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今何処(今の話の何処が面白いのかというと…)

マンガ、アニメ、特撮の感想ブログです。

今週の一番『神のみぞ知るセカイ』~攻略ヒロインの逆襲がぱない(`・ω・´)

2011年09月25日 | マンガ
【ハーレムメイカー】

【8月第3週:神のみぞ知るセカイ FLAG154「PLAY THE GAME」】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10524.html#703
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



『神のみぞ知るセカイ』(作・若木民喜)が、相当『面白く』なっています。『神のみぞ知るセカイ』は、悪魔の世界から逃げた6万匹の“駆魂”を回収するために、ゲームの達人にして“落とし神”様と呼ばれている桂木桂馬が選ばれる物語。現在は、地獄界の悪魔的復活を目論む旧悪魔たちに対抗するため、かつて旧悪魔を封じた“ユピテルの女神たち”の復活/再集結を目指し、以前、攻略したヒロインたちの中から“女神持ちの子”を火急に探し出さなくてはならないという展開。
元々、メタ・ラブコメとでもいうべき『物語』なのですが、逆手にとったと言えばいいのかラブコメ定番の展開などに逆説的なアプローチで持ち込み“場”を盛り上げていて、逆説的アプローチであるが故に、次の展開を読ませない『愉しさ』があります。
たとえば、今は、病気の桂馬のお見舞いに、ヒロインでどちらかが最後の女神を持っているはずの歩美とちひろの二人がやってきていて、これを鉢合わせないように制御しながら、二人の好感度を上げて女神の確認をしようとする桂馬…という展開なんですが、単純なラブコメだと定番かつ、まあ、色々と“やましい”状況と言えるのですが、桂馬にはその“やましい”状況を作り上げる“大義”があって、単純に桂馬が酷い奴とは言えない所がある。……いや、酷い奴なんですけど(汗)、酷さの種類がかなり違うという事です。

今週の一番『神のみぞ知るセカイ』攻略ヒロインの逆襲?
じゃあ、終わる為の構造ってなんなのか?って話は、一見、設定の発動、女神問題の緊急化、であるように観えるし、それがトリガーなのはそうなんですけど、より本質的には「攻略ヒロインの逆襲」であるように思えます。桂馬が女神問題を解決して、駆魂が封印され、地獄に平穏が戻る物語…なのではなく、女神設定を載せた攻略ヒロインたちが桂馬を助けて、駆魂が封印され、地獄に平穏が戻る物語だと言う事です。桂馬は自分が女神を見つけて、自分が解決する物語に思っているでしょうが。

以前の記事にも書いたのですが、女神を復活させるために攻略ヒロインの「気持ちを昂める」必要があって、桂馬はそれをゲームのクリア条件的にしか考えていないのでしょうけど、ヒロインたちの恋心を盗んでおいて、駆魂を封印し、旧悪魔の企みを阻止すれば、それでチャラになるかと言うと「そんなわけがない!!(`・ω・´)」のは明白ですw
女の子たちの気持ちをもてあそんだ桂馬くんは、(何らかの)責任を取る事を迫られるとは思うんですが……その角度で『神知る』を見た場合、桂馬のラブコメは、ほとんど全く…1ミリくらい?しか動き出していないという所が、これまたすごいw

メタ・ラブコメとか言っていますが、僕はこの物語をラブコメとして観ています。だからラブコメとしての結末を“期待”するのですが、しかしながらその物語構造を考えた場合、桂馬がそれを拒否する権利はあるというか、ラブコメ的結末を迎えずに物語を終わってもいい形でもあるんですよね。それは「ラブコメとしての緊張感」は相当なものになります。ラブコメとして終わってくれないかもしれないんですから。
要するに、今、誰が(どのヒロインが)桂馬を落とすのか?~落とし返すのか?~という焦点があるのですが、桂馬を逆ヒロインとして考えた場合、これほどの鋼鉄のヒロインは、そうはいないでしょう…という事です。ほとんど、誰かに落とされるイメージが持てないw

…ん~。ちょっと話がずれた気もしますね。現在の“女神探し編”の展開に入った所で、攻略ヒロインの逆襲~桂馬のセカイへの逆侵食~はイメージされたわけですが、その化学反応は予想以上というか、いや、まあ普通に楽しいなあと。
ヒロイン方向からセカイを観た場合、1対1で記憶、思い出が積み上げられていったわけですが、フェーズが変わる事によって、三角関係~どころか、桂馬がそれまでひっかけまくった他のヒロインたちを“見る”事になっている。桂馬のセカイに侵食する…という事はそういう事なんですが。まあ、がんばらないとね。



また、このフェーズに入ってからのハクアのヒロイン格の上がり方がすごいですね。これも書いておきたい。エルシィを昏睡したかのんの身替わりにして、端におき、ハクアを代わりのパートナーとして起用する。これをやって、動かされてしまうと「ハクアって“この為”に置かれていたヒロインだったのか!」と思ってしまう程、強力な“回り”を見せています。桂馬をサポートし、地獄界とも連絡をとり、独自に謎への迫りを見せている。三面六臂と言っていい、影日向の活躍を見せています。
“問題解決力”において、桂馬とパートナーを組んだ時のその親和性が素晴らしかったんですよね。考えてみると桂馬と一緒に問題に立ち向かうキャラ位置は、この子と、あとディアナくらいしかいない。いや、エルシィもいるんだけどちょっと置いておいて(汗)ディアナに、その全てを集約させるというのも選択なんですが、俯瞰としては並列構造のこの物語では、良いカードは分けられる方が望ましい。そうなるとハクアしかいない……と。(あと桂馬の行状全部知っていてそれを理解/許容できる立場なのも大きいですね)

この物語に対して「ずっと続ける構造」と「終わる為の構造」の二つの構造の話は以前からしていましたが、こうなってくると「続ける構造」のヒロインはエルシィで、「終わる構造」のヒロインはハクアだったのでは!?などと思えてきます。「終わる構造」のヒロインって基本、真ヒロインって事ですよw
いやぁ~!!?それは無いはずなんですけどね~?僕の見立てではハクアは序列3位の物語ヒロイン(攻略ヒロインの対置)のはずなんですが…。エルシィが逆襲しないと、ちょっとヤバイですよね。(どきどき)でも、そもそもエルシィに逆襲する気はあるのか?とか……いろいろ『愉しみ』です。


神のみぞ知るセカイ 14 OVA付特別版 (少年サンデーコミックス)
若木 民喜
小学館


今週の一番『銀の匙』~机の上じゃない学びと体験

2011年09月20日 | マンガ
【8月第2週:叢鋼(やしろ学)】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10523.html#702
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



