温感感じる神経を刺激
5基本味と呼ばれる甘味、うま味、塩味、酸味および苦味は味細胞 で受容される。忘れてはならないのは、辛味の存在である。北学大 学院に在籍時、筆者の先輩がトウガラシの辛味成分であるカプサイ シンに対する応答を味神経から測定しょうとして苦労していた。カプ サイシンは、実験のためはかりで重さを量るのに大きなクシャミを何 回も誘発するほど強い刺激性をゆうしているにもかかわらず、味覚応 答はさっぱり測定できなかった。それは、カプサイシンが味細胞を刺 激して辛味を誘発していたのではなく、本来は温感を感じる神経を刺 激していたからだった。英語では辛味を「hot」と表す。カプサイシンは、 文字通りホットな感覚を引き起こしていたのだ。一方、ハッカやミトン はス-っとする感覚を引き起こす。これは、ハッカやミトンに含まれて いるメント-ルが冷感を感じる神経を刺激するからだ。カプサイシンや メント-ルは、神経に存在する温感受容体と冷感受容体にそれぞれ 結合する。ハッカが入ったお菓子を食べた後に、冷えた水を口に含む といつもより冷たく感じる。これは、メント-ルに結合された冷感受容 体が低温刺激に対して敏感になるからである。不思議なことにハッカ をなめた後に唐辛子をなめると辛味はより強く感じる。どうしてこのよ うな現象が生じるのかは、今のところ説明できない。しかしながら、辛 い食べ物が苦手な人は、辛い食べ物を食べる前には、ハッカが入っ た食べ物や飲み物をとるのは控えた方が良い。 (柏柳 誠=旭川医大医学部教授)
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