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岡本喜八監督作品 今何処ベスト8(その1)

2010年04月13日 | ドラマ
ここ何ヶ月かかけて日本映画専門チャンネルで岡本喜八監督映画特集というのをやっていて、それをチェックしていまして。…大体観ました!(`・ω・´)いや、大体というのは何本かは録り逃してしまいまして(汗)でも、まあ大体、観たのでその中で「面白かった」作品をリストアップしてみようと思います。ベストから八本ほど。
録り逃したのは「結婚のすべて」(1958年)、「若い娘たち」(1958年)、「姿三四郎」(1977年)、「英霊たちの応援歌 最後の早慶戦」(1979年)の四本くらい?ちょっとデビューからの2本落としているのは痛いですけどね…orz まあそんな感じのゆる~いリストのオススメと思って下さい。しかし、僕なんかが言うまでもない事ですが、岡本喜八はいいいいですよお。この特集、「娯楽のアルチザン(職人)」と銘打たれていたのですけど本当にそう思う。戦後の邦画が、邦画として最も力に溢れていた時代の至宝がここにある。

■第1位 「殺人狂時代」(1967年/モノクロ)
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■あらすじ:溝呂木博士(天本英世)率いる“大日本人口調節委員会”は、積極的にこの国にとって無用な人間を抽出し、排除する事によって日本の人口を調節しようという秘密組織だ。溝呂木博士は自らが経営する精神病院の患者から優秀なキ○○イを選別して殺し屋に育て上げ一大殺人集団を形成している。…ただ“普通の殺人依頼”も請け負うらしく、謎のドイツ人が仕事の依頼の手始めと信頼性の確認として、無作為に選んだ3人の人間の殺しを彼らに依頼する。その標的の一人に選ばれたのが、犯罪心理学講師・桔梗信治(仲代達矢)。しかし、この時点において、桔梗信治が“人口調節委員会”を遥かにしのぐ“殺人職人”である事を知る者はいなかった!!

■評:昔観て「岡本喜八とは何者だ!?」と思ったのがこの一本。そのモダンな“殺人喜劇”は今観ても新しい…なんて陳腐な評ですが(汗)でも、ま、普段から「めちゃめちゃ面白いですよ!」とか語彙足らずな事を言っている僕が、そんなちょっと装飾された文言を添えたくなってしまう逸品です。殺人狂・溝呂木博士の脳内が現出したかのようなシュールな精神病院のセットから物語は始まり、次にカリカチュアなOPアニメーションが流れ、とにかくコミカルに、滑稽に展開して行くストーリーセンスが最高です。

また「仮面ライダー」の死神博士で有名な怪優・天本英世さんですが、僕はこの人の超はまり役は「キングコングの逆襲」のドクター・フーと、この「殺人狂時代」の溝呂木博士だと思っています。これに名優……というか僕はこの人も怪優だと思っているのですがw“何を考えているのか分からない目つき”が最高の仲代達矢さん。…主役なんですが、どこかにシリアル・キラーばりの怖さを醸し出していて、コミカルな展開に強烈なスパイスを与えています。僕からしてみると「フレディvsジェイソン」じゃないけどw“二大怪人の激突”って感じでたまらない一本になっています。


■第2位 「戦国野郎」(1963年/モノクロ)
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■あらすじ:時は戦国。武田信玄の忍者だった男、越智吉丹(加山雄三)は、冷酷非情な信玄の仕打ちに愛想をつかして抜け忍となり、その日から数多の武田忍者に命を狙われる毎日を過ごしていた。妙に気に入られて道連れとなった男、銅子播磨(中谷一郎)と共に馬借隊に身を隠した二人は、「俺を殺すと歴史が変わるぞ!」と言い放つ男、木下藤吉郎の手引きで、最新式の武器“種子島”300丁の運搬を引き受けた馬借隊に同道する事になる。“種子島”を巡って忍者、海賊と入り乱れる中で、自由に生きたい、一国一城も悪くないと夢を見る越智吉丹は冒険の果てに何を見るのか?

■評:実は「殺人狂時代」と並んでどっちを1位にするか迷いました。おそらく白黒作品に変に拒絶反応がない人なら誰でも楽しめる映画だと思います。「殺人狂時代」の持つコミックな設定と“毒”が単に僕好みだったという差なんですけどね。その意味ではキレイ過ぎる娯楽映画…なんて言い方もできそうですがw“反戦”、“反体制”はともかく“毒”の有無というのは岡本喜八映画において、それほど重要なファクターではないでしょう。通して観てみて、もっと色んな角度からエンターテインメントを追求している人だという事は改めて思いましたしね。

この言い方は順番が逆…という気もしますが、宮崎駿監督が継承してゆく東映動画の冒険活劇アニメに近い感覚もあるんですよね。爽やかで軽やか…そしてちょっと胡散臭い(?)加山雄三のヒーローと、爽やかで靭やか…そしてきりっと鋭い星由里子のヒロイン(まあ、普通にツンデレですわ(´・ω・`))、二人の冒険活劇。これに越智吉丹への復讐を誓う忍者、雀の三郎左。種子島の奪取を謀る武田忍軍。藤吉郎に騙されて仕返しを目録む村上水軍(海賊)、そして木下藤吉郎と、入り乱れるだけ入り乱れて98分でまとまっちゃってるんだから凄いなあ!としか言いようがないw

