計、特別会計合わせて十二兆八千億円でございました。

これだけの税金に、一言で言えば、シロアリが群がっている構図があるんで
す。そのシロアリを退治して、働きアリの政治を実現しなければならないので
す。残念ながら、自民党・公明党政権には、この意欲が全くないと言わざるを
得ないわけであります。

わたりも同様であります。年金が消えたり消されたりする組織の社会保険庁の
長官、トップは、やめれば多額の退職金をもらいます。六千万、七千万かもし
れません。その後にはまた、特殊法人やあるいは独立行政法人が用意されて、
天下りすることができる。そこでまた高い給料、高い退職金がもらえる。また
一定期間行けば、また高い給料、高い退職金がもらえる。またその後も高い給
料、高い退職金がもらえる。六回渡り歩いて、退職金だけで三億円を超えた人
もおりました。

まさに、天下りをなくし、わたりをなくしていくという国民の声に全くこたえ
ない麻生政権は、不信任に値します。」



財務省は2017年4月の消費税率10%実現を勝ち取るために、今回、政投
銀社長ポストの奪還を見送った。

しかし、これで天下り問題が解決するわけではない。

基本的に何も変化は生じていない。

安倍政権が発足して以来、財務省は激しい勢いで天下りポストの奪還を進めて
きているのが実態である。

こんな小手先の弥縫策で、消費税大増税を許してはならない。

天下りの全面禁止を実現して、日本政治における「官僚支配」の構造を打破し
なければならないのである。

 

民主、維新、元気、社民に達増知事支援を要請

2015年06月03日 17時11分57秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

 民主、維新、元気、社民に達増知事支援を要請

小沢一郎代表と山本太郎代表は6月2日、定例記者会見を行い、9月の岩手県知事選で現職の達増氏の支援決定を発表しました。また、岩手県知事選、野党共闘、年金情報流出、オスプレイ横田配備、マイナンバー法案、TPPなどの質問に答えました


山田元農相が語るTPP“漂流”の可能性 「阻止は時間との闘い」

2015年06月03日 11時18分34秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

注目の人 直撃インタビュー
山田元農相が語るTPP“漂流”の可能性 「阻止は時間との闘い」

 大メディアはてんで報じていないが、TPPの行方が一気に不透明になってきた。旗振り役だった米国で議会が猛反発しているのである。TPP断固阻止で闘ってきた山田正彦元農相(73)に見通しを聞いたら、「漂流する可能性が高くなってきました」とズバリ。だとすると、選挙公約を無視して、TPPに突き進んでいる自民党政権はアホみたいな話になる。米政府高官や関係団体の幹部など幅広い情報網を持つ元農相に、TPP最新情勢と今後を聞いた。

■大統領選突入で米国はTPPどころではなくなる

――TPP交渉を巡って米議会が紛糾し、オバマ大統領は必死の電話攻勢で説得を続けていると伝えられています。米国で何が起こっているのですか?

 順を追って説明すると、オバマ大統領がTPPを成立させる大前提として、米議会でTPA(貿易促進権限)法案を通す必要があります。大統領に交渉を一任するもので、この委任がなければ各国と合意できない。貿易自由化を支持する共和党の理解はある程度得たものの、大統領の支持基盤である民主党には反対派が多いんです。低賃金の海外勢に雇用を奪われる懸念や、輸出促進のために自国通貨を割安に誘導する為替操作対策、多国籍企業が進出先の政府に損害を求めるISD条項などが背景にあります。

実質所得増加主因はインフレ誘導政策の失敗

2015年06月03日 11時11分40秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

                  

           「植草一秀の『知られざる真実』」

                             2015/06/02

実質所得増加主因はインフレ誘導政策の失敗

           第1159号

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厚生労働省が毎月勤労統計を発表し、4月の現金給与総額が発表された。

事業所規模5人以上の事業所では、4月の現金給与総額が

前年同月比 +0.9%

の伸びを示した。

4月の全国消費者物価上昇率は

前年同月比 +0.6%

だった。

現金給与総額の伸びから物価上昇率を差し引いた、実質所得が

前年同月比 0.3%

となった。

4月は実質賃金が前年比でプラスを記録したことになる。

しかし、現金給与総額の中身を見ると、

所定内給与 +0.6%

所定外給与 -2.3%

特別に支払われた給与 +14.9%

となっており、現金給与総額を押し上げた大きな要因が

「特別に支払われた給与」=「ボーナス」であったことがわかる。

3月の現金給与総額は

前年同月比 +0.0%

消費者物価上昇率は

前年同月比 +0.3%
(消費税増税の影響2.0%を除く)

で、実質所得は

前年同月比-0.3%

だったから、4月は3月に比べると改善を示した。



しかし、4月の実質賃金増加はボーナスの増加に支えられており、所得環境が
基調として改善しているとは言えない。

大企業を中心に企業収益が好調で、そのおこぼれを頂戴するかたちでボーナス
は増えているが、所定内給与は目立った増加を示していない。

2014年度はGDP実質成長率が-1.0%成長に落ち込んだ。

消費税大増税で日本経済は撃墜されたのである。

その日本経済が、辛うじて「奈落の底」に落ちるのを回避できたのは、

1.2015年度の消費税再増税を先送りしたこと

2.原油価格が急落して、日本経済に大きな所得増大効果が付与されたこと

によっている。

この二つの条件が整わなかったなら、日本経済は奈落の底に落ちていたはずで
ある。

原油価格が5割下落すると、日本の石油輸入代金が年間で約7兆円節約され
る。

原油価格急落は日本経済に7兆円減税と同等の経済効果を付与したのである。



『金利・為替・株価特報』

http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html

では、日本の株価見通しについて、以下のような予測を提示してきた。

2014年11月 年末にかけての「掉尾の一振」
         年初からの株価下落

2014年5月  株価上昇

2014年10月 株価中立

2015年2月  株価上昇

2015年5月  株価弱含み

2015年5月  株価上昇

2015年の株価上昇は、「原油安の配当」によるところが大きい。

原油安=所得増大=物価下落=金利低下=株価上昇

のメカニズムが作動したのである。

しかし、この構図は、原油価格が反転上昇すると逆流する。

2015年半ばにかけてのリスクとして、この点を強調し、5月7日執筆のレ
ポートで警戒スタンスを示した。

しかし、5月7日夜発表の米国雇用統計が市場心理の悪化を回避する内容とな
り、原油価格の反転が小康状態に移行する可能性が高まったため、5月中旬に
は株価見通しを「上昇」に回帰させた。



