すっかりお待たせしました!!
Harryがたくさん出てくるWinchester Collegeの最新ビデオの紹介です。
全体15分ほどですが、冒頭からいきなり動くCantores Episcopiです!(曲目は、'Tears in Heaven')
Cantoresの映像を初公開しながら、700年の伝統をもつWinchester Collegeの優れた音楽教育のアウトラインを紹介する、素晴らしいビデオに仕上がっています。
そのうち、わずか3分間ほどではありますが(最後の方です)、Harryのインタビューや、先生のピアノに合わせてHarryが歌っているところ、そのうえグラウンドで汗を流すスポーツマンHarryの姿などもありまして、ファンとしてはこんなに嬉しいプレゼントはありません。
まずはさっそく、15分を通してご覧ください。
(すぐ開かない場合は、左側の右向き三角印をクリックしてください。それから、下の方にある、▽のマークにカーソルを当てて動かすと、好きなところに飛べます。手っ取り早くHarryを見たい方は、最後の1/4ほどのところに飛んでください!)
少しばかり、見どころを説明しましょう。
まず最初に、このMusic School という言葉について明確にしておきたいのですが・・・あえて日本語にあするなら、「音楽校舎」あるいは「音楽棟」ということになるかと思います。このschoolは、ここでは学校とか学部とかいう抽象概念ではなく、建物そのものを意味します(a place where people go to learn a particular subject or skill)。個人レッスン用の小教室から、中・大教室、ホール、レコーディングスタジオなどが集合する、Win Collの教育の中核となる校舎です。学校のメインビルディングとは道路を隔てたちょっと離れた場所に、2004年に建設された、Win Collが誇る最新施設だそうです(注1)。
先生の説明によれば・・・・このような恵まれた環境で、Win Collの学生たちは、単位を取得するためという義務感からではなく、自らの純粋な情熱で、自主的、積極的にレッスンを受け、自己表現としての音楽を楽しんでいるわけですが、そのレッスンの選択範囲は非常に広く、可能な限り学生たちの興味と意欲に応えられるよう、学校側も配慮を行っています。例えば、誰かがバグパイプを学びたいというと、さっそく学外から講師をみつけてきてレッスンが組まれ、そうするとさらにほかの学生も集まってくる、という具合です。個々の活動はもちろん、アンサンブル、管弦楽団、吹奏楽団、交響楽団としての大規模な練習やコンサートも大変充実し、きわめて高いレベルを維持しています(注2)。
ところで、ものすごいピアノの早弾きを披露しているふわふわブロンドでハスキーボイスの青年は、あのThomas Jesty君ですね~。
また、演奏技術だけにとどまらず、作曲を含めた総合的な音楽プロデュースの教育も行われており、本格的なレコーディングスタジオでミキシングなどを先生から習っている場面もあります。作曲は、CantoresのメンバーであるWillが得意らしくて、彼がコンピュータのソフトを駆使して画面で楽譜を書いていく様子が興味深いです。
Samが参加しているジャズバンド?の紹介の後、Chapel Choirが出てきて、それに続き、私服の合唱団が紹介されてアフリカへ演奏旅行をしたなどという話をしていますが、これは、St. Michael's Choirといいまして、Quiristerとしてのお勤めを終え変声期に入ったボーイズのための合唱団です(最後列にHugoもいますよ)。ここで2年歌ったのち、オーディションに合格した生徒のみが、Chapel Choirのテノール/バスとして、最高学年まで過ごすことができるのです(注3)。
そして、このビデオも終盤になり、再びCantores Episcopiが歌います('Short People') 。
ここで、いよいよ、Harryに焦点が当てられます!彼の歌については、最後に説明しますので、先にインタビューの内容からお話ししましょう。
まずは、卒業後の進路について話してくれます。
「僕は、オックスフォード大学への進学が決まっていて、専攻は音楽です。でも入学前にgap yearを取る予定です。将来の計画としては、歌手か・・・そうですね・・・指揮者になれればと思っていますが、もしどちらもだめなら、いつでも別の道を考えます。」 (I'm taking a gap year and then going to Oxford to read music. And I mean, I think I'll give it a go as a singer or maybe a conductor, and then I can always try something else if it all fails, but that's my plan at the moment.)(注4)
先生の話を挟んで、さらに・・・
「チャペルでたくさんのコンサートに出る機会に恵まれ、また音楽だけでなく、他の学科やスポーツも同様に充実していたWinchesterでの日々は、僕にとっていつまでも忘れられないものになるでしょう。」 (My lasting memory of Winchester will be the opportunity to be able to perform a huge number of concerts and in Chapel, but also to be able to combine it with sporting and academic lives.) スポーツマンとしても学校生活を大いに謳歌した彼のたくましい姿が、こうして記録されているのは、嬉しいものです(注5)。
先生はこんなことを言っています。
「本校からは、毎年いろんなコンクールで優勝者を輩出し、またオックスフォード大学やケンブリッジ大学へ、Choral ScholarやOrgan Scholarとして大勢送り込むという輝かしい実績をもっています。」(つまり、Harryは、ボーイ時代にChorister of the Yearとなり、ソロCDも録音し、オックスフォードのChoral Scholarに合格という、まさにWin Collの模範生として、出ているわけですね・・・)
先生は続けて力説します。
「しかし、そのような競争や
winnerの数が問題なのではありません。それに、王立音楽大学や、オックスブリッジに音楽奨学生として入る力はありながらも、法学や経済学といったほかの分野を職業とすることを選ぶ学生もたくさんいます。大切なことは、皆、本学で学んだ演奏のテクニックや音楽を理解し鑑賞する力を、生涯にわたって持ち続ける、ということなのです。音楽は、楽しいときも苦しいときもいつも彼らのそばにあって、慰めとなり、励ましてくれるから・・・。これから船出しなければならない人生という航海に、美しい彩りを与えてくれるからです。」このボールド部分、こんな美しい英語で話していました(私の訳がお粗末すぎて申し訳ないです):
The important thing is that they take their musical skills and appreciation through life with them, because it feeds them through good times and bad; it expresses the colours of life through which they are enevitably going to travel.
