牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

粗飼料への異物の混入

2008-11-16 17:46:15 | 飼料
写真はコンテナで導入しているオーツヘイ
  

肥育育成用粗飼料には、オーストラリア産のオーツヘイを長年導入して利用している。
2~3年前まで、同梱包の中に、石や針金など色々な異物が混入していた。
「こんな石を買ったつもりはない」と、クレームを付けたものである。
重たいものでは、1kg を超すオージー産の赤い石が混入していた。
クレームには、いつの時でも決まったように「現地へ混入させないよう連絡しておきます」であるが、途切れることなく、混入してくる。
最近は、それらの混入が以前ほど多くなくなったが、先日屋外に変わったものが放り出されていた。
見たことのないもので、もしかしたら「つちのこ?」か!と上気したくなるような生き物の屍である。
直径6~7cmで、長さが30数cmの寸胴な生き物で、つちのこを疑ったほどであったが、結局、トカゲの類であった。
即座に納入業者へ連絡したら、ブルータンという舌が紫色をしたトカゲの一種とのことであった。
現地の圃場には、よく見かけるトカゲのようである。
同時に、野生生物であるからには、伝染性疾患に繋がる病原菌等の有無が気がかりであったので、業者には、現地での梱包作業に当たっては細心の注意を払うよう指示した。
海外においても畜舎周りを徘徊する動物であれば、保菌等を疑わなくてはならない。
防疫に関しては、トカゲといえども安閑とは出来ないと焼却処分した。
粗飼料や稲ワラなどの輸入には、慎重な対策が講じなければならない。

稲わらの保管

2008-11-04 22:48:35 | 飼料


今年から国産稲わらの回収を始めた。
久しぶりに気象条件に振り回される回収シーズンを経験した。
年間必要量の20%程度であるが、その回収に満足している。
晴天日が続けば問題はないが、目前に雨の予測があれば、気持ちが焦る。
仕舞いには、秋雨に打たれ、それでも多少無理して回収する。
幸いにも、新築牛舎が建ったばかりで、まだ半分は空いていて助かった。
日当たりの良い牛舎のフロアーに並べて、真新しい換気扇を回転させることによって、思いの外、良好に乾燥した。
乾ききったものは、当初の保存用の場所に移動する。
初年度の回収が漸く終わった。

写真の稲わらは、縦横の大きさが1mのもので、耕種農家がベールして大型トラックで5台ほど送り届けたものである。
最初の3台は、乾燥度が悪く、雨天日には発酵熱を出して黴びた。
しかし、写真のようにパレットに載せて並べていたら、黴びも飛び、うまく乾いている。
これなら、1年後には安心して給与できそうである。

リタイヤしたある獣医師によれば、最近は、牛糞を厩肥のまま散撒することは無くなったから、肝テツの心配はないと言う。
考えてみれば、牛を飼う農家も近在には見あたらず、堆肥は、数回発酵させて完熟させたものを、利用して貰っている。
このところのわらの回収で廻る水田沿いの側溝では、ヒメモノアラガイが列を成していた。
それを見ると、なかなか安心して肝テツの心配を払拭できない。
時期のくるを見て給与を開始せざるを得ないと思う。

それにしても、稲わらを回収するのには、かなりの労力の負担が伴うが、わらの保管場所に苦慮する。
輸入わらであれば、1月分ずつ導入すればいい。
一括回収となれば、その分を短期に回収するために、これまでの約10倍のスペースが必要となる。
新たなわら小屋の算段が待ち受けている。

