Boy Choir Magazine インタビュー 'Harry Sever: Award Winning Soloist'の後半です。
BCM: 声楽以外にもいろんな音楽活動をされていますが今一番力を入れていることは何ですか?また将来はどのような計画がありますか?
HS: 今ピアノをやっています。学校のコンサートで、半年前にはべートーベンのソナタを弾きましたし、あと数週間後も、シューマンの「蝶々」を弾くことになっています。それと、指揮の勉強も始めたんですよ。今指揮するということがどういうことか、少しずつ分かってきたところなんです。楽しいですねー。半年後ですけど、さっそく2曲指揮することになっています。初めての挑戦なので、わくわくです。
学校のアナウンスメントより:
Wednesday 28 February
9.30 pm School
Corelli: Concerto Grosso op. 6 no.1
Handel: Concerto Grosso op. 6 no.1
Concert by Archangel Players
Michael Poon, Ryota Ichinose violins
William Cole cello
Harry Sever conductor ← しっかり載っています
BCM: ピアノのレッスンはいつから始めたのですか?
HS: 4つのときだったと思います。先生についてグレードも取得しました。最近またあらためてよく練習するようになって、テクニックの習得にも力を入れています。
BCM: 実は私も5人の子供の父親なので<わかるのですが>・・・。君のお母さんも4歳ころから音楽をやっておられたというようなお話を聞いているので。。。。
HS: ええ、母は子供たち皆が音楽をやることをとても望んでいますね。で、父も、若いときコリスターだったと言うんですが・・・すごく上手だったって・・・実際に最近歌うのを聞いたんですけど・・わからないなあ。
BCM: おやおや....(笑)!お母さんのJudyさんは、素敵な方ですよね。このインタビューのどこかでJudyさんのことにちょっと触れたいと思っていたので<ご両親のことを持ち出すことになったのだけど>、<変な話の流れになっちゃったら>、ごめんなさいね。
HS: だいじょうぶですよ。
BCM: もし、人生が何でも望みどおりになるとしたら・・・そうですね、もしここに魔法使いみたいなのが現れて「3つの願い事を叶えてあげよう」と言われたら、何を望みますか?
HS: やっぱりオペラハウスでの仕事がしたいですね。オペラで指揮と歌を。去年1つオペラに参加したんですが、全体の雰囲気がリラックスしててかつエキサイティングで・・出演者皆さん素晴らしい人たちだったし・・・だからもっとやりたいなって。
BCM: 同年代の少年たちと同じように、CDを集めたりしておられると思いますが、どういうものを聴いているのですか?
HS: もちろんまずクラシックですけど、クラシックばかりじゃないですよ。イギリスのポップミュージックバンドとかも聴きます。例えば、Libertines・・Pete Dohertyが最初に居たグループですね。それと、Coldplayは3枚持ってますが、どれもすごくいいです。あとアメリカのRed Hot Chili Peppersとかも好きなんですよ。
この3つのロックグループは、私は全然聴いたことがありません。「レッチリ」が好きだというのは、もう10歳ころから?言っていたし、彼の好きな音楽なので、私もちょっとCDを買ってみようかと思っているところです。
BCM: そうなんですか!<話は変わりますが>、ステージで歌ったりレコーディングするたびに、フレッシュな気分でよりよい演奏にするため、どういうことを心がけていますか?レコーディングのときはどうやって気持ちを集中させるのですか。
HS: 確かに、<同じ作品を>何度もやっているとマンネリ化してくるということがあるかもしれませんが、音楽というものはもともと、様々な演奏法(歌唱法)で表現されることを意図して作られていますからね・・・同じ曲でも、歌うたびに異なる表情となるように工夫するということが、また面白いんですよ。同じ曲でも何かしら変化をつけることで、より洗練された仕上がりになりますからね。
BCM: バイオグラフィーによると、演劇や映画やオペラもお好きということで、ひょっとして将来、舞台の上や大きなスクリーンの中に君の姿が観られるようになるかも?
HS: いいことを言ってくださるんですね。実は数カ月後に学校の舞台でTennessee WilliamsのNot About Nightingales という劇をするんですが、僕も出るんですよ!
「ナイチンゲールではなく」
劇団昴という劇団のサイト(http://www.bekkoame.ne.jp/~darts/nightingales/ng010.html/)によると、刑務所内での人間模様を描いた作品で、暴力的なシーンとかもあるとのこと。こういうのに強いて出たいというのは、とにかく今までとは違った面白いことなら何でもやってみたいという好奇心なのでしょうか。
BCM: テネシー・ウイリアムズって・・アメリカンの劇をですか?!