発音がまた素敵。今では英国民の3%しか話さなく(話せなく)なったといわれる、正統派のUpper Middleのアクセント(received pronunciation: RP)です。
そして、この先生の言葉にかぶさるように、Harryの清楚な歌声が聞こえてきます!彼が歌っているのは、Ralph Vaughan Williamsの歌曲集'The House of Life'(『生命の家』)中の’Silent Noon'というラブソングです。残念ながら部分的にしか聴けないので(先生、どいてぇ・・・というのが正直なところ!)、Ian Bostridge の歌で全体および歌詞をご確認ください。
Ian Bostridge- Silent Noon
タイトルの通り、静かで繊細な曲で、Harryの声質にぴったりだと思います。 なお、この曲を含むBostridge のCD 'The English Songbook も大変お薦めですよ。
ずいぶん長くなってしまいましたが、ここまでお付き合いくださってありがとうございました。Cantoresの最新CDを買ってくださった皆様にお送りした解説書中にも既に記載した通り、Harryは、アメリカとオーストラリアで半年ずつgap yearを満喫して大きく成長し、いよいよこの秋よりオックスフォード大学生となります。今後も皆さんと共に応援を続けたいと思っています。
注釈の説明)
注1) このあたりのMusic Shool自体に関する情報は、昨年春に実際に見学された紗瑠璃さんより直接教えていただいたものです。同様に、Science School などあるそうです。
注2) 以前のインタビュー記事中でも、音楽教育の充実ぶりについて触れましたが、学校の専任の音楽教員は7名で、あと60名を超える外部からの客員教員(プロの音楽家)がいます。驚くべきは、seven hundred music lessons a weekという授業量!(1コマ40分)。これがすべて完全個人レッスンで行われており、生徒一人あたり週2回同じ先生のレッスンを受けられるとのことです。
注3) 学生たちは、何かとオーディションを受けなければなりません。たとえば、Cantoresに参加するにもちゃんとオーディションがあり、技術的なレベルはもちろんのこと、一般科目を含む普段の授業が終わってから、かなり夜遅くまで行うハードな練習についていけるかどうか、という点なども考慮されるらしいです。
注4) I'll give it a go as a singer ・・・というのはネイティブらしい英語ですね!
give it a go で「やってみる」というイディオムとして丸憶えしておくといいかもしれません。OALDで、goの名詞のところを見てみると2番目のエントリーに次のように:
[countable] (British English) (also try North American English, British English) an attempt at doing something
I doubt if he'll listen to advice from me, but I'll give it a go (= I'll try but I don't think I will succeed).
この定義からすると、どこか自信がないときに出る言葉なのでしょうか?!ともかく、Harryとしては、「今のところは、歌手か指揮者という線でチャレンジしてみるかーーいつでも軌道修正できるしね、という気持ちでいます」ということでしょう。
注5) Win Collのfootballのことを特に’Winkies'と呼びます。HarryのWinkies熱もハンパではないらしです。
なお、Harryのインタビュー部分の英語の聞き取りについては、YukoさんとMrs Judy Severにお手伝いいただきました。
PC環境の問題で、視聴にはちょっと時間がかかりましたが、ご紹介くださった動画、視聴できました。
丁寧な解説と邦訳で理解できました、ありがとうございます。
いやあ、それにしても中高一貫校のなかで行われている音楽教育や活動の一部にしては、その充実ぶりというか濃密さに、なんていう豊かさなのだろう・・と驚きました。
harry君、この秋から大学生ですね。
ちらっと聴こえた歌に進学先のカレッジで次はどんな歌声を披露してくれるのかな、これからの活動が楽しみになりました。
またお邪魔します!
中高一貫教育による濃密で行き届いた超ハイレベル音楽教育!現在、全学年の生徒数670名に対し教員数訳100名ということで、徹底した個人指導もできるのでしょうねーーー
Harryは大学でもきっとクロースハーモニーグループにも入ると思いますし、新たな環境でまた何をやらかしてくれるか?!楽しみです。
それにしてもこれだけの詳しい解説、keikoさんならではのものですね。
ありがとうございます。
私の解説はいつもいつも長くてくどいだけで、どうも話が散漫になってしまうのですが、まっ、いまどきYouTube「ですら」見られないこの貴重なビデオについて、熱く語る人間が日本に一人くらいいてもいいだろうと思って。。
Harryはgap yearを終え、今年からオックスフォード大生なのですね・・・!これからのHarryの活躍が楽しみですね!