『銀の匙』(作・荒川弘)を『愉楽』しく読んでいます。何か事情があったのか、受験勉強に集中しながらその進学が上手く行かず、農業高校に入学する事になった、八軒勇吾くんの“新たな体験”に満ちた物語。荒川先生は、大ヒットした『鋼の錬金術師』を描き終えた後、次はどんな物語を描くが注目されていたワケですが、ファンタジーとは全く違った毛色のこの連載は意外……という事もないですかね?wある意味「さもありなん」という感じというか、「鋼の錬金術師」らしい冷静さ?のようなものを感じたりもします。
しかし、この連載、パッと見、華がないのも確かな所で、少年サンデー的にはもっと他の期待を……ほら、『3×3アイズ』が当たったら、ウチでは『ブルーシード』を描いて欲しい?みたいな?期待をしていたと思うのですが、部数が落ちているという話の少年サンデーがそんな懐の深くっていいのかいな?(何か情報集めると、そも荒川先生がサンデーに連載決めたのは、ファンタジーと別のものをやれたからみたいですね)などと下らぬ勘ぐりをしてしまったりもしました。

しかし、連載が始まってみれば、些事はふっとぶというか「面白ければ全て善し」という感じです。そう、銀の匙だけに些事!!(`・ω・´)(←)
先ほども言ったように“華”…一見で多くのファンを巻き込むモノはほとんど無く~そもそも、主人公の八軒くん自身がモチベーションを喪失していてストーリーを牽引できる状態にない。~は、あるのですが、一人一人のキャラクターの描き、と、夫々のキャラに宿っている不思議なパワーの在り方~逆に周りの登場人物はモチベーションの塊みたいな奴が多い~が素晴らしく、楽しくページをめくれるんですよね。

何よりこの物語は机の上では得られない学びと体験に満ちている。それは試験勉強に明け暮れていたであろう八軒くんの知っている“学び”とは違うものであり、ひいてはインターネットの検索で得られる“情報”とも違った、“学び”と“悦び”があって。生きた学びって言うんですかね。それがこの物語の大きなウリのようです。
この週も、うっかり轢き殺しちゃった鹿を「美味しくいただいてしまおう」という話をしているのですが『銀の匙』では、こういう動物の命の取扱いに関した出来事が多い。…いや、正確には僕の方でインパクトを持って受け止めていて『銀の匙』というと、こういうエピソードという印象を持ってしまうという事ですね。

実は「鹿を解体してみるか?」というこのエピが起こった時、もう随分昔のマンガですが、西森博之先生の『今日から俺は!!』で、主人公の相棒・伊藤くんのお母さんが、子供の教育のために豚を連れてきて、息子さん(伊藤くん)に豚の息の根を止めさせて、食べさせようとする…というエピソードがあったのを思い出したりしていました。いやぁ、あの時は相当「どん引き」したので、かなり印象に残っています(汗)「私たちが食卓でお肉を口にするとはどういう事か?」って、伊藤くんのお母さん、それは大変な正論ですけど…「豚を絞めろ」は、“日常を守られた者”たちにとって、ハードル高過ぎ…って(汗)
このエピソード自体は、ヤンキーマンガで突き詰めるようなテーマでもなく、お母さんの暴走的なギャグとして処理せざるを得なかったわけですけど、“これ”が農業高校を舞台とした『銀の匙』では、もっと地続きのリアルとして描ける所がある。


家畜の獣医さん「(獣医になる夢を叶えるために必要なものを問われ)まあ、学力・学費はもちろんだなぁ、体力もいるね。あとは私の持論だけど…

殺れるかどうか。

特に経済動物を相手にしている家畜獣医なんて、しょっちゅう命の選択を迫られるしね。獣医になる夢を持って農大に入って、その選択を迫られた時に「やっぱりだめだ」ってなる人はやはりいるよ。だからと言って獣医になるのをあきらめた人がダメって事は無い。世の中にはどういう「殺せない・殺させたくない」ってやさしい人達が頑張っているから、助かってる命がたくさんあるんだ」

(『銀の匙』』第6話より)

(↑)この獣医さんのセリフは『銀の匙』がはじまって、一番印象に残っているセリフなんですが、いい言葉です。ここで生きる事と他の生命を奪う事の話を長々とするのは控えますが、そういう動物の生命を人間が扱うという最前線だから出てくる重さを感じずにはいられません。こんないいセリフを出されてしまうと、作品としての華がどうとか、サンデーの補強がどうとか、論う気は完全に失せてしまいますねw

ひいて言うと、八軒くんは受験勉強に明け暮れていた少年なワケですが、今の世の中で「受験勉強ばかりが全てではない」なんて話は、そんな大きな意味は持たない気もしていて~勿論、作品の中にそういうメッセージは含まれるでしょうが~さっきも言ったように、情報なら、ぱっと検索で得られてしまう、そういう速い?軽い?僕たちに対して、この『物語』は経験と実感の悦びを送って来ているように感じます。
あるいは、自分の生きる世界の実感…のようなものを回復させる『物語』を描こうという時、たとえば自分を「殺らなければ殺られる」状況に追い込む物語とか、けっこうあるんですが、いや~?まず、自分の食べているものから考えてみようよ?というか「とりあえず、自分で育てた豚を殺して食ってみたら?」というか、殺被殺のドギツさは、別に非日常じゃないよ?というか……………ん~何か、話がずれて来ている気もしますね?(汗)

まず、机の上では得られない体験による実感の悦びのようなものが『銀の匙』では描かれていると思うんです。生命を取り扱う事が多いのは、たまたまというか、たまたまでも無いかもしれませんが(どっちなんだ?)農業高校が舞台だから…なんでしょう。
でも、その上で、その舞台に対して真摯とでも言うか、「タマゴかけご飯うめえええええ!」とか「鹿、バラして食ったらうめえええええ!!」という殺して得られる悦びが明るく描かれているのを僕はとても気に入っています。


銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)
荒川 弘
小学館

『裸者と裸者 孤児部隊の永久世界戦争』~明日、その先を生き抜く闘い

2011年09月14日 | マンガ
裸者と裸者孤児部隊の世界永久戦争 1巻 (ヤングキングコミックス)
七竈 アンノ
少年画報社

アワーズで連載している『裸者と裸者』(原作・打海文三、漫画・七竈アンノ)を『愉楽しく』読んでいます。共産圏の崩壊に端を発した世界恐慌と大動乱により、日本に大量の難民が押し寄せ多民族の流入し、急激に治安が悪化する。結果、救国を掲げる自衛隊(多分)佐官グループがクーデーターを起こし首都を制圧、さらにアメリカ軍が介入によって、日本は内戦状態の長期化を経て勢力の細分化が進み………まあ、日本はひたすら内戦により戦闘、略奪、強姦する社会になって、かつ、どこの世界も似たり寄ったりで“助け”は期待できないという状態のようです。そんな世界で少年兵の孤児部隊を率いる事になった佐々木海人くんが「生き残る為の決断」を下して行く『物語』…かな?

