Aled Jonesくんに関する投稿第二弾です。Handel のオラトリオ「アタリア(Athalia)」'を紹介します。
Aled Jones (treble) ,Joan Sutherland (Soprano), Emma Kirkby (Soprano), James Bowman (Counter-tenor), David Thomas (Bass), etc.
Christopher Hogwood 指揮 Academy of Ancient Music
1986年5~6月(つまりAled 15歳半!)、ロンドンのSt. Judes Churchに於いて録音。2枚組。AledのソロはDisc 2のみですが、短いものながら、独唱および二重唱を何度か歌っています。
私が購入したのは、Decca Records, UK (レーベルはL'oiseau-lyre)の制作で、歌詞対訳も完璧な国内盤(発売元ポリドール) でしたが、それはもう廃盤のようです。それで、現在Aamazon JPから購入できるものだと、
US importのusedでも9164円もしますね。なお、
こちらの、新品で3093円からというのは、UK importですが、2003年に出たオーストラリア盤らしいです。ジャケットが違うだけで全く同じ録音のはずですので、意外とお買い得かもしれません(こちらの盤の内容については、私が確認しますので、後ほど報告します)。
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ヘンデルは25歳でイギリスに渡ってから、最初はオペラや祝典曲ばかり書いていましたが、結局は、オペラの表現様式に限界を感じ(当時のオペラは、独唱つまりアリアとレチタティーヴォばかりで、合唱が自由に使えなかったそうです)、40代後半からオラトリオの執筆に没頭していきます。
「アタリア」(英語の発音は「アタライア」)は、オックスフォード大学の名誉博士号授与式のために同大学から依頼されて作ったもので、初演は1733年。
どういう内容のお話かというと・・ちょっと人間関係が複雑で私もよく把握できないのですが、、ごく簡単に書いておくと・・・「アタリア」というのは、旧約聖書に出てくるイスラエル王の娘で、後ユダヤの女王になるが、息子を殺されたことから「暴君」と化し(ん?「暴君」という言葉は男性に使います?)、他の王家の人たちを虐殺しようとするばかりか、自分の息子の子供、つまり孫である少年ジョアスまで迫害しようとしたので(どうもここのところがワカラン・・・ ま、いいか)、ジョアスの叔母さんにあたるジョザベスが彼をかくまった。しかし結局アタリアはジョアスを見つけ出し、彼を連れていこうとするが、ジョアスは毅然として彼女を拒む。。。なお、このジョアスはのちに王に即位し、アタリアは結局民衆に殺される。
それで、この気高き王子ジョアスの役が、Aledなのです!気品があって、堂々として・・・変声半年前なので、まさに円熟期も円熟期、Aledのボーイ時代の最高傑作といってもいいのではないでしょうか。
こちらに、全曲のトラックリストがあり、雰囲気だけですが、以下のトラックでAledの声が試聴できます。
4. Act Two, Scene 2: Aria: Will God, Whose Mercies Ever Flow - Aled Jones
6. Act Two, Scene 2: Duet: My Spirits Fail, I Faint, I Die!/ - Emma Kirkby/Aled Jones/
特に後者の第6トラック・・・アタリアがジョアスを無理やり連れて行こうとして、意地悪な質問とかをするのですが、ジョアスはそれに屈しないので、アタリアの怒りはジョザベスに向けられます(「お前が入れ智恵したのだねー!」と)。悲しみで張り裂けそうになるジョザベスを、ジョアスが慰めるシーンですが、このジョザベス役のエマ・カークビーとアレッドとのデュエットはspine-tinglingな美しさで、このCDのハイライトとなっています。
ビブラートを極限まで抑え、とことん繊細で澄み切った極めて個性的な女声ソプラノとして、バロックアリアの第一人者と言われるエマ・カークビーは、私も女声の声楽家の中では唯一ファンだといえる歌手で、他にも彼女のCDやビデオをもっていますが、彼女についてはまた別の機会に改めて書こうと思っています。
この物語では、次のような大きく異なるキャラクターを反映する3種類のソプラノを楽しむことができます。
① ジョアス役Aled Jones (boy soprano): 気高く勇敢な王子
② ジョザベス役Emma Kirkby (soprano): 心優しくナイーブな王女
③ アタリア役Joan Sutherland (soprano) : 老練で横暴な女王
とりわけ、②の清楚・繊細なノンビブラート唱法と、③の典型的な力強いベルカント唱法との対比が非常に面白く、また、①と②は、当時のボーイソプラノの最高峰と、成人女声歌手の中では極めてボーイソプラノ的である(←ビブラートの問題はちょっと置いておいて、timbreとしてですが)カークビーの声とがベストマッチで、そういう意味で非常に豪華な組み合わせだと思います。
長くなりますが、最後にぜひ記しておきたいことがあります。それは、、このCDのもう1つのbig featureとして、合唱にChoir of New College, Oxfordを使っているということです。Hogwood(&AAM) は、オックスフォード大学のクアイアだとだいたいChrist Church Collegeを使うので(「メサイア」などもそうだったのですが)、これはNew Collegeとの貴重な共演です。「神官たち、レビ人たち」というグループの役なのですが、上記試聴サイトの8. Act Two, Scene 3: Chor: The Clouded Scene Begins To Clear - Chor Of New College, Oxford/Edward Higginbottをぜひ聴いてみてください!合唱であるにもかかわらず、ボーイ個々の声が、まるで2、3人ソリストを使っているかのように鮮明に聞こえるのです。 これがまた素晴らしい・・・
・・・まだ書きたいことはありますが、このあたりにしておきましょう。 私はこのCDを15、6年前くらいに購入し、最近は全然聴いていなかったのですが、Satomiさんが、Connor参加のヘンデル「ヨセフとその兄弟」を紹介しておられる記事を読みながら、久々に聴きたくなって引っ張り出してきました。おかげさまでまた新たな再発見がいろいろとあり、嬉しくなりました!