昨年の紅白以来、秋川雅史の「千の風になって」が大ブレイクして、この歌およびその元になった英詩のことについては、あちこちのブログに採り上げられているようです。なので、今更私が二番煎じするつもりはないのですが、それでもやはり私なりの想いを書き留めておきたいと思い、遅ればせながら書いています・・・
秋川さんの朗々としたテノールで歌われるこのメッセージに心打たれ、初めて英詩の存在を知ったという人が多いようです。
Wikipediaにもその辺のところがまとめられています。原詩も細かいところが異なる3つのバージョンが存在するとのことですが、基本的なideaは同じ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/Do_not_stand_at_my_grave_and_weep
この詩をもとにして、新井満がこの英語にほぼ沿った日本語バージョンを作って曲を付け、歌っていたのだそうですが、素晴らしい歌だということで、新垣勉、秋川雅史といった日本の名テノールがカバーしたと。
私はこの詩の存在をもっと前から知っていました。Liberaのサードアルバム'free'の6曲目がこれで、私がLiberaの中でも一番好きな曲のひとつだからです。こちらは、Robert Prizeman作曲、そしてBen Crawley、Joseph Plattという2人の名ボーイソプラノが歌っています(Benがリードを取り、部分的にJosephの声を重ねてデュエットしている)。
新井バージョンが長調で全体的に力強い感じなのに比べて、Prizemanバージョンは、短調で、もっと研ぎ澄まされた祈りのような曲調です。
Do not stand at my grave and weep
I am not there, I do not sleep.
I am a thousand winds that blow
I am the diamond glints on snow
I am the sun on ripened grain
I am the gentle autumn rain
When you awake in the morning's hush
I am the swift uplifting rush
Of quiet birds in circling flight
I am the soft starlight at night
Do not stand at my grave and cry
I am not there, I did not die
(この英語はWikipediaに掲載の3番目のバージョン。ただしLiberaのアルバムでは、最後の2行にさらに違いがあります。著作権の関係からLiberaバージョン英語はそのままここには載せられないと思うので、ここはWikiからのコピぺでとりあえず。)
6行目gentleと、10行目のsoftおよびstarlightが2回繰り返され、「秋は雨となり優しく(降り注ぐ)」「夜は星の光となり優しく(照らす→見守る)」というメッセージをさりげなく強調しているところ、そして、最終行のみさらりと長調に転調して「私は死んでなんかいない。(いつもあなたのそばにいる)」というメインテーマを明るく掲げているのが、とても素敵です。私は、Robert Prizeman氏の作曲の才能と音楽センスをきわめて高く評価しているのですが、この曲はとりわけそのことがよくわかる作品だと思います。それと、Benですが、彼はLiberaの歴代ソリストの中ではかなり頭声に近いしっかりした発声をしており、Prizeman氏も「彼は芸術家」と言っていたように、表現力の豊かさの点では飛びぬけていたのではないでしょうか。
Benのトレブルは、美しさのなかにも包容力があります。一昨年の東京公演の歳、思いがけなくサイン会があり、すっかり素敵な青年になった彼に直接サインをもらうことができました。すっかり舞い上がってしまった私はThank you….と一言いうのがやっとだったのですが、にっこり微笑んでくれて・・・ああ、幸せでした~~
去年の6月26日、栗之介が突然天国への階段を駆け上がったとき、このBenの歌声がどんなにか私を慰めてくれたか、とても言葉では言い表せないくらいです。実は、それよりほんの数日前にHarryのDie Schone MullerinがTadpoleより到着しており、待ちに待っていたものだけに、Die Schone Mullerinを聴きまくっていたときだったのですが・・・・26日以降しばらくは、さすがに、女の子にフラれたくらいで命を粗末にするヤワでおバカな粉挽き男の物語なんか、とても聞いてなんかいられませんでした。
その後、数カ月たったある日のこと、車の中でぼんやりラジオを聞いていました。リクエスト曲の紹介で「死者を悼む歌なのですが、愛する人を亡くした悲しみを歌っているのではなくて、死んだ人が、その愛する生きている人に対して『悲しまないで』と呼びかけるメッセージです。」というふうにアナウンサーが言うので、私はすぐにぴんときました。Liberaの曲とは別のものが、日本人によって歌われていたんだなと・・そのときかかったのは、どの歌手のものだったか覚えていませんが、冒頭「私のーお墓のまーえでー泣かないでください~~そこに私はいまーせん、眠ってなんかいませんー」というのが、もろ直訳なんだけどちゃんとはまっていて、びっくりしたものです。
今あらためて秋川さんの歌を聴くと、「夜は星になってあなたを見守る」というところで、どうしても涙があふれ、しばらく立ち直れないくらい泣いてしまいますね...。母国語でこういうふうにダイレクトに語りかけられるとやはり迫ってくるものが大きいです。
YouTubeにちゃんと。
http://www.youtube.com/watch?v=4Ut28zko1CU
(これ、紅白の録画なんですね。ここで紹介するのに著作権上問題がありましたら、すぐに削除しますが・・・)
Benの歌もぜひ聴いてくださいね。
http://www.youtube.com/watch?v=OVY_OpWQyoE
新垣さんのも聴いてみたいです。余談ですが・・・彼は武蔵野音大卒ですが、音大の前に福岡の西南学院大学の神学部を卒業しておられ、バプテスト派の牧師さんだったそうですね。西南学院は私の母校なので(文学部外国語学科卒です)、嬉しくなりました。母校でリサイタルをされていたのも知りませんでしたが(なんと入場無料で)!
http://www.seinan-gu.ac.jp/university/new/2002/0514.html
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A017661/VICC-35003.html
月並みすぎる言葉なのですが、、、音楽ってほんとにいいものですね。音楽なしでは絶対生きていけないです。