また、佐藤充さんの木下藤吉郎が、ドハマリでw人懐っこくて憎めない、しかし、抜け目も無い。僕のもっている豊臣秀吉のイメージにぴったりなんですよね。僕は佐藤慶さんの岩倉具視とか、滝田栄さんの清河八郎とか、日本史の歴史人物でこれはドハマリ!イメージにぴったり!(まあ、あくまで個人的にですが)と思ったキャストを頭の中にとどめているのですが、その中に入っているベスト・キャストだと思っています。


■第3位 「ブルークリスマス」(1978年/カラー)
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■あらすじ:“青い血”を巡る群像と政治ドラマ。1978年の京都国際科学者会議で、UFO及び宇宙人の存在の有無について予定外の演説した兵藤教授は、出席者の猛反発を受けて会場を追い出される。しかし、その後教授は、謎の男たちによって連れ去られてしまう。物語はそこからはじまる。その頃、世界各地でUFOの目撃情報が頻繁に上がり、また、UFOを見た人間は“青い血”に変わるという噂が流れていた。はじめの頃は人々から一笑に付されていた、その噂。しかし、その間にも“青い血”の人間は確かに存在し、その数は世界中で着実に増えつつあった…。

■評:岡本喜八監督が描いた唯一のSFですね。特撮を一切使わないSF映画とも言われています。これも観た当時、すごいインパクトを受けた…といか呆然自失となった記憶があります。冷静に考えれば過剰反応と言えば過剰反応なんですが、でも、事の大小を問わなければこういう何の説得の機会もなく、対象が圧殺されていく恐怖は、いろいろ思い当たる人も多いのではないかと思います。製作する映画の中に隙あらばというか…w岡本ブランドとして映画製作できるようになってからは、その中にほぼ必ず載せている“反権力”という思想の大元がそこには有ると思います。

個人的にクライマックスというか、一番インパクトを受けて恐怖したシーンは、連れ去られた兵藤教授(岡田英次)が帰ってきて、すっと挨拶して帽子をとるシーンなんですが…。“あれ”ですよね。“あれ”ほんと怖い(怖)。「ブルークリスマス」でアマゾン覗くと、一緒に買われている作品として「皇帝のいない八月」が出てくるのですが(…まあ、近似のテーマと言えばそうなのかな?)そっちでも“あれ”は出るんですよね?何でしょうね?両作品とも1978年製作か……なんか“あれ”流行っていたんですかね?(´・ω・`)


■第4位 「血と砂」(1965年/モノクロ)
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■あらすじ:昭和20年の北支戦線を、軍楽隊の少年兵たちが楽器を鳴らしながら行進していた。彼らは音楽学校の出身で、銃の撃ち方さえも知らないままに戦線に送られてきたのだった。配属された戦線の大隊長・佐久間(仲代達矢)は「自分たちの武器は楽器だけ」と演奏する少年たちから楽器を取り上げる。一方、彼らを最前線に送ることを反対して逆に少年たちと共に転属命令を受けてしまった曹長の小杉(三船敏郎)は、現地で佐久間を殴った懲罰的な命令として、少年兵たちを率い、戦線の要所・ヤキバ砦の奪還をするように言い渡される。小杉は少年兵たちに銃の撃ち方と生き残る心構えを教え、そして戦場に楽器を持って行く事を許可する。そして彼らはヤキバ砦へと向う!!

■評:岡本喜八監督の出世作とも言える「独立愚連隊」。それから「独立愚連隊西へ」(続編…ってわけでもないと思う)、「どぶ鼠作戦」それから「血と砂」を僕は勝手に繋げて“(岡本喜八の)北支戦線もの”って言い方をするのですが、「血と砂」はその完結編に当たる作品に位置づけています。そもそも小杉曹長の持っている設定が、弟の死(銃殺)の謎を追うというかなり「独立愚連隊」と被ったものを持っていて、その“独立愚連隊”が少年兵たちを率いた物語という感があります。そして一癖も二癖もあり、自由闊達に戦場から戦場を飛び回っていた“独立愚連隊”どもの最期が描かれている作品でもあります。

当然ながら…というかこの作品、もう一つの音楽的(?)作品「ジャズ大名」(1986年/カラー)と重ねて観てしまう作品でもありますね。幕末、明治維新の狭間で官軍幕軍お構いなしにジャズの演奏にふけるその物語もけっこう好きなんですけど。まあ……爆風暴風吹きすさぶ中で演奏を止めようとしない少年兵たちの、その心の在り方に胸打たれましたし……単純にこっちの方が泣けた…って事ではありますw

あらすじでは、佐久間大隊長を非情な命令を出す人として紹介していますが、単純によくいるような卑劣漢な上官ってワケでもなくって、途中で「作戦に支障がない限りの演奏は許す」と言ってくれるんですね。「夕焼小焼」の曲を最後の演奏として吹いた時、周りにいた兵士や慰安婦たちが故郷を思い出してむせび泣きながらその曲を聞き入ってしまうシーンの時なんですが。ここも好きですねえ…音楽の“強さ”を感じさせてくれるシーンです。


時間と文字数の関係で、今日はここまで。続きは後日更新します。(´・ω・`)

【岡本喜八監督作品 今何処ベスト8(その2)】
http://blog.goo.ne.jp/ldtsugane/e/faef9d09c1a13cf285387b71aab3b30e