ずっとずっと、殺し合いと、略奪と、強姦に関連した描写が続いてゆく話です。徹底的に“無秩序”が許された世界と言えます。僕はその“無秩序”の世界の中で、佐々木海人という主人公が「何を決めるか?」に興味をひかれます。
海人は自分の妹弟を養うために軍隊に入り(以前から拉致されて少年兵とかやっていたみたいですけど)生き残る為に手段を選ばない事を决めている人間だと思います。

実際に彼はマフィアと組んで、軍令に背いてドラッグを強奪し、それを転売します。また自分の分隊の家族が味方の部隊に攫われると、分隊を動かして、攫った隊長を殺します。味方殺しですね。
一方で、部隊には略奪や強姦を禁じて、自身もそれに手を染めません。百人以上、民間人の女を強姦したという外人部隊の隊長が「今は禁止した。当然、我々の部隊全員もだ。規律違反は銃殺する。なんだか…急に嫌になってな」って言うんですが、海人は「まったく正しいと思います。兵隊は戦争をするものです。民間人へのレイプやごうとうは、はんざい者がするものです」と応える。…でも、多分、海人は犯罪を沢山犯しているはず。軍令もやぶるし、自分の勝手な判断で人も沢山殺しているようです。

つまり、どうも海人の中で「やってもいい殺しと犯罪」と「やってはいけない殺しと犯罪」の区別があって、自分が「やってもいい犯罪と殺し」は罪とすら認識していないようなんですね。ほとんど両親に善悪を教わる時間すら無かったこの少年が「何かの区別」をつけて、そして行動している。
それを僕は“善悪”などと言う安っぽい標語で表したくはありません。…こう言うと誤解、あるいは反発を受けそうですが、多分、彼はこの無秩序が大勢を占める世界で、「やってもいい人殺し」と「やってはいけない人殺し」を、「やってもいい無法」と「やってはいけない無法」を必死に判断しているんですよ。

「何であれ人を殺していいはずがない」と信じる人には、あんまり伝わらない話かもしれませんけど。すみません、頭のネジが外れているのか、僕はこういう話がとても好きなんです。
海人が判断する「やってはいけない」事と言うのは「悪い事は悪い事なんだ!」なんてトートロジーの哲学問答な「やってはいけない」では、なく、自分が生き残って行くという「明日とその先につながらない事はやらない」…とそういうものに思えます。繰り返しますが、だから「明日とその先につながる殺し」はするのです。そうして、この物語はその判断をして生き行く海人に相応の出世の道を与えているようです。



逆に、無秩序が支配し、どんな無法も非道も「上手い事やれば」許されて行くであろう世界で、何かを律する事に意味はあるのか?という考え方もあります。生き残る事以外の事を気にする必要はないのではないか?実際に、強姦をやろうが、略奪をやろうが、おそらく生き残れる可能性はそんなに変わらないでしょう。(報復?いや、皆殺しちゃえばいいし)
実際に、子供を襲って強姦し、腹いせに家を焼き討ちしていたヤクザが海人に撃ち殺されるんですが「俺ァ、言い訳も泣き言も言わねェぞ!」と言って、そこそこカッコ良く、多分、本人は充分納得して死んで行くんですよね。無秩序が支配しているなら「そういう生き方」もまた有ると僕は思う。このヤクザは楽しく生き抜き、そして死んだのではないか。(多くの現代人は秩序の回復を想定して、そうはしないかもしれないけど、では、その回復の見込みが全くなかったら?どうする?)……でも、それは「今」を生き伸びても、「明日とその先」につながる判断ではないんですよね。…多分。



先ほど述べた百人以上民間人をレイプした外人部隊の隊長ですが、僕は彼が突然「罪の意識」にとらわれて、それを「やめた」ようには見えません。「今」を生きる事に長けた猛者が、罰が下るという意味で許される、許されない、を語るなら、これからさらに民間人を蹂躙しつづけても許され生き延びてしまうでしょう。
「なんだか急に嫌になった」と簡単な言い方ですが、この隊長は、それでは「明日とその先」にはつながらない事に気づいた……と、僕はそう解釈しています。

世界が“無秩序”だからと言って、自分が“無秩序”に順応すればそこから脱する事はできない。殺し合う強者になれても、殺し合う世界から脱する事はできない……という説明の仕方だと反発が少ないですかね?だから「誰を殺すか?」は、秩序だって判断するしかない。無秩序に殺してはいけない。その秩序は世界に既にないのだから、自分の中で作り持つしかない……という説明の仕方だと反発がありますかね?
この外人部隊の隊長は百人以上レイプしてそれ以上の民間人を無下に殺して、その事に気づいたのでしょう。だから、その経験もなく、既に同じ結論に達している海人の事を「見込む」のだと思います。他にもマフィアのボスや、女中隊長、なぜか海人を「見込む」人が、沢山出てきます。「なんで?都合良くない?」と思う人もいると思いますが、僕はそれが分かる気がするんです。確かに海人は「見込み」有ると思ってしまう。

断っておくと「明日とその先」につながる事を判断しても、生き残れるかどうか?は全く別問題なんですけどね。でも、味方と仲間に心を配り、民間人を襲うなどして心まで無秩序に納まってしまわない……それが生き残る度に、次はより生き残れる可能性を上げてゆく生き方、という理解の仕方でもいいかもしれませんが、ちょっとこの少年の生き残る闘いを観て行こうと思っています。

今週の一番『ハンザスカイ』能登良雅くんが良いです。

2011年09月11日 | マンガ
【8月第1週:ST&RS 第5歩 月面】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10522.html#700
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



『ハンザスカイ』(作・佐渡川準)の要陵学園の能登くんが、何か好きです。最強のキャラではないみたい(逆にそこもいい)なんですが、妙に飄々として、爽やかで、『ハンザスカイ』の中で一人だけ異質なオーラを放っている…気がしてしまいます。(´・ω・`)
『ハンザスカイ』は、元不良で、かつてはケンカに明け暮れていた半座龍之介くんが、高校入学で出会った女の子・藤木穂波にぶっ飛ばされた事が切っ掛けで空手部に入り、周囲に認められ、支えられながら空手道に邁進する『物語』。今、インターハイの地区大会をやっている所ですかね。