輸入わらと国産稲わら

2008-11-02 18:08:16 | 飼料


稲わらの肥育牛に対する粗飼料としての効果については、再々記述してきた。
ウイートストローやバーリーストローなど麦わらとの違いについても述べた。
牛の肥育用粗飼料としての稲わらは、含まれる硬い繊維にその効果があるようである。
麦わらは、繊維がもろく、稲わらに比しルーメン内での消化速度が速いため、同内での貯留時間が短い。
この貯留時間が長ければ、ルーメン内のアンモニア生成と利用、脂肪酸の生産が多く、体調維持や体脂肪の蓄積に好影響を及ぼす。
稲わらを短期間給与したのでは、それらの効果が現れるものではなく、粗飼料として稲わらに切り替えてから、500日も600日も同様な給与と摂取が行われることがその結果に繋がる。
稲わらは、国内産がコンバインの普及により、飼料としての回収が出来なくなり、その結果、外国産稲わらや麦わらを導入するに至った。
ところが、最近、国産稲わらの導入が増加しつつある。
コンバインで細切して落下させていたものが、70cm前後で直径15~20cm束に結束して落下できるようになり、それを天日で乾かした上で、カッティングロールベーラーで3等分に切断したものをロール状にベールして取り込めるようになった。
これは、常々、国産わらの1/4もあれば、肥育用粗飼料はまかなえると主張し続けた甲斐があり、漸く農水省が重い腰を上げ、国産稲らの活用を促すようになり、その効果が上がりつつある。
鹿児島県内では、かなり以前から、良い牛肉作りを目指し、水田農家とタイアップして、国産稲わらの取り込みを実施している関係者たちがいる。
何故国産わらに固執するようになったかである。
それは、口蹄疫の汚染国云々とか、最近では中国における農薬の使用に関する詳細が伝わってこないことから、安全性を確かなものへの思いが、国産稲わらの利用拡大に繋がってきたものだろうと判断している。
もう一つある。
それは、稲わらに棲みついている納豆菌の効果を期待してのことがある。
人に対して「納豆菌は稲ワラに多く棲みついている細菌で、ビタミンB2の含有量が高いため、免疫力を高め、腸を刺激して消化活動を活発にし、腸内の不敗菌の活動を抑制することによって、発ガン物質などの有害物質を減少させるなどの働きがある」と言われている。
この効果は、牛についても同様で、納豆菌を含んだ稲わらを摂取することにより、ビタミンB2は体内粘膜を強くしたり、腸内消化を活発にするなどにより、順調な生育や増体効果が期待でき、上記の稲わら効果とも相まって、肉量肉質ともに期待できるのであろうことが予測できる。
前述したが、外国産わらは、加熱処理しなければ輸入できない。
輸入わらは加熱により、納豆菌が死滅するために、国産わらの利用が拡大したとも言われている。
納豆菌効果について、予測の域を超えていない。
具体的効果について、教えて貰いたいと期待している。

地元産稲わらの回収

2008-09-17 20:06:01 | 飼料


肥育関係者の間では、国産稲わらを回収して肥育用の粗飼料にする傾向が一段と進んでいるようである。
地域によっては、水田所有者の水稲栽培を肩代わりして、稲わらを確保するというケースも増加しているという。
これは、食の安全安心という信頼を得ることと、稲わらの給与が肥育牛の発育や肉質改善に関係があると睨んだ末に国産稲わらの利用が増加しているようである。
輸入稲わらの場合は、その大多数が中国産のようであるが、その産地における口蹄疫や害虫などと、農薬の残存などに信頼感が今一得られていないことがある。
これらの問題については、農水省の取り組みでは、問題視するものは無いということで、輸入が再開されている。
中国産稲わらは、輸出前に加熱処理を行うことが義務づけられている。
そのため、その後導入した輸入稲わらは、梱包の内外が変色していた。
加熱後の乾燥処理に問題が有るようである。
肥育現場では、加熱したわらは、納豆菌などが死滅しているから、良質の肉が出来ないとする考えがあるらしい。
しかし、これまで輸入わらのみで肥育しているが、年々A5率は高くなっている。

その様なこともあるが、本来国内で多量に生産される稲わらを飼料として利用しないこと事態が、実に不自然な状況である。
そのことに、農水省も漸く耳を傾け、地元産稲わらの回収や堆肥との交換などを支援する事業が開始されるようになった。
地元自治体との連携で、この秋から新わらを写真にあるカッティングロールベーラーを導入して、回収を開始した。
ロールベールの大きさは、直径50cm、長さ70cmで良く乾燥したものは、14~15kgの重さである。
わらは、べーラー作業時に長さ20~25cmにカッティングされるので、牛への給餌に手頃である。
この地は、10~20ha程度の小さな水田が多いため、若干作業効率に問題はあるが、10ha当たり約20個で300kgを30~40分で回収している。
面積が広ければ、回収率は上がると考えている。
いずれにしても天候次第の作業である。
この回収は、年々その面積を拡大する方向で取り組んでいる。
輸入わらとの品質は段違いに高品質である。
肝てつの寄生を考えて来夏から給餌させる予定であるが、その効果のほどを見守っていきたい。
何時になるかは不明であるが、その違いを報告したいと考えている。

