自転車操業日記

自転車と組版ソフトについての備忘録。

ベルギー 奇想の系譜

2017-09-10 22:08:41 | 泡沫
Bunkamuraの美術館に行ったのって何年ぶりだろう……。えらく遠く感じた。

「聖アントニウスの誘惑」が有名なボシュと,その流れをくむ作品が集められた冒頭から,ブリューゲル,象徴派を経て現代に至る水脈を概観する美術展。
フランドル派のへんてこな幻想絵画はとにかくかわいくておもしろいし,現代の作品もよかった。そして,作品をごく間近に見られる! 大当たり。
幻想絵画の画面のあちこちにこれでもかと描き混まれてた奇妙な造形群は,諸星大二郎の「栞と紙魚子」のシリーズにちょこまか出てくるおかしな生きもの?の源流かと思う。ようするに,あたしたちは合成生物が好きなのだろう。
つるりとした卵や蒸留器,つるりとはしてないけど魚に対する執着がちょっと不思議。
クノップフはほとんど前に見たものばかりだったけど,久しぶりに象徴派の作品を間近に見られてうれしかった。ノップス,ヌンクが気に入った。

昔は,ある作家とか流派とか,あるいは著名な美術館の収蔵柵をごっそりまとめて展示するような企画展が多かったと思う。クノップフのは,そこで見ている。最近の,あるテーマを設定して,それにそって作品を集めて展示するようなスタイルものは,企画者の興味が見えるようで楽しい。作品に沿えてあったりするプレートも,企画者の意図がはっきりした作品解説がなされることが多いような気がするけど,ここのはわりと古典的な感じがした。どっちも好きだからいいんだけど。

展示の後半,クノップフが出てくるあたりから,ねこの声が聞こえるのが不思議だった。ヌンク,デルヴォー,マグリットを経て現代作家の作品を見て,最後の展示がその理由だった。「猫へのインタビュー」と題された録音で,ブロータールスというひとが絵画作品について飼いねこに問いかけて,それに対してねこが鳴いている,というもの。その声が聞こえているのだった。作家とねこはリアルタイムで「会話」しているのか,ねこの声をサンプリングしておいて合成したものなのかは,わからない。ただ,ご飯ちょうだいとか,何か不満がある,というような感じの泣き方ではないように感じた。
ベルギーのねこはおしゃべりなのだろうか。


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