…で、その能登くんなんですが、基本的にはハンザの先輩で副将の財前くんのライバルとして置かれているようなんですけど……何て言うか、正直、財前を圧倒してしまうくらい、いいキャラなんですよ。財前の特徴が「能登をライバル視している奴」となってしまうくらい。実際、副将・財前の特徴づけとして能登を出しているのでしょうけどね。
初登場は、回想シーンで財前がピンチに陥った時、唐突に出てくる。財前が試合中に彼の事を思い出し(刹那の事でしょうけど)、その中の、かつて自分の得意技と頼りにするカウンターが全然通じなかった、彼のアドバイスから反撃の光明を得ている。その描きが妙にカッコいい。不意に裏の平手(ツッコミの平手)を差す能登に、財前は反射して軽く防御姿勢を取るのですが、気がつくとローキックも出していて「ほら、当たった」とやる。本の数ページ数コマで、すごくセンスのあるキャラとして描かれている。そうやって財前の気を惹いておいて、さっと転校してしまったとか、とても良い感じw
『ハンザスカイ』は他の対戦相手のキャラを『積む』のに、けっこう一話分くらいかけてしまうのですが、能登のこの短いページで説明しきってしまう“切れ味”の方が、キャラの描きとして印象に残るのだと思います。

まあ何より能登は、他のキャラと比べて素晴らしく暑っ苦しくないこれが一番大きいのだと思いますw爽やか!w能登はかなり口元の笑顔を絶やさないキャラで……他のキャラでもよく笑うキャラはいるんですけど、その人達って大抵「すごい対戦ができそうに感じた事の歓喜」で笑うというか、バトル・ホリックな笑いが多い。意図的にそう見せているのでしょうけど、恐い笑いなんですよね。
能登の先輩で、この人が当面最強という事らしい吹越という人がいて、最初、けっこう雰囲気が能登に似ていたのですけど、戦ってみるとこの人もかなり、いや、一番のバトル・ホリックな“笑い”をする人だという事が判明して、そうじゃない感じ~少なくともその笑いに恐さが無い感じ~の人は、やっぱり能登だけになっている。

能登の“笑い”は、人懐っこさの笑いで、その人柄からも人気があり、人付き合いがあんまり上手くなさそうな財前との対照化が図られている。バトル・ホリックな感覚は『ハンザスカイ』の共通フォーマットに観えるので、多分、能登にも“そういう面”があるとは思うんですが、それがあまり外に出ず、表面へらへら~とした雰囲気が“異彩”を放って観えて、僕の目によく止ります。

…まあ、実際の所は、財前と闘うと負けちゃいそうなんですけどね(そんなにこの伏線、長引かせるモノに観えないし)。財前のライバル視の話に一区切りついた後、彼がどう扱われて行くかも未知数ですし。
でも、暑っ苦しい、バトル・ホリックがベースの『ハンザスカイ』の中で、彼の放つ“異彩”は貴重に思えます。ハンザの世界観なんで暑っ苦しいのが中心になって行くのは当然で、それが持ち味だとも思うんですが、もう、二三、脇に“こういう感じ”のキャラが置かれると『ハンザスカイ』の深みになって行くような気がするんですよね。


ハンザスカイ 8 (少年チャンピオン・コミックス)
佐渡川 準
秋田書店

今週の一番『ANGEL VOICE』がツラ過ぎて読めないです…orz

2011年09月01日 | マンガ
【7月第4週:弱虫ペダル RIDE.169 ジェットコースターライド】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10521.html#699
【漫研】
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『ANGEL VOICE』(作・古谷野孝雄)が『面白い』ですね…。いや~、ほんっっと、ツラ過ぎて先が読めんです!(←)『エンジェルボイス』は……すご~く、ぶっちゃけた説明をすると『ルーキーズ』のサッカー版ですね。(`・ω・´)-3(←相当、ぶっちゃけた!)ケンカに明け暮れて荒んだサッカー部を立て直すために新任の監督・黒木がやってくる『物語』。その試合内容は、非常に骨太で誤魔化しがない…とでも言えばいいのか?特に奇抜な事はしないんですが「強いチームになるために近道はない」的に努力を積み上げて行き、その前提の説得力で試合を盛り上げて行く。
フィジカル、メンタル、タクティクスの見地を、包括的に描いて、非常に見応えがあります。一言で言うなら、当たり前の試合内容が素晴らしく面白い。

…ツラいのはそこじゃないんですよ。そこが『ルーキーズ』との一番大きな違いとも言えるんですが…。このサッカー部にはマネージャーの高畑舞ちゃんという子がいて……そんな、特に可愛いわけでもないんですけどね。なんかしゃくれだし。(´・ω・`)(←こら!)しかし、その生来の気っ風の良さと……これが、重要なんですが“歌声の良さ”で、妙にみんなをまとめあげていて…サッカー部の精神的支柱となっていた事は間違いない子です。

この子が最近……元々の予定だったんでしょうかね?手術不能の脳腫瘍になってしまって、今、入院しているんですが…これが、ツラくてたまらない。



普通の女子高生である舞ちゃんが、抗癌剤とか飲んで、髪の毛とか眉毛が抜け落ち始めたりしています。…『ゴッドハンド輝』でも、やっていたか?多分、やっていないよね?ってネタを容赦なく積み上げてゆくのはちょっと圧倒される所があります。近年の少年マンガではちょっと見られないような展開だと思います。
無論、その現実を目の当たりにしたサッカー部の少年たちは、舞の事を思いながら、サッカーの強いチームになろう、勝ち上がった行こうとするんですけどね。サッカーの内容そのものはリアリティを重視した作劇故に、施されたエッジと評してもいい。

舞はどうなってしまうのか…このマンガのタイトルが『ANGEL VOICE』である事、それが舞の“歌声”にかけてあるタイトルだと思われる事、そして、この『物語』が安易な奇跡など(少なくとも手術不能の脳腫瘍が突然、治った…みたいな事は)起きなさそうな事を考えて行くと、かなり暗澹たる気持ちになって来ますが……。
繰り返しますが、近年の週刊少年誌ではなかなか見られない展開です。最期まで見届け、ツラく『愉楽』しませてもらおうと思っています。


ANGEL VOICE 22 (少年チャンピオン・コミックス)
古谷野 孝雄
秋田書店

今週の一番『りびんぐでっど!』~本格連載ですが、この灰田さんの血色の良さはどうなんでしょう?