自家生産粗飼料で留意すること

2008-08-28 23:07:47 | 飼料


自家生産した粗飼料を給与する場合、繁殖雌牛では、生草のまま与えているケースがある。
特に西南暖地など、冬季でも刈り取りが可能な地域では、牧草を保存するサイロやロールベール調整時に必要な機器類の調達費用を考慮すると、青刈りのまま給与した方が、低コストに繋がるようである。
徳之島で200頭の繁殖を目指している牧場でも青刈り給与方式であった。
最近一般的になってきたのは、ロールベールによる貯蔵方式である。
前述のヒエの記述で書き漏らしたことがある。
それは、圃場の条件によるが、硝酸塩中毒を引き起こす例があることである。
この中毒は、硝酸塩含量の多い草を牛などに与えたために起こる中毒症状であるが、血液が濃くなり、やがてはチョコレート状になり、血液の流れが止まり、起立不能状態の症状となる。
この硝酸塩中毒は、草種、生育ステージ、刈り取り時の天候、圃場の土壌条件等が拘わっている。
窒素分の濃厚な厩肥等を多量施肥した土壌等では、栽培作物の硝酸塩含量が高くなる。
また、長雨が続いた直後に刈り取った場合、その含量が極端に増加している場合がある。
筆者等は以前、スーダングラスやたでなどの雑草が多量に含まれている若いトウモロコシを雨上がりに刈り取り、繁殖育成雌牛に給与した途端、頭部を下向けにして前肢が立てなくなる症状が出た。
つまり、同症状であった。
メチレンブルーを希釈して静注した途端、回復した経験がある。
牧草等の硝酸塩含量は、出穂し種子が実ると減少するが、栄養分が高い時期に硝酸塩含量も高い。
硝酸塩含量は、青刈り時が最も高いが、サイレージや乾草調整後も残存するケースがある。
ヒエのように濃緑色の草は、要注意であるが、種子が熟した後であれば、ほぼ大丈夫である。
また、牛を繋牧させる場合、同症が多発した例が過去にあった。
繋牧時にも、これらの条件を留意して実施すべきである。




夏場の草作りはヒエに限る

2008-08-26 19:08:13 | 飼料


以前勤務していた牧場の話である。
50~60頭の繁殖雌牛から子牛生産して、肥育までを行う牧場である。
凡そ10ha程度の圃場で粗飼料生産を行い、繁殖牛と仔牛には、年間を通じてそのロールベール製のヘイレージを飽食させている。
考えてみれば、今時珍しいやり方であるが、飼料高騰の今後を考慮する時、功を奏した粗飼料の自給生産なのかも知れない。
ここでの粗飼料生産は、その全てがロールベールによる貯蔵方式である。
5月の連休が終わると、イタリアンライグラスを収穫し、その1月後に2番刈りをし、さらに約1月後に3番刈りを行って収穫する。
イタリアンライグラスは夏場には、萎凋し枯れるため、そのまま放置し、それを待っていたかのように、ヒエが勢いづく。
それを9月になれば収穫してベールするが、結構の収穫量である。
ヒエを収穫後は、堆肥を散幡して次年用のイタリアンライグラスを播種する。
また一部には、春まきのスーダングラスを播種し、夏場に2~3回刈り取りベールし、最後はヒエ頼みである。
ヒエを粗飼料にすることを、怠け者のすることと遠吠えする御仁もあったが、イタリアンライグラスよりも嗜好性が高く、粗飼料としてりっぱに利用できるのである。
ひえの最もの長所は、肥料が不要であることである。
それと、何処の土壌も肥料過多であると新聞で拝読するが、その点、ヒエは過多となった土壌を綺麗に掃除してくれるのである。
牛は、ヒエの種子も大好物のようである。
もう、15年以上同様の栽培体系を継続している。