玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

グロテスクな未来

2007年04月12日 | 代理出産問題
ニュースで向井亜紀氏と高田延彦氏の記者会見を見た。

…わけがわからない。彼らはいったいどういうつもりなんだろう。

asahi.com:代理出産の向井亜紀さん夫妻が会見 日本国籍取得を断念
 タレントの向井亜紀さん(42)が11日、米国人に代理出産してもらった双子の男児(3)との法律上の親子関係を認めなかった3月の最高裁決定の後、初めて記者会見をした。決定について「正直がっかり」と悔しさをにじませた。男児らの出生届を出すことを断念し、日本国籍は取得せずに米国籍のまま育てていくことを明らかにした。

 会見には、夫の元プロレスラー、高田延彦さん(45)も同席した。

 最高裁決定後、東京法務局から「2週間以内に男児の出生届を出さないと、今後日本国籍を与える機会はない」との連絡があり、11日が期限とされたという。

 しかし、向井さん側は出生届を出さなかった。法務局が、届け出の父親欄に高田さん、母親欄に代理出産した米国人女性を記入するよう指示してきたからだ。

 指示に従って「母親」とすれば、訴えられる可能性がある。代理出産契約で、米国人女性には男児の親としての権利義務を一切負わせないよう取り決めているためだ。

 また、最高裁決定の補足意見で、法的な親子関係を成立させるための選択肢として勧められた「特別養子縁組」をするには、子の「実の親」の同意が原則必要になり、やはり契約が壁となる。「高いハードルを感じている」と嘆いた。

 男児は米国人として外国人登録し、この春から幼稚園に通い始めている。このため、具体的には、特別養子縁組のうち外国人を養子とする「国際特別養子縁組」が考えられる。この場合、米国法上は実の親の向井さん夫妻が「同意者」になり、同時に申請者にもなるという不自然な形をとって申し立てることを余儀なくされる。

 「最高裁が特別養子縁組を認める余地はあると言った以上、申し立ては通るのではないか」とみる裁判官もいるが、家裁が認めるかどうかは、申し立ててみないとわからない。

 補足意見について、向井さんは「調べてみると、大雑把な提言だった」と落胆を隠さない。特別養子縁組の期限は、向井さんの場合、双子の男児が8歳になるまでだ。

 向井さんは「時間と労力をかけたのに得るものが少ない『社会科見学』だった」と裁判を振り返り、「代理出産に関する立法にあたっては、経験者の意思を聞いてほしい」と話した。


彼らが子供たちの戸籍取得にどれほどこだわっているのか全然わからない。
こだわってないのなら、最初から出生届を出す必要がない。
本当に必要だと信じるのなら、代理母を説得して、それがかなわなければ訴えられる覚悟で特別養子縁組に向けて突き進めばいい。
だが、向井氏と高田氏はそのどちらも選ばなかった。結局のところ覚悟も考えもなく行き当たりばったりの行動をしていただけとしか思えない。

高田夫妻のことはともかく、マスコミの生ぬるく甘ったるい報道姿勢は謎だ。
柳沢厚労相の「産む機械」失言にあれほどいきりたったマスコミ・フェミニスト・左翼・野党が代理出産について微温的なのはなぜだろう。高田夫妻への個人攻撃は控えるべきだが、一般論としての代理出産について「依頼する側」の論理・意見・感情ばかりを取り上げて「依頼を引き受ける側」の事情・負担・リスクを無視するのは全くおかしい。
契約社員問題を報道するのに「派遣会社」「派遣先」の声ばかりを聞いて契約社員自身の苦しい状況を伝えなければ欠陥報道だろう。
依頼する側と引き受ける側が逆の場合を想像してみればいい。「アメリカ人の金持ち夫婦が貧しい日本人女性に代理出産を依頼した」場合に、果たしてどれほどの日本人が美談と思うだろうか。

美辞麗句を剥ぎ取れば、代理出産とは社会的・経済的強者が弱い立場の女性を「産む機械」として利用することに他ならない。
私はそんなグロテスクな未来を決して望まない。