2011年08月27日 | マンガ
【7月第3週:銀の匙 第11話/夏の巻①】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10520.html#698
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



この週『りびんぐでっど!』(作・さと)の本格連載が開始しています。いろいろとクセの強い少年チャンピオンの中で、かなりの取っつきやすさ、読みやすさだったので、いずれ本格連載来るよな…と思っていたわけですが。まあ、よかった。(※ チャンピオンでは来ると思った本格連載が来なかった例もけっこうあるので…)
『りびんぐでっど』は、不慮の事故で死んでしまった灰田もなこさんが、何故かゾンビとして蘇り、自分にラブレターを送ってくれていた青山圭太くんの家に転がり込んで居候している『物語』。もなこさんは時々、人を襲って肉を貪る衝動にかられますが、生肉(豚、鳥、何でもいい)を与えておけば落ち着くみたいです。

…さて。「…え?肌の色これで行くの!?」…祝・本格連載の(↑)カラー表紙を観ていて、はっと気づいて、勝手に頭を抱えてしまったのですが、主人公の灰田もなこさんは、所謂、ゾンビで、通常の白黒原稿時は肌にトーンが入っていて“それ”が死体の色である事が表現されています。故に(↑)上の、あまりに血色のいい肌の色彩は、長らく『りびんぐでっど』を読んで来た者として、あまりに違和感があって一瞬誰か迷った程、驚きました。
そして、これはどうするのだろう?と。…この血色の良さで“腸”が飛び出たり、身体が真っ二つになったりされても、逆に困るというか生々しいというか……とにかく、可愛くいて良いのだけど、設定的に「うっ!」ってなるんですよね。生々しく思えて(汗)

まだ、単行本化もされていないのですが、ここに来て意外な落とし穴(?)があったと言う感じです。普通でいけばゾンビの肌の色は土気色~淡青~薄灰色~あたりでしょうか。(灰田さんだから灰色かな?)しかし、その色をそのまま選択すると、それはそれで「うっ!」となる。
…その色は怖い。想像するだけで。…ギリギリ、小麦色…と思わせるような茶色でいけば、何とかなるかな?とは思うんですが、これ、マンガ的にいうと予約色(?)というか日焼け色→運動部をやっていて運動神経の良い人→女の子ならボーイッシュ→と、完全確定とは言いませんが、かなりそういった“記号”が付加される気配があって、灰田さんのキャラにノイズが入りそうな気がします。…気にしすぎ?(汗)

『侵略!イカ娘』も二期を製作する程のヒットとなっている今、『りびんぐでっど!』はアニメ化まで、けっこう狙えると思っている素材なので、このカラー問題は(僕が勝手に問題視しているだけですが)早めにクリアしておいて欲しいものです。(`・ω・´)……まあ、この血色の良い色でもいいんですけどね。繰り返しますが、この子の首が飛んだら、飛んだで、ちょっと「うっ!」ってなりそう。…いや、むしろ、今の時流だとそれは追い風なのか!?(`・ω・´)(←)

今週の一番『最上の明医』~ザ・キング・オブ・ニートとか言っている場合じゃないアフリカ編

2011年08月20日 | マンガ
【7月第3週:BE BLUES 第24節 優希の涙、アンナの…】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10519.html#697
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



『最上の明医~ザ・キング・オブ・ニート~』(取材原作・入江謙三、漫画・橋口たかし)のアフリカ編が相当ハードでした。ちょっと、怖いくらい。(´・ω・`)
『最上の明医』は、医療マンガ『最上の命医』の続編で主人公は、前作の真摯な青年医師だった西條先生に変わって、最上義明といういい加減で自己中心的な性格(しかし、意外に仲間思い)な高校生になり、半ば引きこもりのニートと化していた生活から、幼馴染の伊達を救命措置で救った事がきっかけで医師を目指すようになる『物語』。今は、義明も伊達も医大生をやっていて、彼らを見込んだ医師たちの思惑もあってケニア・ナイロビの留学メンバーとなっています。

このアフリカ編、アフリカに入る前から「あちらでは医師はあらゆる不正に手を染め職務も怠慢…道具や設備も手入れ不足で、壊れているのが当たり前」とか「アフリカで生き残る秘訣」の話とかをしているし、アフリカについたらついたで「アフリカでは処女と交配すればHIV(エイズ)が治るという迷信があり、二歳児でもレイプされる」とか「スラム内では人口の三割以上がエイズだとも言われる」とかキツい話を繰り返す。
その上で、後はただただ、医療設備に劣悪さを描いて行く。白衣は汚れたものしかなく、日本から持ってきた私服の方がましだとか、手術室の窓にガラスが入っていないから手術中に羽虫が大量に入ってきたりとか、それでも、彼らは機転を利かせて子供の患者を救うんですけどね。その子たちが退院したら、部族間抗争に巻き込まれて死んじゃった…とかね。

もう、医者がどうにかできる状況を超えている話なんですよね。完全にアフリカの社会問題で。…もともとは義明は『今日から俺は!』の三橋を彷彿とさせるような、悪知恵が働くキャラで、いけすかない医者(教授)の鼻を明かして回るようなエピソードが主だったんですけど、それを転換したかのような、アフリカ編の“重さ”は驚きと困惑がありますね。
元から彼らも、患者の命に対しては(ある程度?)真面目な態度で臨んでいたのですけどね。日本のあらゆる意味で恵まれた余裕のある環境とは違う。むしろ、同じ物語の調子で描いているから、返ってそれが混乱の元になったりします。

この状況を“解決”するためには「誰かを治す」という医者の本分を超えた行為が必要ですし、誰かの鼻を明かせば済む問題でもない。医者として“解決”に携わろうと思ったら、これをきっかけにアフリカに長い歳月留まり、ケニアを医療から変えて行く展開など浮かびますが、そうなるとも思えませんし。まあ、結局、何も変えられずに日本に帰ってくるしかないのでしょうね。…ちょっと欝。

その後、義明たちの医療に携わる姿勢が変わったりするのか、あるいは、帰ってきたら何事もなくいつもの姿勢で医大生を続けて医者になるか……それは分かりませんけど、それでもアフリカ編をやったのは良かったかな?とも思っています。少年誌でこういう、(すぐには解決できない)どうにもならないものを観るのも悪くないです。作風を買えないためか、かなり重めの話も、(深刻になり過ぎずに)さらりと調子を変えずに語ってしまうのは、良い描きだったかな~?とも思ったりもします。


最上の明医~ザ・キング・オブ・ニート~ 6 (少年サンデーコミックス)
入江 謙三,橋口 たかし
小学館

今週の一番『BE BLUES』~身体にハンデを抱えたサッカーマンガを並べてみる。

2011年08月06日 | マンガ
【7月第2週:ST&RS 第1歩 メッセージ】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10518.html#696
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