HS: ええ、だから完全なアメリカンの発音ができるよう今一生懸命練習しているんですよ。Deep Southのアクセント(南部なまり)ですよね・・・だから・・
BCM: あっ、僕実は、南部出身なんだけどなあ・・コーチしてあげようか。
HS: えっ、そうなんですか。お願いしようかな。<演劇といえば>、来年も、友人と共同で演劇の監督(演出?)をやるつもりなんです。Caretakerあたりをやろうと思って・・
The Caretaker: 「管理人」イギリスの劇作家 ハロルド・ピンターHarold Pinterによる舞台劇で、2人の若者と1人の老人という3人の登場人物の間で繰り広げられる難解な「不条理劇」とのことで、これに出演するのではなくて、監督(演出)をやるとはまたHarryらしいというか、私にはとてもついていけないというか・・・
BCM: 映画もよく観ますよね?
HS: ええ。
BCM: 最近観た映画の中で、こういうのに俳優として出演してみたいなと思ったものは?
HS: (TVドラマのシリーズで)24とかよく観てるんですけど・・・あの主役やってみたいなと・・・アクションヒーローだから・・こんなこと言うと、やっぱりまだ子供だなと思われるかもしれないんですけど。
これも私は全然観たことがないが、イギリスでも大人気のアメリカのTVドラマとのことで、「1秒ごとに事件は展開するこれまでのTVシリーズの破る前代未聞のアクション・サスペンス」とある。YouTubeで少し観られるらしい。
BCM: そんなことないよ、Harry。
HS: アクション・ヒーローを演じたいっていうと、だいたい子供だって言われるじゃないですか。
このあたり、しきりにchildishと思われないかと気にしています。まだ15歳の誕生日前なのに15歳として話をしているところなど併せて考えてみても、今は早く大人になりたいということで頭がいっぱいのようです。私には子どもがいないのでよくわかりませんが、、、このくらいの年齢の男の子はそんなものなのでしょうね。
BCM: でも、そういうふうにTVの中のヒーローになってみたいってのは、<年齢に関係なく>誰でも思うことじゃないのかな。
HS: ええ、主役のジャック・バウアーは、万能なんです。何でも出来るよう訓練されている。そういうすごい役だから、やってみたいなあって。
BCM: それから、君は旅行もお好きとのことですが、これまで行ったところで一番よかったのはどこでしたか?
HS: 毎年ケニアに家族や友人と行くんですよ。両親が結婚式を挙げたのがケニアだったものですからね。太陽が降り注いで、リラックスできるし、すごくいいところです。ことしも年末から行くので今から楽しみにしています。
BCM: それ以外に行くとしたら・・・アメリカ、例えばフロリダとかも候補地になりますか?
HS: もちろん。学校の聖歌隊で去年ニューヨークにも行きましたからね。僕は初めてだったので、素晴らしい経験になりました。ニューヨークは父も何度か行っていて、好きなところだと言っています。僕もまた行きたいです。イギリスとは全然違いますから。
BCM: 15歳の少年としては、将来やりたいことが山のようにあると思います。僕も君の年頃はいろいろ考えていましたからね。Harry君が将来一番やりたいことはどういうことでしょうか。
HS: やっぱり演劇ですね。今までいろんな劇を観て感動しましたから、自分でもっとやってみたいなと思っています。そして、今まで音楽を通して多くの素晴らしい出会いがあったので、これからももっと沢山の素晴らしい人たちと出会いたいです。例えば、去年ロンドンの「プロムス」に出ているドミンゴを観に行ったんですけど・・彼のような人に会えれば感動的だろうなって思うんですよ。
Proms: ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで毎年夏に行われるクラシックの音楽祭。
BCM: 君は勿論音楽が大好きなわけですけど、それ以外に夢中になれるものといえば、何があるでしょうか。政治とか、スポーツとか、あるいはおいしい食べ物とか<いろいろあるでしょう>?
HS: 前にも言ったように、スポーツは本当に楽しんでいます。フットボール・・おっと米語だと「サッカー」でしたね・・・とラグビーが特に好きです。ピッチに出て、1、2時間暴れまくるのは最高です。
BCM: ラグビー大好き少年なんだ。
HS: そうなんですよ。今はそれほどやらないんですけど・・・小学校ではよくやってました。ラグビーはいいですよ・・
「小学校」と訳しておきましたが、Winchester Collegeの初等部?にあたるPilgrims' Schoolというprep school(上流階級の子弟向け私立の全寮制小学校)のことです。Winchester Cathedralが運営するchoir schoolなので、Harryはまさに幼少のころからWinchesterで徹底的な全人教育を受けていたわけですね。
http://pilgrims.jhadmin.net/
BCM: ダッシュするからエネルギーを消耗するんじゃないですか?
