小説「新・人間革命」
【「聖教新聞」 2013年 (平成25年)11月30日(土)より転載】
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若芽35(11/30)
教職員との懇談で、山本伸一が最も詳細に聞きたかったのは、児童の現況であった。
「長欠のお子さんはいますか?」
「両親共にいないお子さんは?」
「母子家庭のお宅は?」
「父子家庭のお宅は?」
彼は、矢継ぎ早に質問し、教職員の答えに耳を傾けながら、さまざまな配慮をするようアドバイスを重ねた。時には、保護者宛てに伝言を託した。
彼は、皆の報告を聞いたあと、しみじみとした口調で語った。
「経済的に大変ななか、苦労に苦労を重ねて、子どもさんを創価小学校に通わせてくださっている、ご一家もあるでしょう。
“わが子に、なんとしても創価教育を受けさせたい!“との、強い、強い、思いから、お子さんを入学させた親御さんもいます。私が創立した小学校だから行かせようと思ってくださった方もいます。その気持ちを考えると、ありがたくて涙が出ます。
それだけ期待も大きい。ご家族が“本当に創価小に通わせてよかった”と、心の底から喜んでいただける教育をしなければ申し訳ない。どうか皆さんも、そのつもりで、日本一、世界一の小学校をめざしてください」
児童の家庭は、さまざまであった。
一年生に有竹正義という児童がいた。体は小柄だが、元気に、よく動き回る、明るい子どもであった。
両親は、彼が五歳の時に離婚し、母親の富美枝が正義を育てた。
夫と別れた富美枝は、都区内にあった家を処分して、創価学園に近い東大和市に移った。実母と息子の三人での生活である。
彼女には、“できることならば、子どもは、創価の学舎で学ばせてあげたい”との思いがあった。
しかし、経済的には苦しかった。家族三人の生活は、自分の細腕にかかっていた。息子を母に頼み、会社に勤めたが、得られる収入では、食べていくのがやっとであった。
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