『BE BLUES』(作・田中モトユキ)が相変わらず良いです……というか、龍ちゃん復活のこの試合は、ちょっとうっすら目に涙を浮かべて読んでいたりして、それは物語のまだ序盤で感激してしまっているって事なんですよね。まだ、はじまったばかりであろう物語でこんなに感激してしまっていいのか?とか思わず考えたりして。しかし、龍ちゃんがゴールを决めてゆくシーンの一つ一つがドラマチックで、良い描写に仕上がっていたんですよ。
『BE BLUES』は、将来を嘱望されるサッカー少年である一条龍ちゃんが、その才能と努力で「18歳で全日本の代表入り」という自らの計画を着実にこなして行く物語……かに見えたが、龍ちゃんは事故により大怪我を負い、長いリハビリから回復はしたものの、その煌めくような身体能力は失われてしう。全日本代表になるという彼の“計画”も失われてしまったのだろうか?しかし、それでも龍ちゃんはサッカーを目指すという物語。(↓)下記記事も参照ください。

今週の一番『BE BLUES』画とドラマの両輪が回る充実の物語

優れた才能を持ちながらその本来の能力を100%発揮できないという“状態”を抱えながらサッカーをプレイする…という物語は『キャプテン翼』(作・高橋陽一)の三杉くんを思い出しますね。(今はもう、治っているようですが)フィールドの貴公子と呼ばれ、翼、日向を超えるサッカーの才能を持ちながら心臓病のため限られた時間しかプレイできないという設定は、当時の少年スポーツマンガの様相を見渡してもかなり秀逸なものだったと思います。

けっこう他にも、こういうタイプのサッカーマンガってあったりして…



馬場民雄先生の『大介ゴール!』。1997年頃に少年チャンピオンで連載されていて、僕はこれ大好きだったんですよね。小学~中学までサッカーのやりすぎで膝に障害を持ってしまって、サッカーができなくなってしまった少年・山本大介くんが、マネージャーでもサッカーに関わりたいと弱小サッカー部のマネージャーとして入部し、限られた時間しかプレイできないけど再びフィールドに立つ物語。
これすごい好きだったんですよ!(`・ω・´)マネージャーの大介が練習でサッカーを観ているだけで、夢中になってわさわさ身体を動かしたり、ブツブツ独り言の指示を出したり。試合場を見ただけで、震えるように感動していたり。大介くんがどれだけサッカーが好きか伝わってきて。それが逆に、「悔しい」なんて素振りを全く見せない子なのだけど、サッカーができない事がどれだけ悔しいか逆に伝わってきて。

でも何故か、やがて、この大介くんの障害は治ってしまって、後半は普通にフィールドを駆けまわる大介くんの活躍を描いたまま終わって行くんですよね?(´・ω・`)……なんででしょうね?ものすごく残念で。こんなに美味しいネタ、そして『物語』としての特徴をなんで手放してしまったのか?まったく謎です。



あるいは草場道輝先生の『ファンタジスタ』なんかもそうですね。1999年頃に少年サンデーで連載されていたサッカーマンガなんですが、こちらは主人公の坂本轍平は十全なのですが、実姉にして監督の琴音姉ちゃんが高校時代に肺を患って、優れた才能を持ち坂本轍平の能力に多大な貢献をしながらも、彼女自身は女子サッカーの道をあきらめて指導者となっています。最初の頃の話で、彼女が男子生徒に混じってフィールドに立つと、やっぱりすぎんですが、途中で肺に来て止まってしまう…というシーンがあって、やはり胸につまるものがある。(そういえば『ホイッスル』では女子部員の小島さんという子が……ま、こっちは今はいいかw)

ん…しかし、こちらは、その設定を無くすという事はなかったのですが、途中から轍平は世界の舞台に旅立ってしまって、この琴音姉ちゃんの元で優勝を目指すという展開はなくなってしまったんですよね?(´・ω・`)当時(今も?)サッカーマンガは世界を射程に入れた展開が求められるって事かもしれませんが、こんなに美味しいネタをなんで“放置”してしまうのか?まったく謎です。
…病気持ちというのを僕が大きく捉え過ぎてるのかなあ?何ていうか連載はじまった時点で「美少女の宗像仁が少年にサッカー教えていた」とでも言うんでしょうか?(汗)そこまではいかないとしても、ある意味で、そういう“女神”の悔しさを昇華するようなドラマが観えた気がしたんですよね。

ちょうど田中モトユキ先生の前作の『都立あおい坂高校野球部』が、子供の頃野球を教えてもらった少年たちが潰れそうな野球部を率いる女監督の元に集うという物語なんですが、これに単純に恩義や憧れ(美人監督なんで)だけじゃなくって、ある種の“時限装置”を持たせると、少年たちの…というより『受け手』の「勝つ!」というモチベーションが全然変わってくる事は想像できると思います。…そこらへんなんで止めちゃうんでしょうね?最初からやらないなら分かるのですが、はじめておいて、途中からすっと手を引いてしまった感じがします。
ああ、むしろ今、少年チャンピオンで連載している『エンジェルボイス』(作・古谷野孝雄)は女子マネージャーが脳の病気にかかっていて、完全に“そういう展開”になっていますね。うん、ああいう感じです。…………ああいう感じですけど、(『エンジェルボイス』を読めば分かりますが)相当、欝な展開である事も認めます(汗)長期連載を目指すメジャー誌で、ああいう重いのはキツいって事かなあ…。(いや『ファンタジスタ』は、あそこまで重くなくて、イケたと思いますけど)

あと『振り向くな君は』(作・安田剛士)の主人公が喘息持ちですね。こちらは、その設定が大きく機能する前に終わってしまいましたが、あまり強烈に前面には出していなかったので、物語の後半で動かして行く設計だったかな?と思ったりしています。(↓)ちょっと直接の関係はないですが記事書いたりしています。

今週の一番『振り向くな君は』~GK千手くんは素晴らしいキャラだった。

まあ、今、いろいろ「まったく謎です」などと書いたのですが、落ち着いて考えを巡らせてみると“病気持ち”という設定は、けっこう展開の幅を限定的にさせる上に、テーマとしての縛りも“強く”なってしまうのかもしれません。単純に言えば、限られた時間しかフィールドに立てない大介…という形で試合運びを構成しても、あまり展開に幅を持たせられないというか「その設定が強すぎて」どれも似たような試合に思えてしまう……という事はあるのかな?と。
その意味では「そういう重いキャラをライバルに置く」という三杉くんの選択は相当上手かったと言えそうです。あるいは、ちょっとずらして琴音姉ちゃんや、あるいは『エンジェルボイス』の女子マネ・高畑は、そこも匙加減で、キツいと言えばキツいのかな?