HS: 確かに。でも、それがまたいいんですよ。いつも屋内で何かしてばかりじゃなくて、ときどきは外でエネルギーを発散させなきゃいけないですからね。
BCM: その通りですね!さて、このサイトは世界中の多くの聖歌隊指導者が読んでいるので、彼らに、君からアドバイスをいただきたいのです。トレブルを卒業したばかりで、コリスターとしてのあらゆる経験がまだ鮮明に記憶に残っているでしょうからね。少年たちの音楽性を高めその生活をよりよいものにするためには、どのような指導をしたら効果的か。つまり成果が上がるか。
HS: 大事なのは、音楽に偏らないで他のこととのバランスを保ってあげること。これは本当に決定的なポイントです。音楽ばかりやらせていると、その生活は単調で退屈なものになってしまうんです。スポーツや他のことも沢山やらせたほうが楽しいと思う。バランスが一番大事だと僕は思います。
BCM: それから、指導者だけでなく聖歌隊に在籍している少年たちもこのサイトを読んでいます。入ったばかりの子供達へ、あるいは既に活躍している少年たちへ、音楽で成功するためにどうしたらいいか、彼らへのアドバイスもお願いします。
HS: 最も大事なことは、いつも同じタイプの音楽ばかりやらないように務めるということでしょうね。例えば、宗教曲を歌っていると、宗教曲向きの声になっていくのですが、他のタイプの曲も歌うことによって、円熟味が増してきます。例えば、バロック音楽を歌っていると、バロックという特定のトーンが身についてきますが<クラシックばかりでなく>、宗教曲以外のものやポップミュージックもやってみればいいんです。異なるタイプの音楽も組み込むことにより声が円熟するのは、すばらしいことです。
うーん、、この発言もちょっと驚きです。このあたりについては後ほどまた書きたいと思います。
BCM: 5年後、あるいは10年後のHarry Sever君は何をしているのでしょうか。
HS: 今後の計画ですか?来週になればまた考えが変わるかもしれないですけどね、ともかく、大学で音楽以外の何かを勉強したいなと思っているんです。例えば・・・語学(現代語)とか専攻するかも・・・今学校ですごく好きな科目なものですから。そして、大学を卒業してからさらにミュージック・カレッジに進んで音楽を学び直すとか演奏活動をするとか。将来の仕事としては、音楽でもそれ以外のことでもできるようにしておきたいです。音楽でうまくいかなかった場合、よりどころとするものを何か持っておきたいですから。あるいは、音楽への興味がなくなるということもありえるので、その場合大学で専攻したことを活かせるし。
read modern languagesと言っているので、複数の言語をやりたいとの意味でしょうか?ドイツ語とフランス語とか?(Winchesterでは日本語の授業もやっているのですが、Harryが選択しているとはちょっと思えないですね。)
なお、このように大学の勉強に関して使う readは、「読む」ではなく「専攻する; 学位取得のため勉強する」という意味で、イギリス独特の用法です。私自身がイギリスにいた時の経験から思うに、とりわけOxbridge について言うように思うのですが・・違ったかな?(HarryがOxbridgeへ進学することはほぼ確実と思われます。)
OALDより
~ (for) sth (BrE, rather old-fashioned) to study a subject, especially at a university: [vn] I read English at Oxford. [v] She’s reading for a law degree.
ともかく、このあたり、非常にしっかりと将来を見据えています。演劇に大変興味を持ち始めているようなので、演技と歌の両方を追求できるオペラ歌手になれれば、というのはやはり一番の望みでしょうが、Harry Severといえども思い通りにクラシック音楽で一生食べていくことが容易いことではないという現実はよくわかっているのですね。
以上です。BBCインタビューでは聞かれなかったような興味深い質問もいろいろあって、Harry Sever少年の「今」をうまく引き出していると思いました。
なお、BBCインタビューの歳の音声と比べて、こちらの録音のほうがHarryの声がいくらか高いような感じがしました。変声期の声は不安定とのことで、この日は、いくらかトレブル時代に近い声が出ていたのだろうかと思ったのですが・・・・面白いことに、お母様のお話によると「電話を録音したものだから、スタジオからの生と比べるとちょっと聴こえ方が違ったかも。でも、どちらかというと、こちらの声のほうが今の普段の彼の話し声なのよね・・・」ということでした。