日本株価の上昇圧力が強い最大の背景は、企業収益の増大にある。この点を踏
まえると、日本株価が大幅に水準を切り上げてもおかしくはない。

この点の分析は『金利・為替・株価特報』に記述しているが、別の視点から捉
えると、この現実に日本経済の「歪み」がくっきりと浮かび上がっているとい
うこともできる。

それは、大資本だけが栄えて、一般労働者、末端労働者が切り棄てられている
という現実なのである。



2014年度は日本経済の実質GDP成長率が-1.0%に落ち込んだ。

不況への転落である。

日本経済新聞は執拗に

「消費税増税の影響軽微」

の報道を展開したが、現実はこの報道とかけ離れたものになった。

日本経済は消費税大増税不況に突入してしまったのである。

不況に突入しながら、政府が不況入りを正式に認めないことも問題であるし、
それを正確に報道しないメディアも問題である。

不況に突入すると、通常は株価が下落する。

しかし、日本株価は2014年5月以降は底堅い推移を示した。

2014年10月には日経平均株価が14500円水準に下落する局面も観察
されたが、その後は反転上昇した。

12月に実施された総選挙に合わせて株価が人為的に引き上げられたかのよう
な印象もあるが、強い影響を与えたのは、増税先送り決定と原油価格の急落
だった。

これ以外に、公的年金の日本株への投資比率引上げ、日銀による国債買入れ激
増策が発表されたことも影響した。

こうした「株価吊り上げ政策」が影響したのは事実であるが、より本質的な背
景は、企業収益の増大にある。



不況にもかかわらず、上場企業の企業収益は増益を維持したのだ。

このことから、企業収益と株価との関係を示すPER(株価収益率)などの指
標から判断すると、日本株価の上昇が肯定される状況が生み出されたのであ
る。

『金利・為替・株価特報』に記述しているように、こうした指標的判断=バ
リュエーション判断では、日本株価には、なお上昇余地が残されている。

もちろん、FRBの金融引締め、原油価格の上昇、ギリシャのデフォルト、な
どの重要リスクが存在することを忘れてはならないのだが、こうしたリスクが
拡大するまでは、日本株価が上方への水準修正圧力を受ける可能性は残されて
いる。



問題は、経済全体がマイナス成長=不況に陥っているのに、企業収益が増加す
るという現象が持つ意味である。

経済活動の結果生み出される果実は、「労働」と「資本」に分配される。

企業収益とは基本的に「資本への分配」を意味する。

経済全体の果実が縮小しているなかで、「資本への分配」が増大するというこ
とは、すなわち、「労働への分配」が切り詰められているということを意味す
る。

つまり、

「資本は栄えるが、労働は踏みつけにされる」

という現実が広がっているのである。



毎月勤労統計などが示す統計数値もこのことを裏付けている。

基調として労働者の所得は増加していない。

物価上昇率を差し引いた実質賃金は減少を続けているのだ。

ただし、大企業を中心に、ボーナスだけは増えている。

したがって、大企業に勤める正規労働者は企業収益増大の「おこぼれ」をボー
ナスという形で受け取れるのだが、それ以外の労働者は、この恩恵に浴するこ
ともなく、圧縮される「労働への分配」の影響で、困窮生活を強制されている
のだ。



安倍政権は

消費税を増税し、

法人税を減税し、

生涯派遣労働ですごさなければならない制度を創設し、

残業代ゼロの制度を創設している。

すべてに共通する方向は、

「資本に優しく、労働に厳しい」

というものである。

「強きを助け、弱きを挫く」

政策を推進している。



2014年の後半以降、実質賃金の減少に歯止めがかかってきた最大の背景
は、インフレ率の低下である。

安倍政権は黒田日銀と結託して、

「インフレ誘導」政策

を掲げて、量的金融緩和政策を推進してきた。

岩田規久男日銀副総裁は、2年後に消費者物価上昇率2%を実現できなけれ
ば、副総裁を辞任することを国会で明言したが、インフレ率上昇は実現しな
かった。

しかしながら、この政策失敗が、一般庶民にとっては朗報になった。

実質所得が辛うじてプラス数値を示し始めている最大の理由は、インフレ率低
下にあるのだ。

インフレが収束して、伸びない賃金でも実質所得が大幅減少する事態が回避さ
れている。



実は、インフレ誘導政策そのものが、「資本に優しく、労働に厳しい」政策
だったのである。

企業がインフレを熱望する最大の理由は、インフレによって、実質賃金を引き
下げることが可能になる点にある。

これは労働の側から見れば、実質所得が切り下げられることを意味する。

そもそも、安倍政権が黒田日銀を結託して推進した「インフレ誘導」政策その
ものが、「弱肉強食政策」の一環だったのである。

メディアが「アベノミクス」などとはやし立てて、安倍政権の経済政策を賛美
するが、「アベノミクス」の本質は「弱肉強食」推進であることを、私たちは
決して見落としてはならないのである。