『BE BLUES』がこれらの作品の系譜に当てはまるかというと多分、当てはまらない(`・ω・´)………え?じゃあ、何でこんな作品を書き綴ったのかって?いや(汗)一度、こういう類型をまとめておきたくって……記事に書き起こすと後で思い出しやすいし(汗)
正確に言うと『BE BLUES』の今後の展開次第という事なんですけどね。ここ数週……それからあとしばらくの展開は、この系譜の“カタルシス”に当たるとは思われます。龍ちゃんの復活劇が演出されている今は、ハンデへのリベンジというか回復の物語のフェーズに思えます。

しかし、『BE BLUES』自体がそういうハンデを如何に処すか?という物語には見えない。…むしろ、龍ちゃんが自分の身体が「そういうもの」という事で新たにデータを更新してそれに基づいて“計画”の組み直しをしています、あくまで全日本代表になる事を目指して。そこに、上に述べたような“悔しさ”は微塵も感じられない。龍ちゃんはもう気にしていないし、小学生の時のセンスをどうこう言ってもしょうがない所がある。今後、龍ちゃんは自分の身体機能の調整がとれれば、かつてと同じようなプレイに近づいて行くでしょうけど、それは「小学生時代を取り戻した」のではなく、明らかに「努力により新たな自分を得た」のですよね。

それはとても小気味よい形ではあるんですけど……「このネタここでしまうの?」とも思うんです(汗)やっぱりね「怪我を克服して復活」は盛り上がるネタなんですよね。それは、この後、アイデアが続かないと序盤のここが一番盛り上がって、あとは他のサッカーマンガと同じような感じのマンガ~みたいな感じになってしまうかもしれない。まあ、それでも充分なのかもしれませんが、僕はこの物語はもっと行けるように感じていまして…。
やっぱ、ある程度このネタはひっぱりたい。kichiさんの指摘で「その為に、もう一人の子、(怪我でバレリーナを挫折している)アンナちゃんを出している」というのがありますし、それはそうかな?と思えます。しかし、変に前に出すと長い欝展開が続き勝ちになって、それは辛くもあるんですよね(個人的にはそれでも構わないけど)。……そうすると、ちょっとこのネタは眠らせて、後で“再発”させるかな?…いや?それはあざとすぎる?う~ん(考)

とまれ『BE BLUES』には、『大介ゴール!』や『ファンタジスタ』で感じた、最初に設定されたハンデに対する、なんとな~く未昇華?な感じの部分を昇華まで持って行ってもらいたい気持ちもあります。…さっき言ったように本筋とは言えなそうでもあるんですけどね。やって欲しいですねえ。このネタ実装させたのだから。


BE BLUES!~青になれ~ 1 (少年サンデーコミックス)
田中 モトユキ
小学館

ファンタジスタ 1 (小学館文庫 くG 1)
草場 道輝
小学館

振り向くな君は(1) (少年マガジンコミックス)
安田 剛士
講談社

ANGEL VOICE 1 (少年チャンピオン・コミックス)
古谷野 孝雄
秋田書店


今週の一番『英雄企画ハーフマン』~本格連載を望むが…そんな装備で大丈夫か?→大丈夫だ。問題ない!

2011年08月02日 | マンガ
【7月第1週:べるぜバブ バブ113 女の戦い】
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【漫研】
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哲弘先生の新連載『英雄企画ハーフマン』が『面白』かったのですが、う~ん、3週で終わってしまいましたね?(チャンピオンではよくある事)いや、残念です。けっこう楽しかったのですが……これ、本格連載ありますよね?
僕は、哲弘先生のマンガって好きなんですけどね。こう……なんか説明が難しいのですよ(汗)以前は、ヤクザの孫娘で何故かガントレットを装着して男の子を守るナイトになる女の子な~『椿ナイトクラブ』とか、微妙(?)な条件を満たさないと発動しない様々な妖刀を巡るバトル~『ムラマサ』とか描いていたのですが、いずれも何とも言えない変態マンガでして……基本展開はgdgdというか……なんで、そういう展開になるのか一瞬、こちらの思考が止まってしまう感覚があって……。
でもね。これが、はまると何とも言えない可笑しみというか麻薬性を持ってくる。(´・ω・`) 『漫研』ではけっこうウケて注目されているのですけど、他の人に「…?どこが面白いのか、さっぱり分からない」とか言われても、そんな不思議はないと言うか…それどころか、どう説明したものか考えこんでしまう…そんな作家さんなんですよね。(←誉める気あるのか)

…あ、wikipedia読んでみたら『椿ナイトクラブ』の説明がけっこう哲弘先生のワールドの???という雰囲気を醸し出しているので、ちょっと引用しておきます。
暴力団血゛極組(ぢごくぐみ)の組長の孫娘椿五十六が、祖父を正義の騎士団団長と勘違いして自分も祖父のような立派な騎士になると決め、幼なじみの三島茜を守るために騎士団(ナイトクラブ)を結成して他の学校のナイトクラブを相手に暴れ回るドタバタコメディー。話が進むにつれて主要キャラクターの殆どが変態、もしくは常軌を逸した天然思考ということが判明し、一部で絶大な人気を得ている。舞台の入曽市のモデルは埼玉県狭山市入曽地区である。

(Wikipedia『椿ナイトクラブ』より)

…うん。その哲弘先生が今回、連載した『英雄企画ハーフマン』はどういう話かというと……幼馴染で、お金持の女の子が、主人公の男の子・一狼くんの「ヒーローになる!」という夢をかなえてあげるために、ヒーローのコスチュームから、悪の組織から、怪人から、必殺技から全部作ってそろえてあげるという、ユーフォリア・ヒーローマンガなんですが……なんだろうwその哲弘先生らしからぬ(失礼!)イカした設定は?wって。(いや『ムラマサ』の設定もそんなに悪くなかったと思っていますが…まあ、その話は別の機会に…)



いや!はっきり言ってこの設定、相当いいと思うんですよね!!(↑)上の画像の女の子がヒロインの“猫宮琥恵”ちゃんなんですが、表でも「金持ちで、性格よくて、勉強もできる」というパーフェクト幼馴染ヒロインで、その上で、裏でも一狼くんの子供な夢をかなえるために、悪の組織からヒーローのコスチュームまで全部7年かけて準備してくれて、しかも、悪の女幹部まで引き受けてくれるんですよ!!?それがバレると一狼くんをがっかりさせるから、バレないように、ずっと隠し続けるつもりでいるんですよ?
強すぎる!!設定だけでヒロイン・ゲージ振りきれてますよ!!この子!!?

この設定、出すとこ出せば萌えブタ全盛のこの時代、深夜の覇権アニメまで狙えますよ!!(`・ω・´)…と、言い過ぎかもしれませんが!そんだけ良い設定の最後の一押しが、後ろ半分は尻丸出しのヒーロー!!半裸のヒーロー!!“ハーフマン”って!?…この「どうしてこうなった!?」感が哲弘先生の真骨頂というか、もうちょっと何とかならなかったのか?感が、もう何か…wwwいや、たまんないっすww

そんなワケで本格連載になって欲しいなあ…と願いつつも、実際にはじまってみると、やっぱり哲弘先生のマンガで、好きな人は好きぐらいの感じで、そのまま頃合いで終わるような気もするなあ……と心配つつも期待もしてしまう。そんなgdgdな話でした。


椿ナイトクラブ 1 (少年チャンピオン・コミックス)
哲弘
秋田書店

ムラマサ 1 (少年チャンピオン・コミックス)
哲弘
秋田書店


今週の一番『振り向くな君は』~GK千手くんは素晴らしいキャラだった。

2011年07月16日 | マンガ
【6月第4週:英雄企画ハーフマン 第1話 変身!ハーフマン】
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【漫研】
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千手「割れるものなら割ってみろ、俺はここしばらく…自分の後ろでネットが揺れるのを見ていない」

『振り向くな君は』(作・安田剛士)が、ここの所すごく良くって、特に椿原実業のスーパーGK・千手くんのキャラの立ち方がハンパなかったです。『振り向くな君は』は、喘息持ちのサッカー少年・成神蹴治と、蹴治の父・龍にサッカーを教わった犬神かおるの二人の天才が廃部寸前だった弱小の高校サッカー部に入る『物語』。最初はサッカー部が校長に意地悪されていたりしたんですが、最近はそういう事もなくなりました。

それで、千手くんは、対戦相手(椿原実業)のGKというワケなんですが、登場の仕方がなかなか凝っていて、最初、公園でサッカーをやって小遣い稼ぎしている小学生として登場するんですね。…いや、小学生というのは蹴治くんたちの誤解で(でも多分、千手くんは対戦相手にも小学生と思わせていた気がするけど)、本当は高校生だったという事が後から分かります。要するに身長がすご~く低い少年なんですね。
しかし、蹴治のチームメイトで急造のGK近藤くんは、彼を小学生と思いつつも、その卓絶した守備能力に惚れ込んで弟子入りをする。そうして大会が始まって勝ち進むと、相手チームの小学生だったはずの千手くんがいると。そんな展開です。

…これ、ある意味では主人公の一人・蹴治くんの対比キャラとして千住くんは在ります。元々、蹴治くんがチンチクリンの子どもっぽいキャラとして描かれていて、強敵のチームには一人は空気の違う変人(?)がいる…ような感じにキャラが組まれています。えっと、ほら『県立海空高校野球部員山下たろ~くん』(作・こせきこうじ)とか、チンチクリンのたろ~くんに合わせて、対戦校のチームにも一人くらいチンチクリンの奴がいたりしたじゃないですか?あるいは『ガッツ乱平』(作・百里あきら)の乱平がチンチクリンなら、九鬼くんもチビ…みたいな?そんな感じの構図なんでしょうね。

しかし、元々、フィジカルの強さが重要な要素であるサッカーにおいて守備陣のしかもGKの身長が小学生なみというのは相当、致命的なハンデと思われるんですが…サッカーよく知りませんが。そのハンデを物ともしない、否、そのハンデを抱えていたからこそ、自分はここまで強くなれたという、千手くん可愛い顔をしてそういう自信の塊のような堂々たるサッカー・プレイヤーとして描かれています。
実際、自分より身長があって、おそらく対戦相手になる事も想像はしたであろう近藤に、惜しみなく自分の技術とメンタルの制御を叩き込んで行くシーンは、あとで彼が対戦相手と解った時にすっげぇカッコいいものとして映ります。



そうして彼自身のプレイスタイルは「そもそもシュートを打たせない」という形に集約される。的確に守備陣に指示を出してシュートを防ぐ、仮に無理に打ってきたとしてもシュートコースを限定しているから、楽々とセーブする…というファインプレイを必要としない形で試合を運んでゆく。
それらのタクティクスは、蜘蛛の巣の網のようと比喩されていたんですが、それを崩し抜けてきた相手に対しては卓絶した反応でゴールを割らせない。スーパーセーブしてしまう。個人技もまるで引けをとらないGKで、犬神くんのPKをがっちり読みきってキャッチしてしまうシーンとか、本当にカッコ良かったです。可愛い顔して。(´・ω・`)

また、あまり多くは語られていないのですが、廃部寸前だったサッカー部を主人公の蹴治たちが息を吹き返させたように、千手くんは千手くんで、ダメだったサッカー部を立て直したドラマがあるようなんですが~千手くんは、そもそも強豪校のセレクションは通れないキャラ…というのがまた良い~そこらへんの断片描写もぐっと来ます。
千手くんの話に終始しましたが、今後、対戦相手にこんなキャラがいろいろ出てくるかと思うと『振り向くな君は』は、すごい愉しみです……と、書いて締めたい所だったんですが…………実は、この時点でこの連載が終了してしまっている事が確認されています。………やあ~なんでぇ~???これから面白くなりそうだったのに~!!打ち切りですか~。

……ちょっとだけ、後から言える“結果論”の話をさせてもらうと、千住くんが現れるまで、どことなくキャラクターが均一な感じというか……「画面が詰まらない」感覚があったんですよね。……黒い髪の子が多くてベタが強過ぎというか…?キャラを描き分けているのは、分かるんですが…どうも均一な感じ拭えない、ページが目に止まらない。“損”をしている。
今、僕は千手くんを持ち上げているのですけど、その前に登場していて、おそらく千手くん以上のライバルとして設置されている“黒夜くん”という天才プレイヤーがいるんですが、彼のキャラ造形も決して悪くないんですよね。いい感じなんです。黒夜くんは「理屈上は千手くんに引けをとらない」キャラのはずなんですが、結果として僕が「おっ?」と思ったのは「チビで、髪が白い、千手くん」でした。引けをとらないなんて言いましたが、ビジュアル含めたキャラの完成度は千手くんの方がやはり上だと思います。
…いや、でも、そういう掴みにならない程、黒夜くんが精度の悪いキャラかというとそんな事は全く思わないので……結局、難しいなあ~?って話にしかならないのですけどね。

まあ、でも単行本は出るでしょうから、気になった人は買ってみて黒夜くんや、千手くん、その他のキャラの造形の違いなんかを観ていってみても『面白い』かもしれません。“終わり”には辿り着けなかった物語ですけど、そんなに悪くない。色々観るべき所があるように思います。


振り向くな君は(3) (少年マガジンコミックス)
安田 剛士
講談社